虎の貸してくれた水着は白色の競泳水着のような水着だった。色が違うだけで、虎の着ている水着と同じ水着のようだった。(カラフルなビキニとかだったらどうしよう? と思ったけど、もちろんそんなことはなかった)

 兎がその虎から貸してもらった水着を着ると、少しだけ水着がきつく感じた。(そのことに兎はちょっとだけ、いつのまにか虎のほうが痩せていたので、むっとした)

 兎と虎は同じくらいの背丈で同じくらいの体型をしていたのだけど、(小学生のときからそうだった)それでももちろんぴったりとはいかなかった。(中学生くらいまでは、ぴったりだったけど)

 胸の大きさでは兎のほうが大きかったけど、腰は虎のほうが細くて、おしりも虎のほうが大きかった。(ちょっとだけ納得がいかなかった)

 兎は自分の長い黒髪をさわった。兎は子供のころからずっと髪を伸ばしていた。虎はいつも髪を短くしていて、高校生の今は肩くらいまでの髪をしていた。

 虎は元気でかわいいから、小学生のころからずっともてていた。兎も小学生のころから美人だとよく言われたけど、みんなに冷たくしていたからなのか、もてたりはしなかった。(少なくとも兎本人はそう思っていた)

 ……、私も虎くらい素直に、可愛くなれたらいいのにな。

 と、そんなことを考えながら、岩の物陰で水着に着替えると、兎は鞄の上にきちんと制服をたたんでおいてから、ゆっくりと歩いて海のところまで行った。先に走っていった虎の足跡がはっきりと白い砂浜の上に残っていたから、そのあとについていくようにして兎は白い砂浜の上を歩いた。

 海ではもう虎が少し遠くのほうまで泳いでいたけど、兎はすぐに泳ごうとはしないで、波の寄せてくるところの近くに座って、そこから楽しそうに海を泳いでいる虎の姿をぼんやりと見ていた。

 空では海鳥の鳴いている声が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る