第2話「習慣」
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新たに購入した執筆機器に慣れるために、小説を書こうと思い立った。
慣れるために執筆するというのは、どこか本末転倒な感もあるけれど、こればかりは仕方ない。キーボードの体感、押し心地、配置が、旧型機と若干異なっている。それに慣れるには、ひたすら書くしかないだろうというのが、私の結論である。
ひたすら、書く。
私が書くのは主に掌編小説と思われているやもしれないが、実は違う。
ネット上に公開していないというだけで、本職(とはいっても、私はまだ作家志望の身ではあるが)は長編小説である。
短編と長編、どちらを執筆するのが好きかと言われたら、後者と即座に答える自信がある。
それくらい好きである。
まあ、好きだからといって、良く書くからといって、それが世間から評価される訳ではないというのが、また世知辛いところなのだが。
夢を見ながら、未だ作家になることができていない自分を見て、時折恥ずかしくもなる。
ただ、そこばかりは、もう運と実力の世界でしかない。届かぬ未来ばかりを妄想せず、日々精進に励もうと思う。
以前のポメラDM100では、長編小説の執筆には向かない仕様であった。しかし最新機器になると、1つのファイルに保存できる最大文字数もかなり増えた。
打鍵以外に余計な機能がないことも、この機会の魅力である。
今やネットに接続すれば何でも事足りてしまう時代である。誘惑は沢山ある。まあ、本来は執筆意欲でそんなもの押し通せという話だが、私はそれほどまでに自我も意思も強くない。
そういう風に、育てられている。
己の意思の異常なまでの抑圧。
熱が冷めたら、またそんな話もしよう。
とりあえず、今は書く。
それが、私にできる唯一のことだから。
(続)
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