第3話 自宅に先輩と後輩
「さ、今日は何やるっすか?」
「それより、さっきはごめんな」
「いいっすよ。怖いっすけど慣れてきてる私もいるんすから」
「しかし、あの本性を何故俺に隠すんだろうな」
「お兄ちゃんには知られたくないとかいうあれじゃないっすか?」
「じゃあ、あいつはブラコンの気質があると?」
「その可能性は無くはないっすねー」
「キモいな」
「それ妹さんに言わないでくださいよ」
「言うかよ」
「なら良いっすけど」
しかし、妹のあの態度はどうにかならないだろうか。兄としては後輩とも仲良くして欲しいところだが。もしかしたらこれから先、長い付き合いになるかもしれないだろうから、関係は良好であっていただきたい。
とにかく今は、ゲームだ。前回無様にもボロ負けしたのが悔しい。そして何より、俺の部屋に後輩と2人なのは精神衛生上良くない。あまり、後輩に意識を向けすぎると想いが溢れてしまう。今はバレるわけにはいかない。出来るだけ、ゲームに集中しておこう。
「今日は何するっすか。しかし、ほんといろいろあるっすねー」
「家族でよくやるからな。中古とかいろいろ買ってたらこおなった」
「そういや、前も言ってたっすね」
「そうだったか?」
「もしかして先輩、ボケが始まってるんすか? やーい、おじいちゃんおじいちゃん」
「……」
天の捌きを食らえておいた。要は、強めのチョップ。痛そうに、頭を抑えてその場に屈んでいる。小さいのに、更に小さくなった。俺は、加害者ではあるものの、知らないふりして頭を撫でたい衝動に駆られたがここは我慢と必死に耐えているところである。
「酷いっすよ! ちょっとした、三守ちゃんジョークじゃないっすか!」
「越えていい線を見誤るな!」
「ぶーー。先輩、器小さいっす」
「俺がこんなのも我慢できない男だと知ってるだろ」
「自分で言っちゃうっすか。ま、そうすね……ってイッター! 何するんすか!」
「自分で言うのは良いが人に言われると腹立つ」
「な、理不尽な!」
「さ、ゲームするぞ」
「ちょ、話変えないでくださいよ!」
「過去は振り返るな! 未来を見ていけ!」
「何、かっこいい風に言っちゃってるんすか! 最悪っすよ!」
それから、後輩からのブーイングが酷かったので、スイーツ1つでチャラという事になった。放課後にでも寄れそうなカフェとか喫茶店、探しとかないとな。
「私は、チョロくはないっすけど、仕方ないっすから、スイーツ1つでチャラにしてあげるんすからね。感謝してください!」
「いや、チョロいだろ」
「な! チョロくないっすよ!」
「三守まじかわいい。超かわいい。天使天使」
「……先輩、語彙力かすすぎません?」
「その割には、顔赤いが?」
「さ、さて、何のことやら」
「やっぱ、お前チョロいって」
「チョロくないもーんだ!」
「ま、いいや」
「良くないっすよ!」
「じゃあ、貸し1つでいいからゲームするぞ」
「わーい。先輩の貸しっす」
「やっぱチョロ(ボソ」
「ちょ、そこ! 聞こえてたっすからね!」
「いいからゲームするぞ」
「もお! わかりまーしたー!」
意外にあっさりゲーム始める事になった。
『俺の貸し』にそれだけの価値があるのだろうか。しかしかわ……ゴホン。まぁいい。今は、ゲームだ。今日こそ勝ってやる。まずは小手調べだ。軽めのゲームでいこう。ミニゲームがたくさんあるパーティゲーム定番のあれ。
「何するっすか?」
「これだろ」
「いいっすねー」
「だろ」
「私は、どの子にしよーかな」
「ル○ージだろ」
「ちょ! どういう意味っすか!!」
「俺、マ○オ」
「ちょ! ずるいっすよ! 私もマ○オがいい!」
「早いもん勝ちだ」
「ぶーぶー」
またもや、ブーイングが隣から飛んでくる。そんなにマ○オがいいのか? いいじゃん、ル○ージで。ル○ージも人気だし強いじゃん。
「仕方ありません! 私、ピ○チ姫で」
「そっか……」
「いや、何で不満ありげなんすか!?」
「いや、キャラ違うくないか、三守とピ○チ姫」
「失礼っす! サイテーっす! 何言ってくれちゃってるんすか!」
「なら、ベイビーの方にしようぜ。三守うるさくて赤ちゃんみたいだし」
「だから、失言に失言を重ねないでくれますかね!?」
「よし、やるか」
「だから、無視しないで欲しいんですが!?」
隣が『わあわあ』うるさいがとにかく今は無視だ。戦いはもう始まっている。いわゆる、盤外戦術というやつだ。多少卑怯ではあるが、これくらいしないとこいつには勝てない。こいつこんなだけど、ゲームはめちゃくちゃ上手い。羨ましい。
「仕方ありません。ボコボコにしてやるっす」
「やれるもんならやってみな」
「先輩、それ強敵が言うやつっす。先輩は、ザコキャラでしょ」
「言うな」
「……そうっすねー」
何故だか、もう負けたような気分だ。まさか、これが盤外戦術というやつな、のか……!? やる前にやられたという訳か。そりゃあ、ゲームでも勝てないわけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます