夢日記1002 淀川をトンネルで潜り抜ける

チャリで河内から摂津まで駆け抜ける。

なんやかんやで淀川にかかる橋さえ抜ければ、あとは家まですぐなのだから、くらいの気持ちでチャリを飛ばす。


しかし、あったはずの橋がない。

マップで調べてもない。

今まであった橋を通らずに淀川を渡るには、ものすごく迂回しないといけない。


しかし、ここであることに気づく。

橋が、トンネルに変わっていたのだ。


青函トンネルみたいなことだ。

淀川をトンネルで潜り抜ける。

まさかの発想。


しかし、どうもチャリでは渡れない。

車だけってのが相場のようだ。

しかししかし、トンネルをみると歩いて中に入っていく人の姿が。


俺はチャリを捨てて、トンネルへと潜り込んだ。

トンネルは、薄暗かった。

ライトと呼べるような光も少ない。


途中、そのトンネルは二叉路になっていた。

遠くに光が見える方が出口のようだ。


と、前を歩いていた女の人が、何ものかに引っ張られていった。

その人を引っ張ろうとした女の人もまた、暗闇に消えていった。


そして、それを追うようにして、怪しげな男の人が、女の人とともに闇の中に消えていった。

男は舌舐めずりをし、目が血走り、よだれを垂らしていた。

それは暗闇でもはっきりとわかった。


追おうとするも、暗闇で見えない。

と、後ろから何者かに強く押された。

前へ行け、とのことらしい。

すぐに出口へとたどり着いた。


出口の先は、緑地だった。

舗装された道はそこにはなかった。

緑地の真ん中に丸太小屋がぽつりとある。

俺の後ろからは、誰も追って出てこなかった。


丸太小屋の先に目をやる。

そこには洞穴が見えた。

中から何人かの女の人が出てくる。

そのうちの1人は、見覚えがあった。


「ごめんなさい。助けてあげられなくて」


気がつくと俺は女の人に駆け寄って、己の無力さを詫びた。

そう。さっき何者かに攫われた女の人だったのだ。暗がりだったが、なぜかはっきりとわかった。

顔は後藤真希に似ていた。


俺が声をかけると、彼女は顔をくしゃっとして、思いっきり抱きついてきた。全体重が預けられているのを感じる。

それは俺にとって初めての体験とも思えるほどの、熱い抱擁だった。


「いいえ、ありがとうございます」


耳元で、ゴマキはそう囁いた。

吐息が生ぬるく。変に心地よかった。


「少し、休みましょうか」


だから俺も耳元で囁き返した。

ゴマキがコクリと頷く。

俺たちは丸太小屋の中に入っていった。


丸太小屋の中は、俺が幼少期に住んでいたマンションのリビングだった。

胸ポケットに入れていたスマホを手に取ると、そこにはガラケーが入っていた。

ガラケーは充電が2%しかなかった。


「このままだと電池が切れてしまう」


俺がそう言うと、ゴマキはニコッと微笑んだ。


「お父さんの分があるじゃないですか」


そこには固定電話とコンセントがあった。これも、前の家の間取りとそっくりだった。

コンセントにはガラケー用の充電器が刺さっており、俺の電話にすっぽり刺さった。


と、丸太小屋のドアが勢いよく開けられる。

俺の父さんがスーツ姿で帰ってきた。


「ただいまぁ。おー、帰ってきてたのか」

「おかえりなさい」


俺の挨拶が「今の」部屋の中にこだまする。

朝の第一声を、居てもない人のお迎えで使ってしまった。

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