🔮パープル式部一代記・第伍話
その頃、内裏で胃に穴が開きそうなそんな政争にも喜々として明け暮れていた道長は、相変わらず
彼は、ゆかりのような文学の才能は持ちあわせていなかったが、変わりにと言ってはなんだが世渡りは、悪どいを通り越す天性の黒い才能を持ちあわせ、内裏を覆い尽くす黒い太陽のようにのさばっていたのである。
公卿たちの間では、「あれでは亡くなった兄たちの方がまだマシだった……」「疫病ってさ……あいつが
しかしながらあの不気味な
そして正妻にして血筋もよい上に、京でも一番の美人と言われる
釣り殿と呼ばれる池に面した場所からぼんやりと水面をながめていると、
「今日も物語の続きはこなかったが、どうなっていた……?」
「はあ……あの……」
「なんだ? 言いたいことがあれば言ってみろ?」
「あの……
「え……?」
『女の身で、あのようなことができるのであろうか……?』
道長は、
「それがどうやら、お父君にばれてしまったようで……物置小屋へ閉じ込められてしまっております。夜はこっそりと抜けだして、代筆屋の仕事を集めていらっしゃるようですが……」
「物置小屋へ閉じ込められている!? 幼い乳飲み子を抱え切羽詰まってのことだろうが!! だから学者バカは大嫌いなんだ!!
あの、
道長は、物置小屋へ閉じ込められた
「殿? いかがなさいましたか?」
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