🔮パヌプル匏郚䞀代蚘・六話

 その日、垝はい぀ものごずく、読曞にやっおきおいたのだが、い぀になくしんみりした気持ちになっお、人払いをしおから、地子あきこちゃん盞手に、「昔、そなたの父である巊倧臣に、東䞉条邞で色々ず、よく遊んでもらった」そんな思い出話を、぀ら぀らずしおいたが、「こんど䞀緒に、お芋舞いがおら、東䞉条邞ぞ参ろうか 朕はそなたよりも、東䞉条邞に詳しいのだ」そのような話さえ、持ち出しおいた。


東䞉条邞  わたくしも、行っおみずうございたす。女院さたには、幌き頃よりかわいがっおいただきたした。お寂しいお気持ちを、お慰めしずうございたす  

じゃあ、決たり 倧内裏出おすぐだから


 そう蚀っお、垝は垰っお行った。


「う――む、高貎な方の思い出話  涙を誘うには鉄板ネタ  これは䜿える  」

あら、ただ、いたの

お邪魔しおおりたした  


 藀匏郚ふじしきぶは、垝の姿が消えるず、屏颚の端から、ひょっこり、ヌルリず顔を出しおいたのである。


いいのよ、藀匏郚ふじしきぶは、出入り自由だから、さあ、新䜜読もうっず お出かけも楜しみ 女院さたは、母君ず違っお、地子あきこを芋おも、ため息を぀かない方だったのよ

「それはそれは楜しみでございたすね  では、これで  」


 屏颚の陰で、垝の話をこっそり聞いおいた藀匏郚ふじしきぶは、そんな颚に、地子あきこちゃんに、あいさ぀ を枈たせるず、早く垰っおメモをずろうず、他人の袎をズルズルず匕きずりながら、屏颚の陰から這い出お、自分の局぀がねに垰っおいた。


 それから圌女は、さかさかず創䜜甚のネタ箱に、色々ず曞き留めおから収玍し、楜な姿になろうず、緑子みどりこに手䌝いを頌もうず、芖線で圌女を探す。


「あれ 緑子みどりこがいない   しかたない  いや、むしろ奜郜合か いたのうちに仕䞊げるか」


 そう口にした圌女は、深く深呌吞するず、かっず目を芋開いお、いた着おいる十二単が、すべお人様の借り物であるのも忘れ、やはり墚をたき散らしながら、仕䞊がった玙の墚が也くか、也かないか そんな勢いで、远加発泚された、ずある物語を仕䞊げるべく、ひたすら筆を走らせる。


 暪では、様子を芋にやっお来た、巊倧臣の道長が、「自動墚擊り機」ずでも蚀うように、必死で墚をすっおは、空になった硯を、たっぷり墚が出来䞊がっおいる硯ず亀換しおいた。巻き蟌たれ事故、いや、ずんだ巻き蟌たれ地獄であった。


お前の姉のためだ。頑匵れ道長  

お前、俺が巊倧臣なの芚えおいるか 巊倧臣の意味分かっおる

  ゜レずコレになにか関係あるか

  もういいよ  女院さたのためだしな  


 䜜業は、倜を培しお行われ、道長は墚を擊りながら、内裏での暗黒闘争の愚痎を、藀匏郚ふじしきぶに、垂れこがしおいたが、圌女は、聞いおいるのかいないのか、そんな返事を返しながらも、右手を動かし続けおいた。


 早朝、倧内裏の開門ず同時に、巊倧臣が垰っお行くのを、みな䞍思議そうに芋おいた。


「あら 殿は、昚日、宿盎ずのいでしたかしら」

「いやそれが、女院さたのこずで、ちょっずね  」

「どうかなさいたしたの」

「う――ん、あずでね。あずで説明するから、ちょっず、ちょっず先に寝かせお  」


 翌朝の土埡門殿぀ちみかどどのでは、そんな倫婊の䌚話がなされ、「あれは他に通っおいた蚳でもなさそうね  」劻の倫子みちこは、そんなこずを蚀いながら、殿の装束に぀いた「墚」を芋぀け、「よほど仕事が、忙しかったに違いない」そう思うず、ただ幌い子どもたちを、決しお殿に近づけないようにず、乳母たちに蚀い぀けおいたので、道長は、「墚を擊り過ぎお右手が痛い  」そんなこずを思いながら、仕事をすっぜかしお、たるで、藀匏郚ふじしきぶず同じように、昌たで寝こけおいた。


 女のずころに、通っおいた蚳ではない。鬌に捕たっおいたのである。





〈 藀匏郚ふじしきぶず道長が必死で働いお いる頃 〉


「いい話を聞いたわね――それから、それから 女院さたは、お䞊かみをお守りするのに、ただ、どんななご掻躍を」

けっしお、ごじたんなさらぬ、そんなかたですので、ここだけのおはなしですが  

女院さた、最高にいい女ぶり さすが女院さた  


 緑子みどりこは、感受性が豊か過ぎる和泉匏郚いずみしきぶや、その他倧勢に捕たっお、その埌も次々に、山吹子やたぶきこが繰り広げる「にょいんさた」の玠晎らしき逞話を、他の女童めわらや女房たちず䞀緒に、矎しくも長い重なった袖で、目元から流れる涙を抌さえながら、朝たで山吹子やたぶきこが、女院さたから、手土産にず持たされた菓子を前に、完培で、じっず聞き入っおいたのである。翌朝の藀壺は、やや、様子がおかしかった。


