🔮パープル式部一代記・第十話
「た、助けて……だ、誰か……誰かある……」
「どうかなさい……」
「誰ぞ、誰ぞ、その紙を見ずに集めて――! きゃ――!」
「見てはいけないと言われると……見ちゃいますよね……あらまあ……」
ゆかりの去ったあとの
「え? 百〇八号が辞めた? なんででしょうね? あと、今回は特急料金を、紙で、もらっていいですか? 使いすぎちゃって……」
「……かまわん。好きなだけ使え」
数日後、自分も、それがもとで、正妻の
そんな、いまのところ、お渡りもお呼びもない、女御の
「えっ、うっそ――! そんなことで、女房と“ ”な関係に!?」
「そうなんですよ。なにせ口が上手くて、見てくれが極限にいい男なもんで……あ、この物語をお見せしているのは内緒ですよ。R18、十八歳以下は読んじゃダメなんですから……他の真面目なのも、ちゃんと勉強してくださいね……」
「
「なによりです……」
ふたりは、似たような、にたりとした笑みを浮かべていた。
***
〈 清涼殿 〉
あ……大切な用事を済ませないと……
道長は、藤壷の帰りに、帝のところによると、なんだかんだと、打ち合わせと言う名の決定事項に、了承を取りつけると、帰って行ったので、一条天皇は、やれやれと、定子のところへ行こうと思ったが、ふと目をやると、先程まで道長のいた場所に、なにかが落ちている。
「届けて参ります」
「いや、少し待て……」
すぐにそれを持って、あとを追いかけようとした蔵人少将を引き留めると、なにやら漢文で書きつけられた「物語」っぽい物を持って来させる。
「お
「……なにこれ、おもしろい! でも、でも、前と後ろがない! これでは、肝心なところが、なんにも分からないではないか!?」
「先程、藤壺女御さまのところで受け取ったのでは……お
「……我慢できない!」
「はい?」
帝は、類い希なる才を持ち、その上、活字中毒系男子でもあったのである。
***
〈 藤壺 〉
「え?
「どうしたのかしら!? ついに姫……いえ、女御さまの時代が!?」
***
「計算通り!」
「殿、いかがなさいました?」
道長は、ゆかりに、今回の続きを二部作らせて、わざと、清涼殿に落としてきたのである。
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