🔮パープル式部一代記・第四十九話
ようやく目が覚めた
『ほう……あれがいがぐりか……顔は初めて見たがなるほど皇后・定子さまに瓜ふたつ……』
そう、いがぐりが藤壺へくる数日前、
「道長のヤツ、なにか企んでいるみたいだから、アイツの情報だけでは精度の信用性に欠ける……さてさてどんな……!」
床下から、「内親王御在所」の母屋に耳をつけようとすると、いきなり大きななにかが転がる音がする。どうやら幼い内親王がなにやらわめきながら、ドタバタ・ゴロゴロと床を転がっているようだった。
「おどろいた……耳が取れるかと思った……」
耳を直接、床につけるのは止めにして、しばらく板の上の様子をうかがっていると、どうも夕食が気に入らずに、外へ膳ごと放り投げたはよいが、今度は寝る時刻になって腹を空かせて
「
「い――ま、いますぐ たべたいの! ながこのいうことが きけないってわけ!? おかみに いいつけてやるんだから!」
「そうは、おっしゃいましても、もう遅い時間ゆえに……きゃあ!」
なにか、また、「どしん」と音がした。几帳か厨子でも引き倒したのかもしれない……。とんでもないガキだこれは……そう思いながら
そして、いまにいたる……。
『最強の手札を持ったまま』
「ながこにございま――す! きゃははっ!」
そんなことを言いながら内親王が転げ回っている
道長は、にたりと笑って、また、そそくさと姿を消した
『これ、ひっくりかえしたら、ぜったいに おもしろい!』
そんなことを思いついたいがぐりは、素早く用意された州浜に近づいたが、次の瞬間には、ぱっと飛び下がっていた。
なにせ、州浜を持ってきた陰気な顔の女房は、闇に引きずり込まれるような、陰湿な輝きを瞳に浮かべ、胸元から取り出したなにやら大切そうな紙には、よく知った筆の跡……
「げっ……そのもじは……」
「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません……お初におめもじいたします……本日、藤壺での内親王さまのご養育係を“
『やっぱり!』
暗黒女房をいがぐりはキッとにらんでみたがやはり効き目はなく、父である帝を振り返ってみたが、この世界の最高位である父は、自分とは目をあわすことを避けるように中宮がなにやら「海賊版がどうのこうの……」そんなことを言うのに、懸命になにか言い返しながら中宮が手にしている紙の束を必死に手に入れようとしていた。
「やっぱり、ながこなんて、どうでもいいんだ!」
そんな娘の声に帝から返事はなかった。
「だから、その、
「…………」
活字中毒系男子は、「黒塗りされた例のアレが!」そんなこんなで頭が一杯になっていて、問題児の娘どころか、もう、周りが見えていなかったのである。
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