プロローグ(後)

........


とはいえ、復讐するといっても、相手の正体とか身元が判明しない限り、どうにもならないけどなぁー。どこに住むかも分からないし。それに、奴らはローブを着ていたばかりな連中なので、まともに顔も外見特徴も、『おの金髪ツインテ―ルの王女らしき娘以外』は特定できなかったんだしな!


(その点については大丈夫よ、ふふふ。なぜかというと、これからきみが行くべき国のことについて教えるついでに、犯人全員の素性も教えてあげるわ)


(わあ!いきなり『頭の中に声がー!?』......って、既に魂状態だったっけ?だからなのか、あんたから声が聞こえてきても不思議じゃないかぁー)


「ふふ、そうね。じゃ、きみはあの女が自分からローブを脱ぎ捨て、彼女の恰好が如何にも王族っぽいなぁ~って思ってたのを見てたから~、容姿から理解したきみなら、彼女はきみのバークウィッチ王国の王女、ライザリーンって訳じゃないのも確かでしょうし、だったら、簡単に推察すればー」


「あ!あの人殺しで外道なクズ女は見た目だけ立派だけれど、うちの国のもっと高貴な方で、親切にも外国ルーツの俺に対して良く接してくれてたライザリーンお姫様とは違うんだよ。言うまでもなく、あの女は他国な王女であるという事だけは確かだ」


俺達の国のライザリーンお姫様はとっても優しくて立派な方で、あの最悪な外道女と一緒に語られたくはないね。それに、ライザリーンお姫様はあの女と違って、金髪ツインテ―ルじゃなくて白髪ハーフアップな超美しすぎる王女だ。もちろん、うちのセシリアには及ばないけれども!


「ふふふ、でもいくら本を読んでいても、きみが詳しかったのはここ辺り東方諸国のことだけであって、西方諸国についての情報や絵画と似顔絵が乗せられてる本ってあまりきみの家には保管されなかったわよね?」


「そうだ。大体、うちの国は外交関係や貿易相手であるそこら辺の隣国にしか興味がない閉鎖的な国だそうだったから、直接交流のない外国の事については徹底して情報をあまり国民に知らせないように、外からの本とか出版物の輸入や流入を厳しく制御して限定していたと聞いたこともある。だから、あのクズ女の出身国は多分、この大陸の中心地域か西方地域のどちらかだろう」


俺は一年も前に、愛しき妹セシリアの誕生日パティー以外にも、俺らのバークウィッチ王国が誇る一番聡明な方と言われており、建国経って以来の優れた天才肌な【精霊召喚士】の王女殿下であるライザリーンお姫様の誕生日会にも家族みんなで招待されたことがあった。王女の誕生日は奇しくもセシリアの誕生日より三日も後だったから。


なので、ライザリーンお姫様との面識はもちろん、うちの国における重要なポジションにいる貴族と商人たち、そしてパティーに参加したそこら辺の国々の王侯貴族の顔も身元も雑ながら名前も顔もそれなりに知っていて、覚えている人も少なくないんだ。


でも、俺達一家を襲ってきたあの賊共と一緒にいたあのクズ女の顔も見たことない事から考えれば、遥か西方諸国の王族だって判断しても当然な話だろう。


なので、復讐する相手の国がどこなのか、曖昧だが確たる当てもあるので、女神様のおかげでここの魂状態から復活し、現世へと降り立ったら、俺が目指すべき方面はこの大陸の中心地域になってから情報取集するのもー」


(ちぇ、ちぇー、せっけちなカイルちゃんわね~~。だから、さっき言ったでしょうー?『 犯人全員の素性も教えてあげるわ』って~)


またも念話してきたのかよ、このフェロチンさー、って、命を蘇らせてくれた恩人だってところを考慮すれば、たとえ気さくな態度で友人みたいに接してくれていても一応は女神様みたいなんだし、様づけで呼んだ方がいいのかな...。って、そんなことまで教えてくれるのーむふ~?


どういうことか、それだけ伝えてきたフェロチン様はあろうことか至近距離を保ったままー!

ちゅー!

軽く、俺の唇に自分のそれと触れ合わせてきたのだー!


なー!

お、おお、俺のファスト―キスを!


「くちゅ~。ちゅ。......これで、分かった、...でしょう?うふふ~」


はーッ!?

言われてみれば、確かに、『俺の魂』の内側から、なんか変な内側から煮えたぎるような感覚が芽生えてきて、そしてー


「ふふふ~。大丈夫よ。これで、カイルちゃんも分かるでしょう?それもそうよね?なぜなら、この冥界の三人女神の長女にして、一番奔放な性格だって言われてきた【あたしちゃん】は~、『人間だったきみに』~、わざわざ【新能力】まで特別に授けてあげたわよ~?つまりー!」


キスされていまだに顔が真っ赤な俺(魂状態なのにー!?)が動揺する間もなしに、俺を突き放したフェロチン様はすぐに襲い掛かるようにして拳で叩きつけてきそうな動作に入ると―


「~!!?せィーッ!」

バコ――――――!


考える暇もなく、反応で【身体】が勝手に動いたー!


ドードドドー!ター!

「いたたた~。確かに仕掛けていったのはあたしちゃんからなんだけれどーもう少し反応神経に制限をかけて女性への手加減ってうんうんはどうなのよ~~?キスもしたばかりの仲なのに!ぶぶ~!暴力反対~~!しくしく......」


って、あんたが先に仕掛けてきたじゃないかー!まったく!


なんでか脳内でそう突っ込んだ俺を念話で反応しなかった女神様。

都合のいい時だけ念話で返事してきたのかい!


理不尽に思う俺のをよそに、なんか両手で顔の上半分を覆い隠しながらも笑みを浮かべたまま不満な言葉を漏らしてるのを見ればさほど悲しんだり怒ったりしないようにも見えちゃうんだがーって、この力は―!?


バサバサ―!


さっき俺の身体から放った予想もしなかった『光の柱』で突き飛ばされた女神様もさほどダメージが入っておらず、乱れたドレスから埃を叩き落して立ち上がったようだが、


「そうよー♪ にしし...『白刃(はくじん)の民』でもないきみだけれど、これで南方大陸の『黒虎(こっこ)の民』の一員であるきみでも、【光力魔法】が使えるようにしてあげたわよ~!ふふん~すごいでしょう、あたしちゃんは!だからもっと褒めて~!もっと慕ってー!この可愛黒い虎ちゃんの少年カイル~~♫」


したり顔で背を逸らして銀髪ショートのドリルを揺らしながら、誇らしげに言い放ってきた小悪魔的な顔してるフェロチン様なのだった!


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