ミュウと呼ばれしもの
「オレの名は、ヤマトというのか?」
ヤマトは、手にしたスマホの黒い画面を食い入るように見つめた。そこには発せられた声と同じく「HELLO ヤマト」と白い文字が浮かび上がっていた。
このスマホには、電話帳と発着信履歴、メールの送受信記録、保存画像等、自分のなくしている記憶に当たる情報がいくつも残っているに違いない。
彼はおもむろに座り込むと画面をタップしたり、上下左右にスワイプしたりした。が、機器は反応はしない。
(なんだよ、これ?)
少年が肩越しに覗き込んでくる。
「おじさん、スマホ使えないの?」
「いや、使える、はずなのだが」
ただ自分がこのスマホを使っていたという記憶自体はない。
「あ、おじさん。足怪我してるじゃない」
少年の目線の先にある自分の膝を見た。
岩か何かで激しく擦ったのだろうか。ジーパンの左膝の部分が破け、傷口が露出し、血で汚れていた。感覚が麻痺しているのか、見た目の酷さに反して痛みはあまりなかった。
「病院の人を呼んでくるよ」
「いや、別にかまわ……」
そう言いかけるも、少年は走り去った。
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