第5話 モンスターを退治しよう
腹ごしらえを終え、北門を抜けて外に出た。
スキルセットも完璧だ。
これを忘れると、ただただ剣を振り回すことしか出来ない。
まぁ、スキル二つしかないけど。
さて、どこに何がいるのかも分からない。
上位モンスターの種類等は設定したが、他のモンスターはAIによって生み出されているため、どんなモンスターがいるのかも知らない。
とりあえず、モンスターがいそうな所と言えば山だろう。北西の方向に見える山を目指す。
これから人生初の戦闘だ、無駄な体力を使う訳にはいかない。ゆっくりと歩いて山の麓に到着した。
早速、前方に鹿がいる。
いや……違うな。鹿の様な角が生えた大型のウサギだ。なんだあれ……。
左手には鉄の盾を持っている。腰に携えた剣を抜いた。
持ち方すら知らないはずなのに、まるで以前から知っていたかのように剣を構える。
体長50cm程の大ウサギが、標準を定めて飛びかかって来た。
構えた盾で防御する。
【Damage! 59】
ウィンドウに被ダメージが浮かび上がる。痛みを覚えたが、堪えた。
『強撃!』
盾の前で体当りを遮られた大ウサギに向け、剣を振り下ろす。
【Hit! 92】
肩あたりに大きな傷を付けたが、致命傷にはならない。
『キーッ!』
えっ、速っ……。
大ウサギは更にスピードを上げて飛びかかってきた。
急いで盾を構えて防ぐ。
【Damage! 95】
さっきより強い痛みが身体を襲った。
多分スキルを使ったな。
全力で剣を振り下ろす。
ダメージは与えているようだ、少しづつ動きが鈍っている。
一度攻撃をすると、暫くは何も出来ない。
三発目の強撃だ。
『強撃!』
ブロードソードが大ウサギの頭を直撃する。
【Critical hit! 131】
やっとの事で倒れた。
【Level up! Lv.1→Lv.3】
「ハァ……ハァ……やっと一匹……」
極度の疲労で尻もちを着いた。
でも、僕がモンスターを退治できるなんて……。
力尽きたウサギは、形を留めておく事が出来ないようだ。徐々にサラサラと霧の様に消えていく。
【ケント Human Lv.3】
〚クラス 戦士 5/50〛
体力 : 205/480
魔力 □□□□■■■■■■
腕力 : 116 +20
知力 : 77
俊敏 : 77
頑丈 : 116 +25
物理攻撃力 : 150
魔法攻撃力 : 77
防御力 : 141
おぉ、一体でレベルが2上がった。
人族は基礎値を基準に、1レベルアップにつき8づつ上がっていく。
体力の仕様は、レベルアップ分が加算されるのか。体力はまだしも、魔力が持たない。
大気中には魔素が含まれている。
呼吸により徐々にではあるが、体力と魔力が回復していく。
とはいえ、これでは効率が悪すぎる。鹿ウサギ一体倒すのに体力は半分、魔力は尽きかけている。普通はパーティーを組んで戦うんだろうな。
ただ、僕には知り合いが一人もいない。
ウサギの死骸から消えずに残ったのは、鹿の様な角と淡く紫色に輝く魔石。もう一つ何やら薄い膜のような物が一枚。
アイテムボックスについてもこの二日間で理解が深まった。
出し入れするのにタップは必要ない。必要なのは「目視」と「意思」だ。
ウィンドウのアイテム一覧の文字を目視すると濃く浮かび上がり、それを取り出すという意思を示すと出したい所に現れる。アイテムボックスに入れる時はその逆だ。
足元に転がる素材を目視し、アイテムボックスに収納する意志を示すと、素材と魔石は流れた血を残して消えた。
ウィンドウのアイテム欄には、ジャッカロープの角、魔石、
心革ってなんだろ。
ポーションとエーテルで体力と魔力を回復して二匹目のジャッカロープに戦いを挑み、泥仕合の果てに勝利した。
魔力がもうカツカツだ。
魔力1マス回復するのに体感で3分くらいだろうか。全回復させるには30分はかかりそうだ。
「ハァ……ハァ……先が思いやられる……」
【Level up! Lv.3→Lv.4】
【剛健 Lv.1 を覚えた】
おっ、何か覚えた。
クラスの熟練度が10になっている。
〚アビリティ〛
全属性適性
混成
銘記
〚固有スキル〛
〈アクティブスキル〉
強撃 剛健 Lv.1
〈パッシブスキル〉
物理攻撃力上昇 Lv.1
新しい固有スキルだ。
〚
最大魔力の30%を消費し、一定時間防御力を30%アップする。
早速スキルをセットしとかないと。
〚スキルセット〛
強撃
剛健 Lv.1
――
――
物理攻撃力上昇 Lv.1
魔石と心革という謎の膜のようなものは確定ドロップらしい。今度は角はなく、肉の塊が落ちている。
よし、街に戻ろう。
そう思って歩き出したその時。
「イヤァーッ!!!」
女性の叫び声だ。
振り返ると、山の奥から涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたエルフ女性が走って来た。後ろにイノシシを引き連れて。
「たーすーけーてぇー!!」
さすがに逃げる訳にはいかないな……。
女性を追う全長1メートル超えのイノシシの前に立ちはだかり、盾を構えた。
『剛健!』
ギリギリの魔力で防御力を30%アップさせて体当りを受け止める。
【Damage! 87】
ジャッカロープより攻撃力が高い。けど、十分戦える。スキルにより防御力が上がった証拠だ。
ただ……魔力が枯渇した。
『
エルフ女性の放った光が、僕達二人を優しく包み込む。
魔力の回復速度が大幅に上がった。
おお、これで戦える。
『強撃!』
【Hit! 90】
『
【Hit! 103】
エルフ女性右手から、水の砲弾が勢いよくイノシシに飛んだ。
元々ダメージを与えていたんだろう、イノシシは力尽きた。
【Level up! Lv.4→Lv.6】
「ハァ……ハァ……助かった……」
「良かった。大丈夫ですか?」
エルフ女性は四つん這いに倒れ込んで息を整えている。
ようやく立ち上がり、一つ深呼吸をして僕に向き直った。
「ありがとね、まさかEランクのモンスターが出てくるとは……いやぁ、聖職者のソロはやっぱキツいね」
女性はそう言うと高らかに笑った。
「僕もさっき命からがらウサギを二匹倒せたところです……」
「戦士でもそうなんだ。じゃ、アタシなんて絶対無理じゃん。とりあえず帰ろう……死ぬかと思った……」
イノシシの素材と魔石が足元に転がっている。エルフの女性はそれを革のリュックの中に収納し、背負った。
女性は薄茶色の髪を後ろで三つ編みにし、尖った耳の前に少し毛を垂らしている。
目はクリっと大きく、活発そうな笑顔を僕に向けた。
「アタシは『ララノア』だよ。アンタは?」
「あぁ、ケントです」
「ケントね! ホント助かったよ」
目を直視出来ない。
コミュ障がこの世界でも顔を出す。
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