第5話 スキル ネットショップ
――ニージェスを見送った日、夕食を取った後
巧は、自分のスキルを作動させてみた。
「スキル、ネットショップ起動」
そう唱えると前の世界で使っていたVRゴーグルに出てくるようなウィンドウが目の前に出てきた。
「イラッシャイマセ。ネットショップ”テラ”へようこそ」
と無機質な声がした。
それを見ると、前の世界のネットショップが使えるようだった。
クリックの代わりは意識するだけだ。
PCの操作など比べようもないほど、操作は早く快適でタイムラグも無かった。
だが、いくら購入しようとしても購入ボタンが押せなかった。
「どうなってるんだ?」
分からないと言って、この世界の人にネットショップのことを聞く訳にもいかず困っていた。
暫くあれこれ弄っていると、ポイントが0だということに気づいた。
「もしかして、お金が無い? だが、どうやって増やすんだろう?」
と疑問に思っていると、査定という項目があることに気付いた。
「査定に出して、稼ぐってことか!」
そう理解すると、査定をしてみようと思い至った。
査定は、査定したいモノを見つめながら「査定」と唱えれば良いようだ。
巧は、早速近くにあったコップを査定してみた。
「確か、コップを見つめて査定と言えば良いんだよな」
と独り言を言いながら、コップを見つめた。
そして、
「査定」
と言った。
すると、コップが消え去り、ネットショップの査定画面にそのコップが表示された。
査定額が表示され、YES、NOの選択肢が現れた。
査定額は100ポイントだった。
巧は、ネットショップ”テラ”で買い物をしようとしていたことから、この額の価値が分かった。
「100円かよ」
巧は、コップの査定額に落胆し、Noを選択した。
すると、コップの戻す位置を指定しろとの指示が出てきた。
戻す位置は自分から5mの範囲で任意でできるらしい。
それから、色々ネットショップスキルを弄ってみると以下の事が分かった。
1,査定は5mの範囲であれば可能
2.査定するモノは目で見ていないとできない
3.査定をするとモノが消えネットショップ内に移動する
4.査定できるのは1個だけ
とこんな感じだった。
「まあ、追々分かることもあるだろう。今日はもう寝よう」
と巧はベッドに潜り込んだ。
色々あって疲れていたのか直ぐに眠りについた。
――次の日の朝
「おはよ~~」
とリオが巧の家の扉を開けて入って来た。
「んん?」
巧はまだベッドの中で微睡んでいた。
更に、まさかリオがニージェスの居ないこの家に来るとは思ってもいなかったので怪訝な顔をした。
「何よその顔は? 私がここに来るのが変とでも?」
リオは巧を睨み付けた。
「い、嫌。そういう訳じゃないけど……」
巧は、こういう時どういう表情をして良いか分からなかった。
「なら、さっさと起きなさいよね。今日からマジェスタ魔法学園に入るための特訓をするんだから」
リオは巧に特訓を手伝ってもらうつもりのようだ。
だが、リオは、巧からの反応が無いことを気にして
「タクミ、私を手伝うの嫌?」
としおらしく聞いてきた。
少女のそんな所を見せられて、巧は嫌だと言えなかった。
それを聞いたリオは微笑んでありがとと言った。
これで引っ込みがつかなくなってしまった巧は、
自分が蒔いた種だし、やるしかないかと覚悟を決めたのだった。
巧は、ニージェスにマジェスタ魔法学園に入るための試験内容を大まかに聞いていた。
それによると、フローク語、魔法語、算術、面接、実技があるらしい。
当然、読み書きは授業を受ける時に必須である。
文字が読めなければ、授業を受けても分からない。
文字が書けなければ、記録に残せず成果を残せないということだ。
これでは、授業を受ける資格はないだろう。
フローク語は村長の所にある書物を使えば何とかなるとして、問題は魔法文字だ。
こればっかりは、この村には無いので、別の町で入手するしかなかった。
また算術だが、これは巧がアラビア文字を使って日本式を教えるつもりだった。
どういう方法でやろうとも結果が合っていれば、合格できるだろうと見越してのことだ。
この世界の数字はアラビア数字にとても似ていたので、教えるのはあまり問題はないかなと思っていた。
面接だが、ニージェス曰く、最低限の礼節を見るためのものらしい。
残念ながら、この村に礼節作法を詳しく知る者が居なかった。
リオの礼節スキルを見極めてからだが、教える必要があれば、巧が社会人生活で身に付けた日本式礼節作法を教えようと考えていた。
そして実技だが、これは流石に巧も教えることができなかった。
村にある魔道具を観察し、手探りで身に付けるしかないのが実情だ。
これも、情報を得たかったら大きな町に行くしかない。
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