第十話 辺境ダンジョン 第三階層
第一階層から
今はなんとか見つけた照明魔導を使って洞穴に安全な空間を作りそこに退避している
見ればグレネードも銃弾も尽き各々傷だらけ、カティとアークはそこそこの傷を負っている
俺の6B45ボディアーマーも、上腕の装甲プレートが剥げ落ち、下腹部のプレートも食いちぎられていた上にアルティンヘルメットはぺっちゃんこだ
「あーもう満身創痍ッ!クッソもうちょっと情報収集してから来るんだった」
「緊急帰還しましょう。もっと対策してから来るべきです」
俺が6B45を脱ぎ捨てながらカティの提案を聞きいていると、アークが申し訳無さそうに口を挟んでくる
「あ…そのことなんですが…」
「待って。悪い知らせ?」
「はい。地上の緊急帰還魔導陣が何者かによって破損させられた様でして」
「
「いえ。2人までならなんとか」
「じゃあ君達だ」
俺は迷わずにそう言うと、装備を軽装かつ高火力なものに変えていく
M107CQにベネリM4と12ゲージの
一応FN Five-seveNを召喚しておく
M107CQは12.7mmの50口径対物狙撃銃、その短縮バージョンだ
これに込めるMk300 Mod0 炸裂徹甲曳光弾ならアイツらの頭蓋も粉砕できるだろう
炸裂徹甲曳光弾というのは簡単に言ってしまえば「光って」「貫通して」「爆発する」弾だ
徹甲スラグ弾と言うのも解説しておこう
本来ショットガンというのは和訳である散弾銃からもわかる通り、一つの弾にペレットと言う小さな鉄球などが入っていて、これが発砲時に散らばり対象にいくつかの風穴を開ける
対してスラグ弾と言うのは一つの大きな弾丸で、大体親指サイズ
散弾に比べ精度と威力が高く、ついでにお値段も高い
「…流石に、従者が主人を置いて逃げ出すのは出来ません」
「馬鹿か。酷い言い方だろうが、死に損ないを2人も引き連れてダンジョンを進む程、俺は愚かじゃない。ある程度傷が塞がったら引け」
そう言って俺は座り込むと、自衛隊の戦闘糧食Ⅰ型を召喚して行く
戦闘糧食Ⅰ型ってのは缶詰タイプで、召喚した時には既にボイルされていて暖かい様だ
俺が選んだのは鳥飯とマグロ味付け。一回食べてみたかった
カティとアークにはMREを渡しておく
まあ飯と言うのは軍隊にとって大変重要で、兵士の心を支え、果ては戦線を支える為には欠かせないものの一つだ
まあ今はそんな事などどうでも良く、温食を食える事に感謝しながらかぶりついて行く
(米の味……めっちゃ懐かしい。しかもちゃんと美味い!和食万歳!温食万歳!最高ッ!)
心の内でめちゃくちゃ喜びながら飯を食って行く
2人の方も、一応食べ方がわかったのかちょっとずつ食べている
やはり飯。飯は全てを解決する。みんなも戦争する時は兵站をしっかり確保しようね!
「輜重輸卒が兵隊ならば蝶々蜻蛉も鳥の内」とか言ってる奴がいたら殴り倒そう!
