🔮パープル式部一代記・四話
〈 東三条邸 〉
以前、東三条邸から、偶然タイミングよく、
女御から皇太后、そして史上初の『女院』へ! これぞまさに最高の出世魚! この時代の女が望めうる限りの「最高位」へと、彼女は、まさかまさかの大逆転で、たどり着いたのではあったが、一条天皇が育つにつれ、彼が自我を持ちはじめ、定子さまを寵愛するようになると、次第に疎まれてはいたものの、「そんなのわたしの知ったことではない!」とばかりに、相変わらず勢いよく生きていた。
そして、東三条邸に勤める、彼女のお気に入りの
「
「はい、にょいんさま!」
一条天皇が、「くしゃみ」をしたそうな。
そう伝え聞いた女院さまは、そんなことを言うと、ちょうど
そんな話を数日後に聞いた、こちらも女院さまのお気に入りで、自慢のイケメン弟、左大臣の道長は、東三条邸へゆくと、「姉上、大げさ! 一条天皇は、元気に、我が娘にして、中宮・
「あらそうなの? 慌てちゃったわ!」
女院さまは、そう言って高価な筆を、ポイっと投げる。それを見ていた
「ほう……これはこれは、なかなかに気の利く
「でしょう? この子は、なかなかの
道長は、
「その子、ちょっと借りてもいいですか?」
「え……?」
「いやね、ほら、例の物語の件で、ちょっと困りごとがありまして……」
「何事!? まさか、また、
「いえいえ、そんなことは……実は、かくかくしかじかで……」
道長はそんな風に、女院さまへ、くだんの事件の説明をし、「わたしが言って聞かせよう!」そんなことを、女院さまは言おうかとも思ったが、「そういえば、アレの外伝書いてもらおう……」そう思い直し、頼みごとを聞いてもらう代わりに、
「
「はい、にょいんさま!」
数日後、藤壺では、はにかんだ表情に、緊張を隠しきれぬ仕草で、女院さま直々に選んだ、愛らしい
「まあ、ほんとうに愛らしいこと……さすがは女院さま、お気に入りの
みなは、そんな風に言いながら、ひと目で「
ただひとり、
『あのおなご、なかなかに鋭いので気をつけよ……』
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