第4話 「」
朝。夜が引いてって、代わりに明るいのが出てくる。5時の空気は澄みわたって、夜型の人間でさえ、この時間は良いモノだと思う。昼は人通りの多いこの街でさえ、朝はずいぶんカラッポだった。
私の家の近くには、池があった。
「」
池に呼びかける。けど、彼は餌が無いと出てこない。それを知っててもついつい呼びかけてしまうのは、さっきコンビニで買ってきたサンドイッチを、ワンチャンで渡したくなかったからだ。「」 私はコンビニの袋を揺らした。
「よぉ、ボス。ご苦労さん」
『ざぱぁ』 と、水面から、ニンゲンが出てきた。格好はダイビングスーツを着て、目にはしっかりゴーグルを嵌めている。一見してただのダイバーだが、すっとんきょうなコトに、頭に皿を、ヒモで留めていた。
「」
「おいおい。俺とボスの仲だろう? 時間なんて、いくらでも作るさ」
「」
「待て、そりゃ違う」
ダイバーは強気に、私の手からサンドイッチをひったくった。
「」
「あぁ、チルトットの連中だろ? そりゃカンカンさ。だって運ばれてくるハズだった金が…傑作だよな! ふへへへ」
私はダイバーがサンドイッチを食べるさまを、ずっと池の柵から見ていた。すると、「おはようございまーす」 朝早くからランニングをしていたオジサンが、私に挨拶をした。
「」
私は挨拶を返した。
「!」
ランニングをしていたオジサンは、速度を上げてその場を後にした。
「…話を続けるけど、ボス。作戦は順調だよ。ホントウだとも。言った通りチルトットの連中はカンカンで…あぁ、そうそう! もう一個カンカンなトコロがあるぜ」
「」
「ホラあの、子供がやってるヘンな事務所だよ! 吸いがら…じゃなくて、『ズイガラ本舗』 だっけ? いやさ、偶然ディッシャーソープの駅を利用して大金運んでたみたいで…不運な奴らだよな!」
「」 私は首を振った。
「返さねぇよ! どうせ弱小事務所なんだから、お小遣いがてら貰っときゃイイの」
ダイバーはぺろりとサンドイッチを食うと、ゴミを水面に浮かべた。私はそれを手で寄せて、コンビニの袋にしまった。「」 私は別れの挨拶をすると、その場を後にしようとした。「なぁ!」 その時、ダイバーが私を呼び止める。
「その…知り合いにさ。腕のイイ医者がいるんだけど…」
「」
「…」
私は首に埋まった銃弾の底を叩くと、今度こそ池を後にした。
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