それはそうとして。さっさと食い終わってしまった俺は壁に背を預けしばしの休息を取る
20分程度か。この後どうするかと考えながらだったので、直ぐに立ってしまったが既に体の調子は戻っている
「じゃあ、そろそろ2人は帰還して」
ComTacと適当な帽子…じゃ無くてFASTヘルメットと熱線映像装置を装備しながらそう言う
この真っ暗闇じゃ、自然光の紫外線を反射する暗視装置は役に立たないからだ
MMACプレートキャリアにM107の予備マガジン4つと57を取り付け、腰に12ゲージ用の弾帯を巻く
その途中にもこの先の事を考えるが、食事と休憩を挟んだおかげか少しばかり頭が回る
「いや帰るのも危険か。キャンプ地をここに移そう。幸い水と飯は召喚できる」
「確かに、緊急帰還魔導陣を破壊した奴が待ち伏せているかもしれませんが…」
「とりあえず俺は先に進む。何かあったら魔導通信で」
「……はい。お気をつけて」
「まあ死にゃしないよ。一応追加でベネリ残してくから、なんかあったらそれで耐えて」
俺はベネリと12ゲージスラグ弾を10数発残し、ついでに召喚した真水を片手に洞穴を出る
自然光なしの真っ暗闇。何がいるかわからない戦場
これを剣と魔法で39層まで攻略したのか。ここの世界の人間はすごいな
俺はベネリを手に熱線映像装置を下げ、白黒の世界を進んでいく
体感だが、少しばかりモンスターが強くなっている気がする
素早さと知性が上がったのか、よく死角を狙ってくる様になったと感じるのだ
「まあ大体は12ゲージの1発で殺れるから、あの殺意マシマシ外殻カタメのクソデカアリがこなければ大丈夫だな」
第三階層で見た魔物はスライムにゴブリン、あとスケルトンとコボルトが幾らか
そしてサーペントが数匹
サーペントってのは馬鹿でかい蛇だと思って貰えばいい
全長は9〜10m程度、目の後ろのフリルみたいな器官が特徴的だ
頭に1発ばかりスラグ弾ぶち込んだら普通に死んだので拍子抜けだった
「にしてもッ!」
岩の影から飛び出してきたゴブリンを12ゲージのスラグ弾で破砕する
同時に背後から2体が追加で接近するので、振り返り様に片方にスラグ弾をお見舞い
左手から近接魔導刃を展開させて胴体に突き刺した
「ふぅ…数が多い。こいつらどこから湧いてきてんだ」
不自然な多さには流石に困惑する
あのクソアリ含めて既に200は殺している
「まあ、進むしかないわな」
ショットシェルを装填しながら足を進め、白黒の冷え切った洞窟を進んでいく
が、一向に次の階層は見えて来ない
単調な壁面にたまに出てくる魔物。退路は絶たれ進むしかない状況で、徐々にストレスが溜まって行く
「クッソ。一本道なだけマシってか」
(別に俺が代わりに出てもいいんだぞ?)
唐突に話しかけてきた悪魔に若干意識を向けながら、単調作業の様に敵を砕いて行く
ショットシェルの
(なんだお前。出て来れるのか?)
(今のダンジョン内の空間魔力量では一割も出せないがこの程度なら
鏖殺。普段使わない言葉が出てきた。意味は確か皆殺しとかだったか
最近じゃ漫画とかでごく稀に出てくるか
(マジ?じゃあ叶わん相手出てきたら頼むわ)
(すぐには頼らんか。賢明だな)
(この程度のッ…敵にお前を出すのは勿体無い。Lvもあげたいしな)
上から降ってきたスライムを魔導刃で断ち切り、じゅわ〜っと溶けていくスライムの一片を被ってしまった。これと言った害はないが、少しばかり肌が焼ける痛みが走るので不快だ
(そういえば、お前はダンジョンについてあまり知識がない様だな)
(そもこの世界じゃあんまり解明されてないらしいしな)
(では、何故こんなものが出来るのか教えてやろう)
発砲音と共にショットシェルの残骸が飛び出し、カランカランと軽い音を立てて転がる
じわじわと血が溢れ、傾斜に沿って流れていく
(欲求だよ。何処かに、いつかに斃れ行き場を失った魂が土地に染み込み、群体を成したものが土地を食い破り、産まれる筈のなかった者に己が魂を刻む。そうすれば魂はここに縛り付けられ、誘い込まれた者を狩り続けてより良い器を狙う。そして生き続ける)
(文字通りの
(そして一つ悪い知らせがある)
(は?)
(このダンジョン。相当良い器を見つけた魂がいる様だ)
━━━━━━━━━━━━━━━┫
そこからまたしばらく歩き、第四階層の入り口というところに差し掛かってきた
外から見た感じ中は円形の広間の様で、簡単にいえば桶の様な円柱状の空間だ
そして悪魔の最後の言葉が、いまだに引っかかっている
あいつが言うには雑多な器では無い、完全に適合した器を見つけた奴がいるらしい
完全に適合した器というのはつまり━━
自分の身体、という事だ
骸に溢れたこの監獄で、自らの骸に再び魂を縛りつけた者
(なんにせよ、ひとまずは第十階層までの突破だな。この調子ならそこそこかかるか)
(いや…多分もうそんなにかからないぞ?)
(どういうこっちゃ)
そう言って第四階層の入り口、その中程まで足を運んだその瞬間
天井と床一面になんらかの魔導陣が広がり、各所でプラズマの様な球が光っては消えている
直感的に危険を感じる、一気に出口まで駆け出したが時既に遅し
魔導陣の発現からわずか3秒未満と言う短時間で、正体不明の魔導が発動した
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