🔮パープル式部一代記・第十一話
〈 数日後 再び藤壺 〉
その日、女御の
地獄の底から現れたように根が暗いにも関わらず周囲を引きずり込むように、堂々と生きている彼女は生まれて以来、「根暗根暗」と言われ続け、兄弟姉妹の中でも「いじられ当番」であった自分の心の支え、もはや彼女にとってゆかりは人生の「師」でもあったのだ。
「え!? 宿下がりをしたい!? だ、だれかにいじめられたのっ!?……ちがう? 百〇八号の……男版の情報を集めに? 物語のネタが切れそう?」
「そうなんですよ……それに、もしなにも手に入らなくても、うちの物置に亡き夫であった
「そんなお宝が……」
十二歳にしてこの有様、
その日の
「申し訳ありませんが、一番上の
「えっ、ひえっ!」
「袴を一枚……その履いているそれでいいです……」
「いっ! そ、それはちょっと! 新しいのがあるので、それで勘弁して!」
「それはご親切に……」
などと、色の
尋常ではない色合いの
「え?
「わたしは良く知らないのだけれど……ウワサによると、うちの父君とその知りあいの公卿たちは百〇八号以上にとんでもないらしいから……きっと、いいネタが……。嫌でも手に入るように、母君に
「はあ……」
あと、
「そなたは定子とは違い普通の姫であるから、漢籍も知らず価値も中身も分からぬであろうが、これは素晴らしき……こほん、まあそんな訳で定子と読むので、すべて朕によこすように。いますぐ女房に持ってこさせよ」
「……父に聞いてからにします」
「…………左大臣はもう内裏から下がっておるので、すぐに藤壺から持ってこさせよ」
「……うちの臣下最高位にして、帝の母(頭が上がらないので会いたくない)でいらっしゃる女院さまが、ことのほか溺愛している弟の左大臣に聞いてからにします」
そんなやり取りの末に、取りあえず父の権力を振りかざして死守していたのである。
しかしながら、くやしいけれど帝の言う通り自由自在に読めるのかと言われれば、いまだ、
「読みたければ藤壺にこい」
そんなことを丁寧に書いて、帝には父の道長が返事を出していたが、取り上げられるのも時間の問題な気もする。先に自分が読みたいのだ。それに自分はまだ十二歳。R18、読んでいることすら秘匿事項である。
「どうかなさいましたか……すぐに戻りますよ?」
「う――ん、でも、
そのときである。女房の中でも、母、
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