46話 納品
巧は、ポイントが潤沢となったので、騎士団に依頼されたテントと背負い袋を納品することにした。
最初は、騎士団の部屋を借りてそこでテントや背負い袋を出すつもりだった。
だが、それだと巧が何も持って行っていないのに、品物が納品されていることが騎士達にバレてしまう。
魔法袋を持っているという可能性も考えてくれるだろうが、それを持っていると認識されると、強盗に変装した騎士に狙われる事も考えられる。
騎士とて人間だ。金に困っているなら強盗くらいやるだろう。
そこで、一旦店で出し台車に乗せて納品することにした。
面倒だが、誤解され狙われ続けるよりマシだ。
更に、店に物資が搬入されていないのに大量の商品があることが、周辺の店の人達に疑惑を生み出すと思った巧は、何も乗っていない台車に軽くて嵩張る物を乗せ店に搬入するというカモフラージュを何回も施した。
「さあ、納品を開始するぞ」
巧は、近くの店から台車を借りてテントを載せていく。
いかにテントとしては軽いといえ、1つ12kgだ。
巧が台車を引っ張っていける数は5個が限界だった。
台車とは言え、60kgは重い。
これを引っ張って騎士団本部まで50回も往復しなくてはならない。
さらに、背負い袋も同様だ。
巧は、途中まで引っ張っていって絶望した。これを1人やるのはとても無理だと思った。
輸送だけで1月掛かってしまう。
そこで応援を呼ぶことにした。
冒険者ギルドで人員を募集したのだ。
近衛騎士団の本部は城の東に位置しているため、防壁の東門から近い。
そのため、テントを1つ防壁の東門まで運んでくれたら、銅貨20枚出すと言って募集した。
するとそこに居た20人程の冒険者が集まった。
「本当に運ぶだけで良いんだな?」
と冒険者の1人が聞いてきた。
巧は、肯定するとその冒険者はよっしゃ~とやる気を漲らせていた。
安全な依頼な上に、なかなかの賃金だからだろう。
巧は、20人の冒険者達を店まで連れて来た。
そして、名前を記入し運ぶテントのシリアルナンバーを記入した。
「このテントは騎士団に納品する物だ。もし、盗めば騎士団から追跡される。へんな気を起こさないように」
と警告しておいた。
冒険者を利用する時にどうすれば上手く動いてくれるかの実験を兼ねていた。
そこで、冒険者から
「2つ、3つ同時に運んでも良いのか?」
という質問が上がった。
「運べるなら構わない」
と巧は言った。
すると
「なら後3つくれ」
とその冒険者は言った。
「俺もあと3つだ」
と数人が言った。
4つと言えば48kgだ人間1人分はある。
巧は、持てるのか疑問だった。
だが……
「「「身体強化」」」
冒険者達は、そう唱えると4つのテントを同時に持ち上げた。
「「「じゃあな。先に行ってるぜ」」」
「あっ。ちょっと待って」
巧は、そう言ったが既に遅かった。
店の方をリオとメイベルに任せ、巧とスージーは東の防壁の門へと急いで向かう。
巧達が東の門へとたどり着いた時には、既に門の側にテントの小山が出来ていた。
巧は、門番に騎士団への納品する品なので、騎士団に連絡して欲しいとお願いをした。
門番は、隣に立つスージーに念のため確認すると、すぐさま連絡しに向かった。
その間にもテントの山は大きくなっていく。
巧は、そのテントのシリアルナンバーを1つづつ確認しては記入していく。
――2時間後
最後の1つを持つ冒険者についてリオとメイベルもやってきた。
「これで全部だよ」
とリオが言う。
結局2時間ほどで250個のテントが全て運ばれた。
「身体強化とか魔法とか反則すぎる」
自力で運ぼうとした巧は、そう愚痴った。
巧は、リストに従って、賃金を冒険者達に渡した。
一番多く運んだ人は、32個だった。
その人は魔術師で16個のテントにレビテイトの魔法を掛けいっぺんに運んだのだ。
たったの2往路で銅貨640個をゲットしたその魔術師は、簡単な仕事だったなと言っていた。
それを聞いた身体強化を持つ冒険者達は地団太を踏んで負けたと悔しがった。
だが。賃金を支払うと、臨時収入だと言って喜んで帰っていった。
巧は、小金貨5枚の手間賃が発生したが、こんなに早く運べたと喜んだ。
こうして、全てのテントが運ばれた所に近衛騎士団がやってきた。
巧は、依頼されたテント250をそこで手渡した。
騎士団の部隊長は個数を数え、ちゃんと250個あることを確認し、受取り書にサインをした。
「ご苦労だった。団長に報告しておく。費用は全ての納品を確認してから払うと団長が言っていたぞ」
と部隊長が言った。
それを聞いた巧は、お辞儀をして自宅に帰った。
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