第4話
【絵本の話】
ある夢の国に女の子がやってきました。名前はユイちゃんといいます。ユイちゃんはさっきから何かを探しているみたいでした。とても豪華な屋敷に迷い込んだユイちゃんは、たまたま見かけた婦人に話しかけてみます。
「あの、青い鳥を知りませんか。」
「私は知らないね。それより座ったらどうだい。」
ユイちゃんの目の前には大きなテーブルと豪華な食事がありました。それだけではありません。デパコス、ブランド物のカバン、貴金属、ユイちゃんが欲しかったものがたくさんあります。
「いらっしゃいませ。ここはおかねもちのくにです。」
どこからかミシェルちゃんの声がしました。ユイちゃんはお金持ちの国と言われてとても納得しました。だって、ここは豪華絢爛そのものだからです。
例えば目の前でテーブルについていた婦人はおもむろに耳に着けていた大きな真珠のイヤリングを手に取り、そしてそのまま黄金の飲み物が入ったグラスに落としてしまいました。
「えっ。」
ユイちゃんが驚いているうちに真珠は溶けてしまいました。そして婦人は溶かした真珠を飲み干してしまいます。
「ここなら青い鳥がいるかもしれない。」
ユイちゃんは自分がお金持ちになりたかったことを思い出しました。ユイちゃんのお友達はいつもたくさんのブランド物やお小遣いを持っているのです。お友達と遊ぶためにはお金が必要でした。
「私の幸せはこれなのかも。」
ユイちゃんは豪華なこの場所で青い鳥を探し始めました。
「誰か青い鳥を知りませんか。」
ユイちゃんは一所懸命青い鳥を探しますが周囲の人は見向きもしません。彼らはブランドを見繕い、毛皮のコートを着て艶やかな髪をなびかせながら闊歩しているだけです。
「ここはなんだろ。」
ユイちゃんは豪華なテーブルがある屋敷をでて小さな路地裏を見つけました。
1人で入るのはとっても怖かったですが恐る恐る近づいてみることにします。もしかしたら青い鳥がいるかもしれないのですから。
「このカバン素晴らしいでしょう。なんと15万ドルもしましたのよ。」
「まぁ、ご立派ね。わたくしのこのカバンも20万ドル致しますのよ。」
「素晴らしい物をお持ちですわね。流石奥様ですわ。」
ユイちゃんは何だか拍子抜けしました。怖いものに身構えて入ったのに奥様方が談笑しているだけだったのですから。
でもその考えはすぐに変わりました。せかせかと1人の奥様がこちらに向かってきたのです。
「どうしましょう。負けてしまうわ。25万ドルのカバンを探さなくては。」
奥様はユイちゃんに気づくことなく通り過ぎて行きました。
そしてそのあとにもう一人の奥様も出てきました。
「たいしたことないわね。たかが15万ドルですもの。」
この言葉には嘲笑が含まれているような気がしてなりませんでした。別にユイちゃんに向かって言われたわけでもないのになぜか傷つけられた気がしています。
「お金持ちは幸せではないのかもしれない。」
先ほどの会話が財力争いであったことに気づいたユイちゃんはお金持ちはいいことばかりでないように思えました。
「いくら生活が豊かでもあんな争いは幸せとは言えない。」
ユイちゃんはお友達の間にもこんな会話があったのかもしれないと思い至りました。あの4人組は本当にお友達だったのでしょうか。自分だけが仲間外れにされたと思い込んでいたけれど本当に他の皆は仲良しだったのだろうかと考えました。
「私はこうはなりたくない。」
ユイちゃんは帽子に触れて他の国へ青い鳥を探しに出掛けました。
ユイちゃんはその後多くの国をめぐります。夜の国、記憶の国、子供の国、森の国、水の国、それでも青い鳥は見つかりません。
見つからないものを探し続けるというのは大人ですら辛いことです。ユイちゃんはまだ17歳。探し疲れて飽きてきてしまいました。何の成果もなく疲れただけなのです。
どの国でも幸せに見える辛さに触れたことで精神的にも疲れていました。
「疲れた。一旦元の場所に戻るとかできないのかな。」
ユイちゃんは一度最初の受付があった場所に戻ろうと思い帽子に触れました。
「戻ってこれた…?」
大成功!ユイちゃんは元の場所に戻ることが出来ました。
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