第4話 妹に先輩と後輩

 うぅ。今日は、先輩の事が1段と気になってゲームに集中できないっす。いつもなら、とっくにゲームに集中できている頃なのに……あ。負けたー!!



「ふ。ザコが」


「ちょ! 1勝したくらいで、何調子乗ってんすか!」


「あぁ、負け犬はよく吠える」



 ぐぬぬぬ。たかが、1勝したくらいで、調子乗りすぎっすよ。まぁ、その顔も好きなんす……って、違う違う。ゲームに集中っす。今度こそは勝ってやるっすよ。



「次っすよ。その舐め腐った態度へし折ってやります」


「やれるもんなら、やってみるがいい! はっはははは」



 先輩は、馬鹿なんすか? たかが、1勝で何でこんなに調子乗れるんすかねー。

 あ、勝った。調子乗ってるからっすよ。



「あれー? 先程までの威勢はどこ行ったんすかねー? おっかしいっすね? あれれれれ?」


「ぐぬぬぬ」


「あんなに煽ってたのに、負けてどんな気持ちっすか? ねー?」


「ぶっ○してやる!」


「ちょ! 過激っすよ! サイテーっす! 1度負けたくらいで、ムキになりすぎっす!」


「ほら、ゲーム」


「もう、仕方ないっすね」



 先輩、ゲームの腕はいいんすけど、ちょっと良くなると気を抜いちゃう癖があるようで、よく負けるんすよね。本人は、気づいてないようなんすけど、長年、先輩を横から観察している私にはバレバレなんすよ。

 だから、そこを狙って一気に攻めるのが吉っす。ま、運ゲーとか開始早々に決着がつくゲームはこれが通用しないんすけどね。



◇◇◇


「で、あれからたくさんしましたが、先輩弱すぎません?」


「燃え尽きたぜ、真っ白にな」


「先輩……頑張れ」


「その気遣いが1番傷つくからやめて……」


「そうっすね。先輩、お手洗い借りますね」


「いってら」


「覗かないでくださいね」


「俺は変態じゃねえよ!」


「いやいや、それなりの変態ではあるんすから、自覚持って」


「持ちたくねー」



 そう言って、扉を開けようとしたが、あれ? 扉が少し重いっすね。なかなか開かないから、かなり力を入れ押して開けてみると、原因がわかりました。



「どうしてここにいるんすか?」


「ここは、私のうちよ。どこに居ようと私の自由じゃない」


「理屈的にはそうなんすけど、何故廊下に?」


「そんなの2人が盛りださいための監視以外ある?」


「下品すよ!」


「でも、期待はしてるんでしょ?」


「な、何のことやら」



 反射的に目を背けてしまったっす。心のうちになかったかと言えば嘘になるっすからね。この子相手にこれは失態です。この子の出方に少々、注意が必要すね。



「これだから、メス猫は」


「メス猫メス猫言わないで欲しいっす。私には、三守って名前があるんすから」


「メス猫で充分じゃない」



 全く、会話にならない。どうしたものかと思っていると、ちょうど先輩が出てきた。



「あれ? 三守どうしてまだここにいるんだ? それに由衣も」


「お兄ちゃんお兄ちゃん、この人が突っかかってくるの」


「先輩……」



 さすがにここまで露骨だと寛容な私でもカチンときます。『一泡ふかせてやろうか』と思考を巡らしていると意外にも先輩が咎めてくれました。



「由衣、三守は、そんな何でもかんでも突っかかったりしないぞ? きっとお前が、なんかしたんだろ」



 言い方はあれっすけど、さすがっすね。ちょっとスッキリしました。

 先輩の顔を見るに普段表情筋ガッチガチな人とは思えないくらい慈悲に満ちた顔をしていました。妹さんには、あまり強く出れないタチなんでしょう。譲歩してあんな顔になったのか、それとも裏腹に怒っているんすかね。普段見せない表情だからよくわからないっす。



「違うもん。こいつがいけないんだよ!」



 おっと、本性が垣間見えましたね。しかし、『メス猫』呼ばわりよりかは、幾分ましっすね。ここは、私も口を出したいですが余計話が拗れそうっすから、今は我慢するっすよ。先輩『頼みましたよ』と目配せを送っておきました。

 あ! 鼻で笑うなんて失礼じゃないっすか!



「由衣、とりあえず今日は抑えてくれ。三守はこれでもお客さんなんだ」


「ちょ!! 『これでも』ってなんすか! 『これでも』って!!」


「はははははは。何のことやら」


「笑い事じゃないっすよ!!」


「ホント、ミモリハオモシレー」


「棒読みで言わないでください!!」



 全く! この先輩は、いい雰囲気になったと思ったらいつもこおだ。何で、全てを台無しにするのが上手いんすか。まったくもう……。あ、ダメ。今ニヤニヤしたら。うぅ……。こおいうところも好きなのが先輩にバレちゃいます。今は隠さないと。



「2人だけの空間に浸らない!」


「悪い悪い。忘れてた」



 先輩、何げに酷いっすよね。由衣ちゃんがかなりショック受けた顔してます。由衣ちゃんみたいな子は、自分が中心だって思いが結構強いっすからね、そこら辺注意してあげないとダメな気がするっす。もちろん、個人的な見解っすけど。ちなみに私も忘れてたのは内緒です。

 1番ダメなのが、先輩みたいな無神経男との相性すね。先輩ももう少し人に気遣いを覚えて欲しいです。私にはたまにしてくれるのに……。そっか、私だけか……。えへへへ。

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