🔮パープル式部一代記・第六十二話
さて、遅まきではあるが、「灰」になっていた「帝」の話である。
彼は、「なにがなんだか分からない……朕の蔵書が……大切な笛はどうなったのか……」などと、
もともと、割合に病弱な上に最愛の
「もう、出家しちゃおうかな……疲れた……」
そんな彼の側に濳んでいた黒い影が口を開く。
「却下たてまつります……」
「うわっ、びっくりした! 道長がなぜここに!?」
「わたしの家ですが?(家主は妻の
「あぁそっか……でもさ、花山院にくらべたら朕はかなり長く頑張ったし……」
「まだ! まだ頑張らねば! ここが踏ん張りどころですっ!」
「え? なんで?
道長は、『
「あ……いたね。あの乱暴者……一体どうしてあんな乱暴者が産まれたのか……」
「天下国家のためにアレを即位させる訳には参りません。うちのラフレシア・
「そっか、それはそうだね……幼い
東宮の第一皇子の
その上、母の身分的にも先の疫病騒動でかなり格落ちしてしまい、道長のように内裏を仕切れる後見もいないのも大問題であった。
内裏を覆う黒い太陽なんてとんでもない字名をつけられて、各方面から嫌われ疎まれている道長ではあるが、そこは摂関家の男。彼は、多少の? 私情は挟みつつも国家の実務的な切り回しや取り仕切りを見事に清濁併せ飲み、帝に代わって振り回しているのだ。
この摂関家の血筋に伝わる政治的能力あってこそ、その上で、帝は簡単な決裁を下してあとは、「尊き神事」に集中できるのである。
これが、後見が摂関家でもないあの親王が帝についてしまったら、国体はどうなることやらと帝は深くため息をついていた。
なお、義母にあたる同い年のラフレシア・
烏帽子を人前で脱ぐなど、「あの人、パンツも履かずに、外に出ている!」そう、絶叫されるような大恥をかかされていたが、
「あ!? なに? さっき、なんて言った!? もう一回、わたしの目を見て、ビシッと言ってみな! その目をくり抜いた方がいいかもね! 取りあえず父君に報告するからね!」
姉とは違い、産まれながらにギラッギラのラフレシア・
これはマズいと
「この無印の第一皇子風情がっ! 母親の教育が悪いのねっ!」
そんな風に、普通の姫君ならば恐れおののく
そんな
それを思い出した帝は、「……まだまだがんばろう」力なくそう言って大きくため息をついていた。「よかったら
帝は、道長の姿が消えてからしばらくゴロゴロしつつ本が届くのを待っていたが、そのあたりに置いてあった宗の本を見つけて読んでいると、ふと挟まった「
「なになに、あ、この筆の跡は母のものだ……ここは母がいた部屋か……なになに?
帝は気力がふつふつと戻るのを感じていた。
そして、翌朝からは、さかさものがたりってなんだろう? 内裏では聞いたこともない……どこか秘密の匂い……道長に聞いたものか? 知らぬ可能性も……? う――む。
なんて、用意された
「いつもこんなことしてる訳?」
「まあね……凄い作家魂だろ? 尊敬しちゃった? その気持ち分かるよ……」
「呆れてるだけだから……」
例のふたり組であった。
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