🔮パープル式部一代記・第七十五話
あの日、あの
そして当日は道長の顔色をうかがって、あるいは興味本位で出した公卿や貴族からの祝詞を携えた使者が次々に到着し、祖父の
儀式は母屋で粛々と行われ、廂には祝いとして贈られてきた数々の品が並んでいた。(もちろん
祝詞を述べに参上した使者には「鬼の代筆屋」の腕を活かして、「道長の筆の跡」を偽造した紫式部が書いた、ひと言メッセージと共に、「
やがてメロス・
メロスは男性であるので女房が代わりをつとめ、彼は、裳を腰にあてる役をしていた。
幾重にも秋の色目が織り施された、装束は
さすが、平安一の売れっ子大作家である。
そんなこんなで、まあとにかく無事に儀式は終わったのであった。
「
「おめでとう
「ありがとうございます!」
超特別なときにだけ繰り出される、「
「ゆかりのヤツ、俺の名前を勝手に……」
「殿……?」
「なんでもない……今日も一段と月も
「まっ! 殿ったら!」
真夜中に道長は、ひとりでボンヤリ考えごとをしてからニヤリと笑っていた。
そう、彼は気づいたのだ。ゆかりが道長の名を使うことで、自分に愛娘の人生を、自分の人生のすべての行く末という名のチップを、オールインしたことを……。
「ますます負けられんな……俺がてっぺんとらなきゃ、健気な
月明かりが道長の獰猛な笑みを、闇に浮かび上がらせていた。
***
〈 紫式部がボーナスゲットした
「こうだったかしら?」
「もう少し傾ける角度を控えめに……」
すぐに自分の
「なに、変な顔をしているの?」
「う、うるさいわねっ! なんで、ここにいるのよっ!? ここは、
「なんでって……実の娘が、
「紫式部さまに母親役を頼んでるからいい! さっさと帰って!」
険悪な雰囲気を興味津々で見ている紫式部に
「……あなたは、あの母のどこがいい訳? いつ、どこに行っちゃうか分かんない女よ?」
「大丈夫。これからは、俺がしっかり見守っているから。まあ、地方にいるから、たまにしか会えないとは思うけれどね?」
「……捨てられなきゃいいわね」
それから和泉式部と
「話がおもしろすぎて、続きが気になってしまい……すみません。お邪魔しました……また、明日にします……」
深夜にまで突撃取材を受けた
『カンッ!』
紫式部は
彼女は、以前よりも腕を上げていたのである。
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