「日本政府は今回の件で、テロリストとは一切交渉しないと会見で明言しているわ」

「我々は、テロリストではない」

「パパ、日本政府は、あたしたちがロシアでも中国でも北朝鮮でもないなら、ゲリラテロ組織と思いたがっているみたいだわ。まだ地図上にはない海底都市国家の奇襲攻撃だと分かっていないのよ」

「それについては近々、ナミエラに声明を出させる算段じゃ」

「でも、あれでは単なるビル崩壊事故よ。街全体を火の海にした方がずっと交渉が有利になると思うの。その後の復興は、どのみちスクラップにする予定だったし、リントヴルムの経済力と技術力で何とでもなるわ」


 その言葉に、オトゥの冷酷で残虐な一面が覗く。ヴォルフの頬がひきつる。彼は、数年に渡り彼女に仕え、そのことを骨の髄まで知り得ていたが、内心同調はしていない。


(姫は、無実の一般市民を巻き込んで死に至らしめることに、何のためらいもないのか)

 ヴォルフはやり取りを聞いていて、今度も例外なく薄ら寒い思いをした。が、さすがに、ドードも言葉を失ったようだった。

 しばし沈黙の時間が流れる。


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