第二章
🔮パープル式部一代記・壱話
「最近、帝がいらっしゃらない……」
そう言って、脇息にもたれ、ため息をつくさまも麗しい女がひとりいた。
一条天皇の最愛の妃、中宮、
関係はあるようなないような感じではあるが、一条天皇は、天元参年(980年生まれ)の二十歳であるため、年上女房ならぬ、四歳年上の中宮であった。
「やっぱり、年には勝てないのかしら……それとも親兄弟に駆けられた苦労が顔に……そうかもしれないわ、髪も切っちゃったし……もうすぐ中宮でもなくなるし……皇后か……よけいに年を感じちゃうわね……」
彼女はそんなことを言いながら、女房が差し出した鏡をのぞき込んでいた。
親兄弟の死や不始末で、発作的に思わず髪を切って、出家してしまったものの、帝の寵愛は揺らがず、今現在は、清涼殿からほど遠い、中宮職の御曹司で暮らし、出家はしているが、エア出家とでもいうように、帝の愛のパワーに包まれて、貴族たちからの、そしりもなんのその? 出家後に生まれた内親王に続き、去年ついに、一条天皇の第一皇子、敦康親王を出産していた。
幸と不幸の「スペシャルミルフィーユ@藤原中関白家風味」仕立て……そんな才色兼備な地位も名誉もあったはずなのに、「なぜこうなった?」実家は全焼してしまい、帰ろうにも帰る家すらもない。不幸と不遇に取り囲まれた、帝の寵愛高い
ちなみに、
道長は、「定子じゃま、定子どうする、定子に、帝が首ったけ、一応姪っこ、定子呪詛……」などと、どこかで、なにか検索をかけているが如く、うんうんうるさく唸って、ゆかりの怒りを買ってしまい、「うるさい……執筆の邪魔するなら神罰をくらえ……」なんて、顔に墨が入った
なんて、やり取りの末、翌朝の内裏では、神妙な顔をして、「皇后が行なうべき神事を行なう妃がいないので、うちの
四后並立とは、道長の亡き兄が、娘の定子のランクアップのために、無理を通して、中宮と皇后を分けた制度であったが、これを、今度は、弟の道長が利用しようとしているのだった。
ゆかりも「代筆の鬼」ではあったが、道長のそれは、社会に与える影響が大き過ぎる、いただけないレベルの「鬼の政治屋」、周囲を圧で引きずり回して、恐れられていた、父にも劣らぬ鬼であった。
『世界でひとつだけ。大切なのは自分のたったひとつの命』
ゆかりも幼少期から、貧乏暇なし、まさに命がけの鬼になるような、そんな無意識の根暗人生であったが、道長は、道長で、幼少期から、生き残りのチキンレースの世界に、どっぷり首まで浸かり、なんとかかんとか、つま先立ちではあるが、ありとあらゆる手をつくし、人生を勝ち上がっていたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます