🔮パープル式部一代記・第六十五話
紫式部ことゆかりは、もうなん年前に帰ったのかも忘れるくらい、久々に実家……といっても誰も住んでいない空き家へ牛車に乗せられ帰る。
「こんなヤツなんて戸板で十分なのにな!」
そんなことを言っている和泉式部の夫の
ゆかりが実家で静養すると聞いた道長が、
『……この柄はどこかで見たような? はて?』
「あんなだから、お前にそそのかされて紫宸殿の梅の枝を折っちゃうんだよ……」
「なにか言った?
その会話は、和泉式部の特別講座を和泉式部のうしろ、屏風の裏で中宮・
「あら、
「別に……呆れてるだけ……うちの母ときたらってね。わたしも
「あ、そっか、あなたは紫式部のお付きだっけ?」
「そうよ! 変な人でも
こちらの母と娘には季節同様に寒風が吹き荒れていた。
そして女車と呼ばれる牛車に揺られていた紫式部は、その日は体調がよくもなく悪くもなくで、「あれ?
なんて、本当は盗賊退治なのだけれど中途半端に思い出し、あまりネタには関係なさそうだけど一応聞いてみようと思ったが、ちょうど、ちっちゃな自分の空き家についていた。
「やれやれどんなに荒れ果てているかと思っていたら……意外にも大丈夫だった……」
「お前が帰るってなってから道長さまに頼まれて、業者に手入れさせたんだよ……お前の父親、
「たぶん稼ぎは全額学術関係に投げ入れてる……学者バカだから……ちょっと変わり者でさ。まあ、いい人間なんだけどね……」
そう言って、いつもジメジメした女ではあるが体調の不安定さで、更に陰鬱な雰囲気を漂わせている紫式部は、ちっちゃい家にある御簾の中へ
「基本、好きにさせておけ。青菜はたっぷりやれ。出歩き癖に要注意……とは書いてあるが出歩く元気もなさそうな……まあアイツ(紫式部)はどうでもいいケド、けなげな娘の
そして、自宅に帰ってはや年末も押し迫る頃であった。夜の暗がりからぼんやりと男のものらしき怪しげな人影が、ちっちゃな家に近づいてきたのは……。
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