最終話 謝罪・贖罪
「・・・ゴボッ!ゴボゴボゴボ!!・・・がはっ!げほっ!!ごほぉ!!」
「はぁ、はあ、はぁ、・・・あんた!大丈夫かぁ!!」
男の声が遠くから聞こえてくる。頬をぺちぺちと叩かれるような音がまるで、フルフェイスのヘルメットの上から叩かれているように聞こえる。その後に、少し痛みが来て徐々に意識が戻ってきた。
その瞬間、まだ肺に海水が在るのを感じ更に咽ながら上体を起こして四つん這いで吐き切る。口と鼻奥の全体に強い塩味を感じながらも、背中に置かれた手の感触がさっきの水死体の女の手を連想させて、振り払うかのように身体を返し腹を見せながら後ずさる。
「・・・おい・・・大丈夫か??」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・こ、ここは・・・・・・」
周囲を見渡すと、そこは船上で眩い程の集魚灯が船ごと照らされていた。そして、先ほどの無精ヒゲの男がずぶ濡れで、私を心配そうに見つめている。それだけでもう十分に理解できた。この人が私を助けてくれたんだと。
「はぁ、はぁ・・・あ、ありがとうございます」
「はぁ・・・全くこんな夜中に、海にふらふら入っていくもんだから、幽霊かなんかかと思ったよ」
「ゆ・・・幽霊・・・・・・」
その言葉で寒気を一気に感じ、船の外側の海洋を見渡す。
「なんだかわかんないがよ。考え直せって。お前、まだ若いじゃないか。何度でもやり直せるし、何度でも詫びることもできるだろ?ちゃんと謝れって。頑張って、謝罪して、誠意を見せても許してくれなかったら、その時は好きにしな。ただ、死んじまったらその謝る事もなんもできねぇぞ」
その言葉に、なんだかハッとした。心の中でしか、謝ってはいなかった自分に・・・涙を流し、後悔と自戒しかしてこなかった。供養も葬式もせずに、ずっと現実から逃げていた。それらも今の涙でさえも全て、自分の為でしかない。
よくよく考えてみれば、さっきの女と男の子の霊は私が亡くした妻と息子に少し面影があり、似ていたかもしれない。水膨れて顔の形が全然違っていたが、今思えばそう見えなくも無かった。もしかして、私に「生きろ」という想いで出てきたのか、もしくは・・・・・・
ただ、私はそう思うようにして、今を生きています。漁師さんが言うように、謝罪の人生を歩むつもりで・・・なんとか二人の為にも・・・この【牢獄の中】で・・・・・・
~深淵なる水縁~ END
イメージ画像⇩近況ノート
https://kakuyomu.jp/users/silvaration/news/16818093084851894267
⇩NEXT ~漆黒の友引~
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