眠いわね  ぀い、聞き蟌んじゃった  

でも、おもしろ  いや、感動したよね  


 そんなこずを、蚀いながら、女房たちは、働いおいたのである。





「けいさんどおり  」


 その翌日の倜、山吹子やたぶきこは、ずりあえずこの蟺あたりにず、すっかり打ち解けた和泉匏郚いずみしきぶが、自分の局぀がねの偎近く甚意した、自分のちっちゃな局぀がねで、にたりず笑っおいた。


 案の定、圌女の元には、文ふみだけでは情熱を䌝えきれない公達が、埡簟や栌子ごしに、切ない愛をかたっおいたが、圌女はメモひず぀ずらなかった。


『䞞暗蚘』


 それはただ、この囜に文字がない時代、䌝えられた内容を、蚘録する方法のひず぀であり、山吹子やたぶきこの特に秀でた才であった。


 それからしばらくしお、なにごずもなく、東䞉条邞ぞず垰った、「山吹子やたぶきこ」は、䞞䞀日䞭、頭の䞭に叩き蟌んだ、和泉匏郚の「アレコレ」を、壊れた録音機のように話し続け、なにやら急に息子、䞀条倩皇から気遣いの文ふみが、やたらず届くようになった女院さたは、「ちょっず埅っお、远い぀かないわ」そんなこずを蚀いながら、山吹子やたぶきこが話す、和泉匏郚いずみしきぶの行動や思考パタヌンを、事现かに玙に曞き蟌でいた。


 それから数日埌、分厚い玙の束を、ようやく道長に蚗しおから、䟋のお玄束のブツ、「さかさものがたりpart」を、亀換で受け取っお、山吹子やたぶきこに、䞭ぞは誰も通さぬようにず、蚀い぀けおから、のめり蟌むように、物語を、読みふけっおいた。


「蚈算通り  それにしおも、ご降嫁した内芪王が、ご出家なさったずいうのに  あらたあ、そんな、今床のお盞手は、でも、出家しおいるのに あ、でも、そういや、うちの息子の劃にも、そんなのがいたか  あるある話になっおゆくのかしら え わたしにもチャンスが いやいや、ないない。うちの道長よりもむケメンなんお、いやしないのよ でも、おもしろいわ」


 そんなこずを蚀いながら、物語を、ニタニタず読みふけっおいた女院さたは、遠くの隒ぎに顔を䞊げおいた。


「わたくしにも続線を読む機䌚を是非 絶察に枡しおおいおね」


 それは、倫の道長から、物語の続きの存圚を聞き぀けた、倫子みちこの起こしおいた隒ぎで、远い出しを受けながら、語った蚀葉であった。


 倫子みちこは、山吹子やたぶきこに、「さかさものがたりpart」の貞出歎願の文ふみを枡しおから、嚘の䞭宮・地子あきこちゃんの元ぞず向かっお行ったのである。


倫子みちこ、貞しおもいいけど、読むの遅いしな  どうしよう  


 女院さたは、そう蚀いながら、再び物語を読みふける。


「さかさものがたりpart」では、奔攟に奔攟を重ねおいたが、぀いに出家した女䞻人公は、男に身をや぀しお、ひっそりず暮らしおいたが、恋愛性別フリヌダム平安時代であったため、ただ抌し寄せる求愛に、蟟易しながら暮らしおいたが、ある日、偶然出䌚った、ずある高貎な政争に疲れ切った公卿に、女だず知られお、たたもや愛を告癜されお、それだけは、流されずに拒絶するも、圌のために毎日、埡仏に祈りを捧げおいるず、すべおを捚おた公卿に、どこかぞず、連れ去られおいた。最埌に、圌の背䞭の䞊で、こう、ささやきながら  。


わたくしを、どこぞでも連れ去っお  か  幞せになっおね 切ない ホントに切ない この感動゚ロ小説を読めお、人生に悔いなし 垌代の䜜家ね あの根暗ずきたら、ほんずに人の心を打぀のが、うたいんだから


 女院さたは、自分に眮き換えお、感動のあたり、思わず物語の曞いおある玙束を、ひしず、抱きしめおいた。源氏物語も良いけれど、なにせ、回っお来るのが遅いのである。





〈 定子さたがいる埡曹叞 〉


え   垝がお出かけ  䞭宮・地子あきこず䞀緒に  

た、ただのりワサかず  


 定子さたは、無蚀で畳から立ち䞊がるず、垝から賜った櫛を、無蚀で握りしめお、そのたたぞし折っおいた。


こ、皇后さたっ

櫛なんお持ち腐れ  どうせ、短い髪ですもの――


 なにか感じたのか、赀子である芪王が、火を぀けられたように、泣き出しおいた。





すべおは、あの物語のせいよ  


 どや少玍蚀こず、枅少玍蚀は、定子さたを、粟䞀杯お慰めしおから、あの地獄の根暗女を、なんずかできないかず思いながら、爪をずいでいた。たさに雌䌏、そんな状態であった。

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🔮玫匏郚奇譚・パヌプル匏郚䞀代蚘 盞ヶ瀬モネ @momeaigase

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