第4話 終結

籠城四日目の昼、モチベーション最高の状態で課題を始めた。普段の強制された学習と比べて圧倒的に効率が良かった。だからなんとしてでもこの状態をキープしたいと考える。だがそんなことが許されるわけないと自分でもわかっている。ならどうすべきか、俺はそれについて考えつち、宿題を終えた優越感に浸りながらゲームを始めた。

ついに籠城五日目が来た。俺は朝早くに目覚めリビングで母を待ち受ける。そして机には母との交渉について書いた紙をおいた。数分後母はいつも通り起きてきた。そして俺を認識したと同時に、

「拓人、何してたの!」

声こそ小さいが鋭い声で俺に問い詰める。

「母さん、交渉だ!俺が次のテストで学年トップ三十に入ったら、宿題について口出しするのはやめて!」

母が驚くほどの声量で俺は先手を取る。そして母は少し困惑しながら、

「別にいいわよ。」

そう返す。

「えっ」

俺はつい拍子抜けしてしまった。

すると母は、

「三十位に入れるだけの学力があるなら宿題に口出ししないわよ。拓人が毎回平均以下の点を取るから勉強させてるだけよ。それに宿題を出さない日があるって先生も言ってたし。」

俺は図星を突かれた。そしてそれと同時に、母が宿題について口出ししていた理由も理解した。俺が落ちこぼれないように助けてくれていたと。

俺の交渉は意外にもすんなりと終わった。そして俺への嫌がらせと思っていた行為が、俺への愛と気づいたため俺も母も以前より仲が良くなったような気がした。

そして時は流れテスト返しの日。今回のテスト勉強は全て自分で計画を立てたし、母からの口出しもなかった。つまりこれで三十位に入れなければ俺の完全敗北ということだ。

テストが返され、成績表が俺の手元に届く。そこに書かれていたのは五十三位という文字だった。学年全体で三百人いるため決して悪い順位ではない。だが母に対して宣言したのは三十位、家に帰るのが億劫になった。

授業が終わり家へ帰る。母からはテストの件は触れない。だから俺から、

「母さん今回のテスト五十三位だった。」

そう言った。

すると、

「よくやったじゃない!三十位には入れなかったけど、これからもこれくらいの順位を取れるなら口出しなんてしないわよ。」

そう言ってくれた。

少し意外だったが母の寛大さに救われた。

時はさらに流れ俺は難関高校に合格した。あの日俺が籠城という選択肢を取り、自分で計画を立てて学習することで、勉強に対するハードルが下がり今がある。俺は自分自身の殻を籠城という行為で破ることができた。これは俺と籠城という組み合わせだからできたことで、他の人ではなし得なかったと思う。まるで金管楽器と息を吹き込む唇のように。

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トランペットで籠城します!〜俺の五日間籠城〜 Assuly @Assuly

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