第96話 おうちデート(その2)

「こんなところかな。兼田君、カゴは重たくない?」

「大丈夫、大丈夫。これくらい平気だよ」


 仁と頼子は、カレーライスの食材を買い物カゴの中に入れて回り、必要なものを揃えた。


「あとは飲み物を選ぼうよ」

「そうね」


 次に飲み物を選ぶため、飲料品が置かれている場所に2人は移動した。



(最近、生活に余裕がなくて飲んでいなかったわね)


 頼子は、とある飲み物が並べられているところを見ていた。


「もしかして、月見里さんってこれを飲んでいたりする?」

「嗜むって……、のっ、飲むはずないでしょ!」


 仁が頼子の視線を追っていくと、そこにはいろいろな種類のビールが並べられていた。日頃からそのようなものを飲んでいるのか気になり仁は頼子に尋ねてみた。すると頼子は本当のことを答えそうになったところで、未成年である娘のフリをしていたことに気が付き慌てて修正した。


「そっ、そうだよね。凄く真剣に見ていたから、日頃から飲んでいるのかなって思ってしまったよ」

「そ、そんなはずないわ」

「「あはははは」」


 仁と頼子は双方の思いが交差しながら空笑いをした。


「とりあえず、ジュースとお茶でいいかな?」

「ええ、そうね」


 気を取り直した仁と頼子は、適当にジュースとお茶を買い物カゴの中に入れていった。


「あとはお菓子類かな。月見里さんが好きなものを選んで良いよ」

「えっ? 良いの? それじゃ……」


 続いてお菓子売り場に移動して、家で食べるお菓子を頼子の好みに合わせて選んでいった。



「それじゃ、家に案内するよ」

「よ、よろしくお願いします」


 買い物を済ませた仁と頼子は、仁の家に向かうことにした。今回買い物を済ませたスーパーマーケットから仁の家までは、徒歩で移動できる範囲であり、買い物袋を持った仁に頼子が身を寄せて歩いた。


「こうしてみると夫婦に見えたりするかも?」

「そっ、そうね(少なくとも私にはそういう経験が無いわ)」


 仁が買い物帰りのカップルが言うような定番の台詞を口にすると、頼子は場の雰囲気を乱さないように答えたが、主婦の経験をしたことのある頼子であったが、音羽が買い物を手伝えるようになるまでは、食材の調達はすべて頼子がしていたため、男女でこのように歩く経験は今まで無かった。



「到着。ここが僕の家だよ」

「ほぇええ。綺麗な一軒家なのね」


 仁と頼子は、閑静な住宅街にある仁の家に到着した。この近辺は比較的新しい住宅が建ち並び、仁の家は仁が幼いときに建てられたもので、どちらかと言うとまわりの家と同じように新しい方に分類される物件であった。


「それじゃ、どうぞ」

「おっ、お邪魔します」


 仁は家の鍵を開けて頼子を迎え入れた。1人で暮らしているため誰もいないとわかったたが、頼子は緊張した表情で玄関をくぐった。

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