第2話 ある男
電子レンジの中で、冷凍チャーハンが回っている。『ヴィー…』 だなんて、「「本日は絶好の洗濯日和で…」」『ヴィー…』「「続いては占いの…」」『ヴィーーー…』
「「かに座の貴方、今日のラッキーアイテムはチャーハン!」」
『チン!』
「…ヴぇ!」
俺は思わず、口に溜めていた歯磨き粉をプエッっと吐いた。「「かに座でチャーハンて、こりゃカニチャーハンしか」」「余計なコト言うんじゃネェ!」 急いでリモコンの赤を押し、テレビを黙らせた。
「奇跡…マジかよ」
まるで宝物でも取り出すかのように、電子レンジのドアを『ガチャ』 開ける。「アッチ! これアッチ!」 俺は持っていた歯ブラシでラップを取ると、よくよく注意しながらチャーハンを出した。
「最近妙にツいてたが、今が最盛期かも知らん…」
俺は改めてウガイをこなすと、チャーハンを持って布団に座った。そんでテレビを点けなおす。「「ははは!」」『わっ、俺この女優好きなんだよなぁ』 デカいスプーンで米をすくうと、雑に口へと突っ込んだ。それから食い終わるまでの間、特に面白いことは無かった。
「あー、休日なのに。なんもネェ」
その辺に転がっていた雑誌を拾って投げ、ついでにチャーハンの皿をフリスビーよろしく洗面台に投げた。トンデモなく大きな音がして、キッチンそのものから悲鳴が聞こえたような気もしたが、まぁ知らん。きっと明日の俺が何とかする。「きゃははは!」 外からガキ共の声が聞こえた。
「………」
俺はそのまま寝た。
次に起きた時、電話がやかましく鳴っていた。「んだよ」 見ると、時刻は夕方の5時だった。「ゲ」 もう6時間も寝てたらしい。睡眠に関して俺の右に出るヤツは、探さなきゃいないだろう。
「はい…あー、ターザン」
ソイツは俺の友達で、ターザンって奴だった。普段はひょうきんな奴だが、普段じゃない日もひょうきんだった。けどそんなヤツにしては珍しく、ジョークも無しに質問をカマしてきた。何やら穴にハマっちまったらしい。
「〈ディッシャーソープ〉 の駅。あんじゃん?」
「あぁ、どうかしたのかよ」
「パパラッチ・パンチパレード社って、知らない?」
「知らねぇな」
「そうかい。いやぁそんならイインだよ。じゃ、体に気を付けてー」
まるで押し売りみたいに質問して、ターザンは電話を切った。『ツーーー』「「夕方のニュースです…」」 「…」 俺は昼に投げた雑誌どもの隙間から、一枚の紙を寄り取った。
『ありがとう! また今度、一緒に仕事しようね!』
スミっこには『パパラッチ・パンチパレード社より』 と書いてあった。
「…やなこった」
俺は紙をクシャクシャに丸めると、「きゃはは!」「あはっ!」 未だに外で騒いでたガキどもに向かって、思い切り投げつけてやった。
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