🔮パープル式部一代記・第四十七話
「ひょっとしてどこからか見つけてきた海賊版かしら……そんなの許せないわ……」
なぜ、こんなことになっているのか、
「さて、今日は、どうしましょうかね?」
「う――ん、いくらなんでも本当の本当に大事な議決は、左大臣抜きではできないし……」
「あとで、なにされるか分かったもんじゃない!」
「大事に見えて、まあそうあたりさわりのない話はない訳?」
そんな風になんだかんだと議題を検討した結果、
「え!? あれ、漢文バージョンまであったのか!?」
そう口走ったのは、この「
「え? 知らないんですか――あれね、元は、漢文だったんですよ……それも仮名バージョンよりも……くくっ!」
「おいおい、そこまでにしておけよ……漢籍の勉強しておいて本当によかったよな!」
「学問ってのは大切なんだよ……仮名より小回りきいてない分、より想像力がかき立てられるよな!」
そんな会話をしていたのは、
まあ、兄といっても
そしてその関係で、
「いやいやまずいだろ、これが教材は!」
「でも、あんまり真面目真面目では、講義の食いつきが悪いらしくって……」
「飴と鞭、緩急と清濁併せ吞んでこそ、高級官僚……」
「うむむむむ――」
そうして、意味もなく長引いた話がまとまった結果、「源氏物語・漢文バージョン」は、「全学生に配る訳にもゆかん。予算もあるし、あれはあくまでも正規の教養を身に着けるためのニンジン! 選ばれし者の息抜きである! 読めるのは成績優秀者のみ!」……そんな訳で普通は火事対策として、「牛の移動図書館っぽい物」つまり火事が起きてもすぐに牛へ繋いで持ち出せるようになっていた、当時の本や巻物の保管方法のひとつ、可動式の本棚の「
「ほらこれ現物!」
「なになに持ち歩いてる訳!?」
「だって、もう続きは仮名しかないからさ――これ読んで妄想している訳よ! 大事だし! 左大臣以外でこれ持っているのは俺と、お前と……メロス・
「なんでメロス持ってんだよ!?」
「メロスは道長と仲いいからね」
公卿たちが、「漢文バージョン」を囲んで騒ぐ中、
「けしからん! まことにけしからんが……清濁併せ吞んでこそ……そこは正しい意見である……」
「よっしゃ!
「では……決まりということで! 本日は解散!」
まあ、そんなこんなで結局は決裁が下され、当時、道長とのやり取りでそれどころじゃなかったはずの帝も、「え!? 未来を担う官僚候補のために物語の漢文バージョン復活!? 許可した! 朕にも持ってくるように!」
道長とのやり取りの間に、素早く裁可を下していた。
結果、
「あの、うちの夫(メロス)がなるべく定期的に続きをと……写本の都合かなにかで……」
「う……うん……赤いのには借りがあるからな……明日の朝には必ず揃えておく……」
「あの、わたくしが口述筆記いたしましょうか?」
「いやいや、そこは書きながらのインスピレーションなので……」
そんなこんなで、「親子で読める源氏物語」の歎願は山積みであったが、先に急遽、「Rマシマシ・漢文バージョン」は、ついに満を持しての復活ののろしを上げていた。
「紙代もバカにならんからな……話を続けるためには売り上げがいる……いまで売り上げと材料費……カツカツだしな……」
***
〈 大学寮 〉
「牛の図書館まだこないね……」
「今日は続編が十冊あるってさ! 待ちきれないねぇ……成績は譲位トップ3には入ったから、なんとか借りれるはず……あ、きたきた!」
ときおり
そして、うれしいことにその余波? というかせっかくだからと、「牛の図書館」からついでに借りてゆかれた
なお、
付け加えると、困難な道長との取引に疲れながらも心待ちにしていた帝が手にした「漢文バージョン」は案の定というか、すべて、
「やはり朕は
一方の道長は、がっぽりと朝廷から印税を取り、作者の
以前、道長にもらった「墨の豪華セット」に喜んでいた彼女であったが、本当はそれくらい自分で買えたはずであった。
が、貧しい幼少期の体験から、「そうか……紙は高いしな、購買層を増やすやめにはやむを得ん……売れるためならば、漢文のみエロを増やすのもいたしかたなし……う――ん、この物語はわたしの生命だから……まあ、新鮮な青菜はおいしいし……」などと、必死にかんばっていたのである。
***
〈
「かわいいヤツ……」
「殿……どちらの“おなご”のことで?」
「え? いや、
「まっ! 殿ったら!」
そんなやり取りのあと、深夜、道長は次の
「かわいいヤツというか……バカ? 本当のバカさまは、お前だよ、ゆかり……もうひとりでも、お前ならやってゆけるのにな……ははっ!」
閑話休題
***
そして話は『おいでませ』へと戻る……。
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