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海はとても穏やかだった。とても優しい海だった。天気も良くて、青空が広がっていて、お日さまがぽかぽかしてすごく気持ちが良かった。
いい天気。このままちょっとだけ寝ちゃおうかな? と小さなあくびをしながら、体を、うーん、と言って伸ばして兎は思った。
「兎ー! なにしてるの! こっちきて一緒に泳ごうよー!」遠くで手を大きく振りながら虎が言った。
その虎の元気な声を聞いて「うん! わかった! すぐいくー!」と言いながら兎は白い砂浜の上に立ち上がった。
それから兎は海の中にばしゃばしゃとふともものところまで入ると、泳ぎなれた綺麗なフォームで、海の中に飛び込んだ。
海の中は思っていた以上に、冷たくて気持ちよかった。
泳ぎの得意な兎はそのまま海の中を泳いで虎のいるところまでいった。
虎は兎のことをばた足をして海にぷかぷかと浮かびながら待ってくれている。
やってきた兎の顔を見て虎はなんだか少しだけ真剣な顔をした。
「どうかしたの? 虎?」水に濡れた長い黒髪をあげながら、気になって兎は言う。
「うん。兎。楽しそうだな、と思ってさ」とゆっくりと泳ぎながら、虎は言う。
「楽しそうって?」と兎は言う。
すると虎は「兎。なにか悩んでいるのかと思ってた」とじっと兎の顔を見て、にっこりと笑って言った。
その虎の言葉を聞いて、兎は、……、ああ、しまった、と思った。虎は兎が元気がないから心配してくれていたのだ。心配して、元気にしてあげようと思って、海に泳ぎに行こうよって、放課後の時間に、兎のことを遊びに誘ってくれたのだ。(そのことに今はじめて兎は気がついた。虎とは小学生時代からの幼馴染の友達なのに……)
「虎。ありがとう」と顔を赤くしながら(なんだか、恥ずかしくて仕方がなかった)兎は言った。
「なんのこと?」と、なにもわかっていないよ、と言ったような顔をして虎は言った。
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