名づけがたいの


 名前をつけましょ この気持ち

 喜怒哀楽 好きと嫌い

 足して、混ぜて、掘り下げて

 素敵な名前ができました


 名前を呼びましょ その通り

 花鳥風月 あなたとわたし

 創って、感じて、声にして

 素敵なうたが生まれました


 でも、一体どうしたことかしら

 混ぜ合わせてもまだ足りなくて

 呼ぶにも歌い方が分からないの

 組分けもできず 音にすらならないような

 掴みどころのない「何か」


 喩えなんかじゃ似つかわしくもないの

 ここにある「言葉」じゃ、収集のしの字もつかないわ

 どんなに凝った文字の水彩とか油彩のパレットも

 薄めすぎて色にすらならない、なれないんだね


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 名前をつけましょ 相応しく

 直喩やら隠喩やらかき集め

 上手いこと縮め着飾ったら

 虚構の踊り子が増えていく


 名前を呼びましょ 美しく

 ありったけの見かけの敬意で

 気取らせた声で口にしたら

 何だか中身がすり減っちゃった


 でも、一体どうすりゃいいのかな

 文豪の秀逸なワードセンスも

 雅ないろはの言葉すらも

 多彩すぎるがゆえの 絶妙なズレが

 心を狂わせてしまう「何か」


 冗長な説明じゃ遠ざかってくばっかだよ

 ここにある「感情」じゃ、かえって味気なくなっちゃうな

 どんなに繊細なニュアンスを組み合わせたって

 まっさらなキャンバスは変わらない、変われないんだね


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 わからなくて

 はかなくて

 みえなくて

 さわれなくて


 いとしくて

 にくらしくて

 やさしくて

 さみしくて


 神様に恋をした

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