🔮パープル式部一代記・第七十二話
そして、なにも知らない紫式部は帰ってきたはいいものの、今度は入れ替わりで
「そんなことが……この豪華な鏡は、なにごとかと思えば……」
***
〈 紫式部のちっちゃな家 〉
「このたびはこのような粗末な家で、もてなしもできぬままに母が大層お世話になり……無事に母が
紫式部の家で、なぜか付き添っていた和泉式部と
「いいからいいから寝ていなさい。ちゃんと休まないといけないわ!」
「本当に紫式部の娘なのか……?」
「伝説の男、
「…………」
『天性の人たらし、逆行に強く、世渡り上手で、いつでもモテ期の盛り上げ上手!』
そんな
***
「まだ熱があるのに……いや、あの、熱っぽい顔すらなにか使命感すら覚えさせる保護欲をかきたてられちゃう……って、なにあの寝間着は!?」
「え……?(あ、しまった! 紫式部がお揃いとか言ってた!)」
イワシ柄の寝間着を借りている部屋に置きっぱなしだった
「あ、えっと……た、たまたま!
「娘には……バカにされたんだけど?」
「~~~~」
その日の夜、同じ部屋で久しぶりに仲良くすごす……はずだったのに、すっかり気分を害した和泉式部は、「凄いお宝見つけちゃったから相手しているひまないわ~」なんて言って、いまは亡き
後日、紫式部のイワシ柄の寝間着は、和泉式部の色違いのイワシ柄の寝間着と交換された。
「
「これ、娘と一緒に着ようと思って仕立てたんだけど……娘は着ないっていうから
和泉式部が、もう一枚、小さい方の色違いを渡そうとしていると、紫式部の横に控えていた
「
「紫式部さまとお揃いなら、喜んで着ま――す!」
そう言って彼女は寝間着を持って、自分のちっちゃな
「反抗期ってやつかしら?」
「そうかな? 母のご行状のせいじゃない? せめて父親が誰かくらいなんとか思い出してやれよ……」
「そんな昔の話なんて覚えている方が珍しいわよ!」
ぷりぷりしながら消えた和泉式部の後姿を見ながら、紫式部は
「モテすぎるっていうのも難しいんだな……あちらが立てば、こちらが立たずってやつか……」
「…………」
あれだけの物語を書いているのに人の気持ちがくみ取れないって、ある意味すごいなと思いながら
新婚なのである。
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