🔮パープル式部一代記・第三十六話
「ほうほう……それはそれは、大変なことで……」
「そうよっ! だから、もう、こんなところにはいたくないし、清少納言とふたりでどこか遠くでのんびり暮らしたい訳!」
そう言い切って肩で息をしている
「本当に、本当にそうしたかったら……できなくもないですよ……」
「え……?」
「いますぐ決めてもらえればね……」
「……こ、子どもたちは?」
「親はなくとも子は育つ……帝の子が露頭に迷う訳……ないですよね?」
「あ、ま、まあ……」
「それに、うちの子も親は、全く側にいなかったですが、もう、とんでもなく素晴らしい評判の子に……」
「あ、
それから床の穴をしばらく見つめていた
「わたくし、あなたに賭けてみる!」
生まれながらに、ずっと巨大なカゴに閉じ込められたことも知らなかった、世にも貴重な小鳥であった
「これ持っていてもらえます?」
「よくてよ!」
彼女が顔を出したそこは、
「
「しっ! 静かに!
「寝ておりますわ……」
出迎えた
それから少しの間、なにかゴソゴソしていた
「よっこいしょ……これでよし……」
***
〈 翌朝の藤壺 〉
「これで全部ですね?」
「そうそう……じゃ、少しばかり行って参ります……」
「旅日記、楽しみに待っているわ――」
「
「はい! お便り楽しみに待っております!」
そう、
「もう出てきてもいいですよ」
「ようやく太陽が見られるのね……」
「大変な目にあった……」
ようやく越後にある小さくて綺麗な家の中で、そんな会話をしていたのは、深夜だけ例の
「さむっ!」
清少納言は、いきなりそんなことを言っていたが、
「一応、書類上は父の近い親戚になっております……」そう言って、「鬼の代筆屋」の腕を活かして用意した、どこから見ても正式な書類を定子さまに渡すと、「父に会ってから、わたしは帰りますので……」そう言い、「いろいろな取次はこれからはお前が、ひとりで頑張れよ……これ、不用心だから餞別に……」彼女は、清少納言にはそう言うと
「よいところでございますね……」
「ほんとうに……ひなびたところだけれど、よいところだわ……」
季節は夏、越後の極寒地獄を、まだふたりは知らず、冬がくるころには、「冬はつとめて、
それは、京の誰に知られることもなく、たまに
その言葉通り、「まさか、娘に友人が! 訳あって京を離れたと……なにかと、わたしが気遣いを!」そう思った
なお、生まれた子は女の子で、自分が内親王であることも知らず、まだそのときは
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