🔮パープル式部一代記・第九話
長保元年(999年)年の初め、裳着を終えると同時に、一条天皇から従三位に叙せられていた
実の母、
「やれやれ……物語に集中したいのに……」
そんな愚痴を、ぼそりとつぶやいた、
なんなら、個室とはいえ基本的に、几帳なんかの移動式の仕切りの大部屋暮らしなので、真夜中、みなが寝静まった頃に、「降りて来た――!!」なんて、叫び声をあげて、煌々と何台もの
「朝餉……」「は、はいっ……」
とうとうそんなある日、
「これみよがしに、漢籍などそらんじるなんて、慎みのないにも程がある。そんな風だから、未亡人などという、不幸な身になったのよ……」
なんて言葉から始まり、ねちねちと嫌味を言われ、
「ふ――ん、じゃあ、いまお幸せなんですね……なによりなにより……で、道長さまとは、どんな風なご様子で? よろしければ、ひとつご教授……」
そう言うと、最近、道長と疎遠になってしまったらしき、「愛人百〇八号」的な女房に、紙と筆を持ち、こうなったら「ネタのひとつでも拾うか」そう思い、長い髪が邪魔なので、額に〆ていた鉢巻のような布を取り、ばさりと顔に落ちた、長い黒髪の隙間から、例の暗黒色の瞳をぎらつかせ、「では、きっかけと出会いから……さあ、さあさあさあ……」なんて、ずりずりと袴を引きずりながら、女房に迫る。
その恐ろしい形相に、思わず腰が抜けて、
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