🔮パープル式部一代記・第六十一話
道長に
「え? 子どもが産まれる方法? そんなの当然知っているわよ。出雲大社にお願いするでしょ? で、夢に大神様が出てきてお告げがあるのよ。それで、懐妊してから産まれるの! でも、わたくしにはまだお告げはないから子どもいないのよね……ほんと神頼みってこれよね。授かり物だし順番待ちなのかしらね?」
「え……は……」
藤壺からついてきていた女房たちも中宮・
驚愕のあまり息が止まっていた和泉式部は、めんどくさそうな顔の
「あの、その、その話は一体どこから……?」
「もちろん入内前に心得として母君に聞いたわ。まあ、そのあとなにか変な顔で、あとは帝にとかなんとか言ってたけれど、ひょっとしたら帝は、わたくしとの子は出雲大社にお願いしていらっしゃらないのかもしれないわね。あ、わたくしは一応お願いはしているのよ? でも、もう、
「え、そ、そうにごじゃりますか……」
中宮・
いや、そもそも和泉式部の歌に限らず、送り送られる『恋文』の内容に、『お察し能力』を発揮してどうくみ取って解釈するか!? それからどうやって研ぎ澄まされた『第六感・Sixth sense』で相手を虜にするか? なかったことにしてしまうか? いや、思ってもいなかったことを、それとながら自分の歌で大逆転に持ってゆくか!? それが腕の見せどころ平安貴族の貴族たる心構え! そんな冴えわたる匠の技ともいえる『第六感・Sixth sense』がなければ、この時代ではそもそも恋愛弱者として消え失せるだけなのだが、道長の摂関家パワーで入内した「根暗の
当然ながら、和泉式部はすぐ近くにある
「藤! じゃない!
「え……わたし執筆中……」
「関係あるか――! あんた中宮さまの家庭教師よね!? なんで一番大切な話を教えていない訳!?」
「え……?」
うしろから大慌てで
「え? 物語で教育……?」
「そうそう……ほらこれ……」
和泉式部は手渡された『R指定の“漢文バージョン”物語』に素早く目を通してから絶望の色を瞳に浮かべていた。
「どうかした……?」
「どうしたもこうしたも……はなからこんな高難度の物語を渡すから、中宮さま物語の本質を少しも分かっちゃいないよ……」
「え……?」
そうこの『R指定の“漢文バージョン”物語』は、かなり前出の話ではあるが恋の軽業師
つまるところ、このもとの『R指定物語』は漢籍を深く学び、その上で研鑽を積んだ『
つまるところ、「
「出雲大社……その発想はなかった……」
「……教える順番を飛び越えすぎ」
「特別講師に任せるよ。わたしは執筆に忙しいからさ……」
「もう、わたしが帝を押し倒して今晩にでも実地で……むぐっ……」
「しっ、このバカ!」
目を血走らせた和泉式部の口を
「そう! そうなのよね――! 出雲大社! 帝が出雲大社にお願いしてくれないから、いくら中宮さまがお願いしてもそれは無理筋なのよね――!」
「なに言ってんだ、お前がバカ……あ、そうそう! 出雲大社ね! 出雲大社! 先に帝にもお願いしなきゃ! 中宮さまは内親王が欲しいって常々――!」
そんな訳で特別講師はまさかの苦悩を抱えていた。
***
「まあ、
「えっ、えっとその……ちょっと ようじを おもいだしたので、じぶんのへやにかえります」
「まあ、おいしい菓子もございますのよ?」
「え? いえ、すこし いそぎますので……」
実母と慕う中宮・
「この子を頼む。多分俺の子どもなんだ。よろしく」
その昔、
***
もちろん、
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