第3話 可惜夜に僕らは 3

 僕は、一体どこまで話してよいかわからず、渇いた喉を潤すために、持ったグラスを結局、その目的のためではなく、この生ぬるい空気をリセットするための間に使った。


 「そして、真人間の君は、彼女の言いつけ通り、一分の狂いもなく、浴衣を着て、祭りに向かった。そうだね?」


 ティーカップを口元に近づけたまま、一息もつかずに彼女は言い切った。

このクソ暑い日に、ホットコーヒーを飲む彼女を僕は、少し冷めた目でみた。


 「ああそうだよ。間違いなく、僕は一分も狂っていなかったし、浴衣の着付けも完璧だった。」


 「そして、彼女もまた、同じタイミングで、完璧な浴衣姿で君の目の前に現れた。君は、彼女のあまりの美しさ、そして布の隙間から見える、透き通った素肌にひどく興奮し、非常に残念な童貞くさい挨拶を交わし、手汗でずぶ濡れの手では、彼女の手を引くこともできず、互いに後から思い出すと、赤面したくなるような距離感で一番ホットな夜な過ごした。」


 彼女は僕をまくしたてるように話したが、終えたあと、少し恥ずかしそうにしていた。チョイスされた言葉がどことなく、洋画に出てくる主人公の右隣の奴みたいで、いちいち気に障ったが、まるですべてを見透かしているよいうな彼女の話し方が僕の沸点値を理解しているようだった。完全に僕は彼女の手のひらだ。


 「ああ、正解だよ。彼女を喜ばせることも、悲しませることも、とにかく何もできなかったよ。たこ焼きを食べて、金魚をすくって、少し目を離せば、はぐれてしまうような人混みを手をつなぐこともせず、ねり歩いただけだよ。」


 「君、言ってて、みじめにならないの?好きな人なんだよね?愛した人なんだよね?もっとこうパッションで行動しなきゃ、女の子は、ついてこないよ?」


 そっちが言わせたんだろ。と少し強めのつっこみを入れようとしたのをグッとこらえて、コーヒーを一口含んだ。

 氷がほとんど溶けていて、味が薄まったコーヒーの苦みが波のように、口の中に広まるのをただ受け入れた。



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