第3話 神楽
「そろそろ戻ってくるかな??」
「そうだね。練り歩き自体は1時間くらいだから。」
例大祭は、町内の『
「ひかりん緊張する?」
「な、なんで私が…!?」
「だぁーって。今回初めての主役なんでしょ。幼馴染の晴れの姿、ドキドキワクワクじゃない?」
「ま、確かにね。それは莉奈も若菜もじゃん!」
「へへ。」
「ふふふ。」
そう言いながら、3人とも健人の到着を心待ちにしている。
心待ちにしているのだが...光はどんな顔をしていいか分からないというのが本音だ。
「主役かぁ。どんな衣装なんだろ。」
「
「なぬ!?」
「女方!?」
「びっくりだよね。」
「う…なんか私の方がが緊張してきた。」
「なんで莉奈まで?」
「あ!きたよ!」
お
「「「わぁ…!」」」
それは、美しいという言葉では表せない。神がかり的な
「見たぁ!?今の!!てか健人君いた!?!」
「うぅーんと、多分先頭付近にいた神様姿の!?」
「…。」
「すご!えぇい!もっと近くで見よ!!」
「う、うん。」
『見間違いじゃ…ないよね。』
神楽を舞う姿も華やかで、学校で話す健人とは別人だった。正直、ここまでとは思っていなかった。
あまりの美しさに恐怖すら覚える光。
先ほどまでの緊張はとうに消え、夢中で健人のことを追う。
―
――
神楽は
ウカは青年と心を通わせていた。神であっても、人の愛を
ついにウカは荒れ狂う海に身を投げる。自らの魂を捧げることで、止むことの無い神々の怒りを鎮めようとしたのだ。
ウカの愛は、
深い孤独と悲しみに打ちひしがれる青年だったが、ウカを想い続け、この豊かな大地を
――
―
「何かよく分かんないけど。健人君かっきょいい…。ふつくしい…。」
「ん。…すごい…!」
目をキラキラと輝かせる莉奈と若菜。アイドルを尊ぶような、そんな感情である。
だが光は違った。
「…。」
「ひかりん泣いてる!?」
「はは、なんか感動しちゃって。」
「わかるぅ…!話は分かんないけど!!」
「尊いよね。うんうん。」
健人と物語の美しさ。その両方に涙していた。悲恋は決してバッドエンドばかりではない。愛は、永劫残り続ける。
それを体現していた健人の努力が、手に取るように分かったのだ。
終演後に再び姿を見せた健人は、観客から溢れんばかりの拍手を浴びていた。しなやかに手を振る姿は、見るものを惹きつけて止まない。
「あっ…。」
一瞬、健人と目が合った。私に気付いたのか…少しだけ口元が緩み、慈愛に満ちた表情を浮かべる。
『できる?』
「あぁ。誰でもいいんだ。」
『強いんだね。』
「そんなじゃねぇよ。」
『チャンスは一度。』
「分かってるよ。」
「…見つけた。」
不敵な笑みを浮かべ、独り言を呟く男。次の瞬間。
『タッタッタッ』
人混みを器用に
『ドスッ』
「わ、あ…!」
一瞬だった。男は光へ一直線に飛び込む。
「あ…う…あ…。」
その瞬間、鈍い痛みに襲われる。
「んあ?どしたのひk…ひかりん!!」
「あ…いた…。」
「キャー!」
周囲から悲鳴が上がる。
男は光の脇腹にナイフを突き立てると、即座に体を翻した。
その瞬間、行手を
「邪魔だァ!」
『ズサッ』
鋭い刃が女性の背中を貫通した。
「どけっ…ドケぇ!!!」
ナイフを振り回して人を払う。男は錯乱状態で叫ぶ。
「ひかりん!!!ひかりん!!!!」
「はぁ…う…。はぁ…。」
「血を止めなきゃ。誰か!手を貸してください!!誰か…!」
驚き、痛み、悲しみ。
遠のく意識の中で、光は思う。
『なんで。どうして。こんな最期。…嫌だよ。』
何が起こったのか。
全く分からないまま。全身の力が抜けていく。
『バチが当たったんだよ。』
誰かの声がした。莉奈でも若菜でも、健人でもない。
―
――
―――
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