第18話 初デート(その14)
「月見里さん、まだ時間は大丈夫かな?」
「うーん、ゴメンなさい。そろそろ帰って夕食の支度をしないといけないの」
「そっか。残念。今日はとても楽しかった」
「私も楽しかったわ。でも、たくさんお金を使わせてしまってゴメンなさい」
仁は次の行き先を考えていたが、何時までデートをすると明確に決めていなかったため、このままデートが継続できるか確認するために、頼子にこの後の予定を尋ねた。だが、頼子はバイトに出ている音羽が帰ってくる時間に合わせて夕食を作らなければならなかった。本当はまだデートを続けたい気持ちの頼子であったが、渋々断ることにした。
「それは約束だったから気にしなくていいよ。その、できれば、またデートして欲しいな」
今回のデートは、音羽のおならの件を忘れるという条件で仁が提案し、音羽がデート費用を仁が全額負担するという条件で受けたものであった。2人は交際していないためデートは1回限りのものであった。仁は今回のデートがとても楽しく感じ、次のデートがしたいという気持ちからダメ元で頼子に尋ねた。
「私もとても楽しかったわ。それにまた、兼田君とデートをしたいと思ったわ。そうねぇ……」
頼子も今回のデートが楽しく思え、また次回もあれば良いと思っていた。だが、娘の身代わりでこの場にいることを思い出し、本来の目的を達成してしまったからには、ここで終わらせるのが正しいと思った。だが、頼子もここで終わらせるのは未練があり、何か良い方法がないか考え始めた。
「来週の日曜日、同じ時間に駅前広場の待ち合わせで良いかな?」
「その日は空いているから大丈夫だよ。それじゃ来週の楽しみにしているよ」
頼子は来週の日曜日にデートの約束を提案してきた。仁も断る理由がなく、頼子の提案を受け入れた。
「あと、1つお願いがあるのだけど」
デートの約束を取り付けて喜んでいる仁に対し、頼子は真剣な表情で話をしてきた。
「私と兼田君は、デートの約束をしたけど、付き合っている訳ではないわ。学校で変な噂を立てられたくないから、次のデートまで一切話しかけて欲しくないの」
「えっ? わっ、わかったよ」
「お願いね」
仁は頼子の意図が読めなかったが、来週デートの約束をしたので、それくらい我慢できると思い、頼子の提案を受け入れた。
「それじゃ、兼田君、また来週……じゃなかった。また明日、学校でね」
「うん、また明日。月見里さん、大きな荷物を抱えているから気をつけてね」
「ありがとう。このぬいぐるみ大事にするね」
頼子は思わず自分の予定で返しかけたが、音羽の代わりで来ていることを思い出し、慌てて言い直した。仁は頼子が大きな荷物を持っているため、家まで送っても良いかもしれないと思ったが、付き合っているわけではないため、ここで別れるのが妥当だと判断して提案しなかった。こうして、初デートは無事に終わり解散することになった。
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