くらげの声


 海の月を眺めようか

 見逃してしまうには惜しいのに

 誰の目に留まるとなく溶けていく


 ふわふわ ゆらゆら

 手を伸ばしては消えてく「灯り」

 いつか一等真っ暗な

 海の底のできあがり


 何だったっけ?

 どうしてここにいるんだっけ?

 覚えてないや

 ああ、そっか

 最初から「なかった」んだ


 ただただただ、ただ漂って 夢の中辿り着くのは 

 知らない誰かがたたえてた優しい微笑

 僕にはなんにも分からないのに

 何も言わずひかってた水面みなも


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 海の月をつかまえようか

 「ほんの少し」の傍で佇んでるのに

 誰の手も触れられることはない


 ふらふら ひらひら

 手に触れては消えてく温もりが

 いつか透明な揺り籠の中

 一人の夜をまた冷やしていく


 貴女だったんだね

 遠くで叫ぶ声 ずっと聴いてた

 思い出せたの

 ああ、そんな

 最後はもう「なかった」んだ


 ただただただ、貴女に酔って さざなみの中で見つけたのは

 気づけば深く溺れていた感情の亡骸なきがら

 僕に全部、分からせてしまったの?

 煩いほど揺れてた月の影


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ぷかぷか るるりら

 りらるり ぷくく


 何万回繰り返す「はじめまして」

 今度こそ声が届くと良いな

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