第7話 続・学校へ行こう
いつもの安ホテルで目を覚ました。
とりあえず、一ヶ月の追加滞在をお願いした。部屋が確実に一部屋埋まるのはホテル側にとってメリットなんだろう。連泊割引で8万ダルになった。
その代わり、部屋の掃除とシーツ交換は三日に一回だ。それでも十分すぎる。
さあ、今日から訓練学校に入校だ。
正直、初めて大学に行く日の方が緊張していた。友達ができる気がしなかったからだ。
何かやりたい事もなく、成績だけは良かったため大学に進学した。けど、やっぱり僕にはサークルに入ってキャンパスライフを謳歌するなんて事には無縁だった。
でも、この世界では早速パーティーメンバーが出来た。上手くやっていけたらいいけど。
まぁ学校というよりは教習所だ、気楽に行こう。
学校は午後からだ。今は朝10時、ゆっくり休んだ。ゆっくりと時間を潰そう。
お気に入りのカフェ。
いつもはアイスティーだけど、ケーキと共にコーヒーを頼んでみた。
美味しい。ケーキの甘さにコーヒーの苦味が合っている。
この世界の食文化には大満足だ。
照明や空調なども魔石を動力とした魔法具で快適だし、街は衛生的で人々の暮らしも豊かだ。
ただ、モンスターの襲来など、現実世界よりも圧倒的に身の危険が大きい。
クラスの取得で自分の身を守る
まぁ、この世界から出られたら必要はないんだけど……。
そんな事を言ってても仕方ないので、学校に行こう。
その前に腹ごしらえだ、ケーキを食べたから軽くでいい。
フライハイト戦闘技術訓練学校。
数日はここに通う事になる。
チラチラと視線を感じる。
後で聞いたところ、
カウンターで声をかけると、笑顔が可愛いショートヘアのエルフ女性が僕に気付いた。
「あ、おはようございます!」
「よろしくお願いします」
「では、ご案内しますね!」
茶色のショートヘアから尖った耳をピコピコ動かしながら、エルフの女性は僕の前を歩いている。
二階に上がると、長い廊下には多くの扉が面している。窓からは広い中庭が見える。いや、中庭というよりは広いグラウンドだ、外で指導を受けている生徒が多くいる。
この学校の作りが何となく分かった。
大通りから見ると幅も奥行もかなり大きな四階建てだったが、コの字型の校舎の内側に中庭があり、そのまま後方まで敷地が広がっている。
校舎内で机上学習をし、広大な外の敷地で実技指導が行われるんだろう。
「こちらですね!」
「あ、あぁ……ありがとうございます」
「緊張なさらずに頑張ってくださいね」
女性は小声でそう言うと、笑顔で戻って行った。やっぱり緊張してるように見えるんだろうな。
案内された部屋のドアをノックする。
中から返事があり、ドアノブを回した。
「失礼します」
一礼して正面を向くと、背格好は僕と変わらない赤いローブを着た女性が笑みを浮かべて立っている。
薄い紫色のロングヘアーから尖った耳が突き出している。肌は色白で、切れ長の目と通った鼻筋、かなり美形なエルフの女性だ。
「よろしく、どうぞ座って」
「はい、よろしくお願いします」
長机から椅子を引き、腰を掛けた。
「まず、お互い自己紹介をしましょうか」
そう言ってエルフの女性は教卓についた。
「わたくしの名前は『エルミア・フライハイト』です。エルミア先生とでも呼んでもらおうかしら」
フライ……ハイト……?
「えっと……学校の名前と同じですね……」
「ええ、そうね。わたくしが学長ですから」
「……へ?」
「あなた、
そういえば受付のエルフ女性が、全属性適性の人を学長以外で初めて見た様な事を言っていた。この学校で一番の術師から魔法を教えて貰えるのか……。
あ、さっきの緊張せず頑張ってっていうのはこういう事か。
「で? あなたの自己紹介は?」
「あっ、ああ……ケントと言います。魔法の基礎も分かっていませんが、よろしくお願いします」
「何でもそうだけど、基礎を疎かにしてはいけません。その点に関しては、基礎が分かっていないというのは悪い事ではありませんよ。わたくしが一から指導できるんですから」
「はい……あのぉ」
「なんでしょう?」
僕は右手を上げて発言を求めた。
「学長自らご指導頂けるなんて……別途授業料を支払った方が良いのでは……?」
「フフッ、心配ご無用。
という事で……フライハイト学長の指導が始まった。
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