第15話 初デート(その11)
「月見里さん、もしかして、まだお腹が空いていなかったかな?」
「そっ、そ、そんなことはないわ。私の方から言っておいて何だけど、兼田君にお金をたくさん使わせてしまったから、悪いなって思って」
「そっか、でも、気にしなくても大丈夫だよ。僕も月見里さんと一緒にデートできて凄く楽しいし、いい経験をさせて貰ったから、お金のことは気にしなくて大丈夫だよ」
(兼田君、ええ子やわぁ。どうしてこんな子が娘を脅したのか、わからなくなってしまうわ)
頼子は仁の懐事情を心配していたが、気にした素振りを見せない仁を見て、本当に娘を脅していた人物なのか疑問に感じた。
「そう? それじゃ、このイルカさんセットでお願いするわ」
「了解。それじゃ僕は、サメさんセットにしよう」
このレストランは水族館の併設ということもあり、展示されている魚などをモチーフにしたメニューになっていた。イルカさんセットはオムライスをベースにアレンジし、サメさんセットはカレーライスをモチーフにしたものになっていて、価格は双方1800円で、内容を考えると少々高めの設定になっていた。
「すみません。イルカさんセットと、サメさんセットを1つずつお願いします」
「はい、では3600円です」
仁はイルカさんセットとサメさんセットを注文し、代金を支払った。
「ありがとうございます。では、この番号札をお持ちになって、空いている席をご利用ください」
「月見里さん、行こうか」
「ええ」
仁は番号札を受け取り、頼子と自然に手を繋いだ状態で、奥の空いている席に向かった。
「お待たせしました。イルカさんセットとサメさんセットです。どうぞごゆっくり」
仁と頼子が席に座り、しばらくすると注文した料理が運ばれてきた。接客係のおばさんが料理を並べた後、番号札を回収して戻っていった。
「うわぁ、このオムライス、本当にイルカの形になっているわね。兼田君のカレーもご飯でサメが作ってあって、カレーは海を表しているみたいね」
「見た目だけでも楽しめるね」
「ふふっ、そうね」
可愛らしく作られた双方の料理を見て、仁と頼子は思わず笑顔になってしまった。
「せっかくだから食べようか」
「そうね。崩すのが少し勿体ない気もするけど、いただきましょう」
仁と頼子は、綺麗に作られた料理を崩すのは勿体ないと感じながら、スプーンを入れてから、少しずつ料理を口に運んでいった。
「ごちそうさま。お腹いっぱいになったわ。すごく幸せな気分」
「月見里さんって、パフェのときもそうだったけど、幸せそうな顔をして食べるよね」
「そっ、そうかな?」
仁は幸せそうな顔をして食べている頼子の顔が気になっていた。ここ最近、食事は1人で食べることしかない仁にとって、一緒に食事をしてくれる人の存在がとてもよいものだと感じた。
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