🔮パープル式部一代記・第三十八話
「今度さ、
「はて……?」
それというのも道長が、他の女房が出払っている朝っぱら、
「う――む、うちの
「バカさま、いま、わたしは寝ている時間だ……どこぞへと行け……」
「うるさいな真剣に悩んでいるんだ……勝手にやってるから気にするな……あの三人女御は、まあ大丈夫だとは思うけど、う――む……」
なんて、
そんな、ほぼ無意識なやり取りとひとりごとが、うるさかったからである。
どうも道長は、あたり一帯を震撼させるような黒光りする
地獄に仏ならぬ地獄の仏を、彼女のうしろに見いだして、拝んでいるのかもしれない。
「わたしの青菜がなくなっている……やはりあれは夢ではなかった……」
「なんの話?」
「いや別に……」
いつ起きるか、いつ寝ているのか、そんな
そして、『夢だったかな?』そんなぼやけた記憶でしかなかった道長は、放置されて少し
文机の上にはやはり見覚えのある文字と変な落書き……
「あいつまた黒い戦いを仕掛けるつもりだな……」
「なに?」
聞き損ねた
「あと、そのさ、びっくり仰天ニュースのお陰で、明日はアレがくるよアレが! ほら! あの面倒なのが!」
「え? だれ? あ、あの親父、あいつか……なんで……?」
「うち(藤壺)の女房たちは風紀の乱れ(服装)がひどすぎるって……
「あ、あかいのがいるもんな……」
藤壺の「追い剥ぎ」こと
しかしながらそこは絶対権力者、「道長の娘にして、中宮・
「若い頃ってさ、いつも言われてたじゃん……いまどきの若者は……なんてね? 帝や中宮さまがお咎めにならぬのなら、それが
「はあ……」
「ほら、それより宴の準備、次の宴の準備! だれか行程表持ってきて!」
そんな状態であったので、女房たちはいろいろと確執はあったが、わりあいに服装に関しては自由気ままにふるまっていた。
が、そこが、内裏一番のうるさ方にして、名門、ど金持ちなので内裏の権力を鷲掴み黒い太陽・左大臣道長にも気を遣わない、そんなただ一人の男『あの親父』こと『
***
〈 藤壺の母屋 〉
「え……
「中宮さま……大丈夫ですか……?」
「え? なにが?」
そう、根暗は、ほぼ脱却しつつあるけれど、中宮・
彼女がいつも美しく身だしなみを整えられていたのは、いま思わず「大丈夫ですか……?」なんて口を滑らせた、例の「大納言・ドゥ・ポンパドゥール」こと、大納言の君(叔母、
落ちぶれ姫君とはいえ、このふたりの卓越したセンスのよさは
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