…
「面倒なことにならなければよいが」
ヤマトはため息交じりにそうつぶやき少年の背中を見送ると、再びスマホを握り直して小刻みにタップを繰り返したり、本体を振ったりした。
すると、やがて声がした。
『何するのよ! いい? 女性の扱いがなってないわ。もっと優しくしてよね』
先ほどの女性のムッとした声に、彼は思わず目を見張った。
単なる音声ガイドではなく、会話アプリが起動しているらしい。
「いったい、これは?」
その言葉に呼応して、短いため息が聞こえる。
『まるで初めましてみたいじゃないの。忘れたの?』
「忘れたも何も。オレは本当に君のことだけでなく自分のことさえも分からないんだ。教えてくれないか」
『何それ?』
そう言ったきりアプリの声は、しばらく黙っていた。そばで波音がしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます