ひとおもい


 誰しもが纏うペルソナに

 自分らしさを飾り立て

 いつしか埋もれた時の中

 残ったのは空っぽの「わたし」


 隠し、繕い、探り合って

 演じ使い分けてた化けの皮

 気づけば厚く重くなって

 前向いてらんなくなっちゃった


 次は、今度は

 「誰」になろうか

 手を伸ばし、掠めた

 未来の形


 ほら

 一思いに 私をどこかへ攫ってしまえよ

 風かをる空に全部解き放って

 自由に「なれたら」

 綺麗な残照に変われるかな

 

 枯れない雫を注ぐたび

 黒い百合が俯いてはわら


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 誰しもが纏うペルソナを

 他人の評価で整えて

 削りに削った「正しさ」も

 まだ足りないと思ってしまうの


 剥がし、取りかえ、繰り返して

 無様に草臥れてく化けの皮

 うまく言えていた「優しさ」も

 いつのまにか刃物になっちゃった


 前は、今は

 「誰」だったっけな

 微睡まどろみの中 ぼやけてみえた

 想い出の形


 ねえ

 人を想い 誰かの「大切」になりたかったんだよ

 白南風にすべてを押し付けて

 自由に「慣れたら」

 雀色の時を描けるかな


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 いつか、どこかで

 「誰か」になれるのかな

 強く惹かれた 透きとおる何か

 「私」の形


 一思いに 全部終わらせて仕舞おうよ


 ああ

 人想いの 煩いを拗らせた私でも

 終わりを惜しくないと思えるような

 自由に「触れたら」

 暁を愛おしく思えた


 曇りないひかり きらめくたび

 白百合はそっと頷いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る