第11話 他属性の魔法を使ってみよう


「あなたは察しがいい。あと四属性、同時に教えましょう」


 風と水の基本術も2つ。

 突風ガスト旋風ワールウィンド

 水球ウォーター降雨レイン

 

 一時間近く練習しただろうか、レベルが1上がった。昨日の座学と今日の実習で経験値が増えたらしい。

 

 突風は草木を揺らして葉を飛ばし、旋風は砂埃を巻き上げた。

 水球は壁に当たって弾け、降雨で校庭の土壌を潤した。


 

「これで基本の三属性が扱えるようになりましたね。どうでしょう? この三属性の魔法でモンスターを倒せると思いますか?」

「いいえ、使えるとすれば火魔法くらいでしょうか。それでも火球は遅いし、火炎も範囲が狭すぎます」

「そうですね、スキルが無いとただのパフォーマンスです」


 基本の三属性。

 火は風によって更に燃え上がる。

 風は水を吹き飛ばし、水は火を消す。

 いわゆる三すくみだ。


「これから教える光と闇は相反する属性です」


 光属性の太陽光サンライト

 闇属性の暗影シャドウ


「この二つの属性も、他の三属性と扱いは変わりません」


 光と言えば太陽、闇といえば影。

 容易に想像することができる。三属性の後に再現するのは簡単な事だった。


 ただ、暗影シャドウを発動した時だった。

 黒い影の中で何かが渦を巻いているのが見えて術を解いた。


「えっ、何ですか今の!?」


「そう、闇属性は少し特殊なのです。そもそも闇属性適性者が少なく、まだまだ解明されていない事の方が多いのです」


 確かに、僕がアイテムボックスと呼んでいるのは異空間生成という闇属性魔法だと言っていた。


「先生は異空間生成をどう考えていますか?」

「魔法とは、自然現象の再現です。そのような自然現象はありますか?」


 まさか、ある訳がない。

 いや、ちょっと待て……そういえば。


「もしかして、時空の裂け目ですか……?」

「その通りです。異空間生成は闇属性魔法の一つです。とても便利な魔法ですね。魔力の消費も微々たるものですし」


 先生は話を続けた。


 各所に発生する『時空の裂け目』とは、魔素溜まりから発生した特に強力な魔石によって齎される。

 強力な魔石は異空間の中で高ランクのモンスターとなり、更に異空間内の魔素溜まりからモンスターが生まれる。

 

 時空の裂け目とは、いわゆるダンジョンだ。

 裂け目の大小で、中にいるモンスターの強さが大まかに分かるらしい。

 いずれにせよ、時空を裂く程の魔石を持った最深部のボスモンスターは強力だ。


「その時空の裂け目ですが、近年規模が大きくなっています。何らかの異変が起きている事は間違いなく……」


 そう言いながら先生は、ハッと目を大きく開いた。


「失礼、ケント君には関係の無い話でしたね。忘れてください」


 気になる……けど、問い詰めるなんて事は出来ない。


「他に質問がなければいい時間ですね。あと一日予定していたのですが、教えることが無くなってしまいました。事務に伝えて金額を変更しましょうか」


 確かに、全属性問題なく習得した。

 

 今のクラスは戦士。

 これから上位の派生クラスに移行すれば更に強力になるだろう。ただ……。

 

「先生、相談があるのですが」

「何でしょう?」


「僕はただ、持っていた武具に合わせて戦士のクラスを選びました。全属性適性オールマイティという事ですが、魔術士を選び直した方がいいのかなぁと……」


「クラスの選定に正解はありません。ですが、一般的な事を言いましょうか」


 先生はそう前置きして言葉を続けた。


「戦士のクラスで戦ってみて分かったでしょうが、属性の適性が無くとも十分に戦うことができます。ただ、風属性の適性があれば更に自身と武器の速度が上がり、強力なスキルを扱う事ができます。だから、適性が風属性のみの方は戦士の派生クラスが多いですね」


 確かに、僕は属性の何たるかを知らずにモンスターを仕留めた。盾役タンク等、無属性でも出来ることは多い。


「そして、聖職者の派生クラスは主に回復やステータス強化などのサポート役になります。ですから、必然的に回復、補助スキルが多い水属性や光属性の適性者が多くなります」


 ララノアは水属性の攻撃スキルも使っていた。サブアタッカー的な立ち回りもできるのかもしれない。


「あとは、種族による適性もあります」


 獣人やドワーフは戦士が多く、魔力の高いエルフは魔術師と聖職者が多い。

 平均的なステータスの人族は、クラスに偏りは無い。


「言うまでもないかもしれませんが、わたくしのクラスは魔術士の派生クラスです。ですから全属性適性オールマイティのケント君には魔術士のクラスをおすすめします。ですが、選ぶのはあなた自身です」


 悩む事は無い。

 そもそも魔術士にクラスチェンジする為にした質問だ。戦士で覚えた固有スキルは多くない、早い方がいい。

 

「では、魔術士にクラスチェンジします」

「そうですか。ちょうどいい時間です、わたくしもついて行きましょう」



 先生の後に続き、受付カウンターへ。

 1万ダルを支払い、魔術士のスキルブックを手に入れた。無料配布は初回だけらしい。

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