12章 さあ、裁判だ
**太平洋新聞**
### **イワン地上基地で海王星連合軍の将校ら続々生け捕り!**
#### **火星の虐殺の実行犯も含まれる、裁きの時が迫る**
地球連合軍がタイタンのイワン地上基地を制圧した際に、海王星連合軍の将校や士官たちが次々と生け捕りにされていることが明らかになった。捕虜の中には、かつて火星で無惨な虐殺を実行した者たちも含まれており、彼らがついに法の裁きを受ける時が訪れようとしている。
火星の虐殺は、無数の無辜の命を奪った歴史的な悲劇であり、その実行犯たちは、これまで正義の手から逃れていた。しかし、イワン地上基地の陥落により、彼らはついに捕らえられ、何百万人もの命を奪った罪に対する報いを受けることになる。
タリア・シオウルは、火星国際空港を襲う、戦艦アースクエイクの熱戦砲の発射を担ったと考えられている。
フェルディナンド・クレオは部下を指揮して数百人におよぶ婦女に暴行を加えたうえ、百人以上の人質を海王星に連れ去った張本人だ。
カギロイ・トルーソーはマルティプライ通信所属の中立なジャーナリストを装っていたが、戦闘行為に実際に参加し、また婦女や子供を含む民間人の避難所への、海王星連合軍の侵入を手引きし、地獄を生み出した。
トーリ・サンザカは火星現地で、数万人の民間人の殺害にかかわった。
ラツィク・ディーディー・サンマルトラは火星政府の職員だったが、海王星連合軍の襲撃を事実上手引きし、自らに虐殺に加わり、その後海王星連合に亡命したと考えられている。
地球連合軍は、これらの犯罪者たちを裁判にかけ、残虐行為の全貌を明らかにするとともに、犠牲者たちに正義をもたらすことを誓っている。この勝利は、虐げられた魂の叫びが届いた瞬間であり、これから下される裁きが、さらなる正義と平和の礎となることを期待したい。
**大西洋新聞**
### **社説: 正義の名の下に、死刑は許されるのか**
タイタンのイワン地上基地が地球連合軍によって制圧され、海王星連合軍の将校や士官たちが次々に捕らえられている。この中には、火星での虐殺に関与した者たちも含まれているという報道が広がり、世論は激しく彼らへの死刑を求めている。だが、ここで立ち止まり、正義とは何かを冷静に考える必要があるのではないだろうか。
火星での虐殺は許し難い犯罪であり、その責任者が法の裁きを受けるべきなのは当然だ。しかし、死刑という手段が正義をもたらすことになるのだろうか? 死刑は、私たち自身が犯すことのできない一線を越える行為ではないだろうか?
死刑は、被害者や遺族の心の痛みを癒すどころか、新たな暴力の連鎖を生む可能性がある。犯罪者に死をもって償わせることが、果たして社会に真の平和と和解をもたらすことになるのか。死刑は、国家が人命を奪う権利を持つことを認める行為であり、その正当性は常に問い直されるべきである。
また、死刑には取り返しのつかない誤判のリスクが伴う。どれほど罪深いとされる者であっても、正当な裁判を経ずに命を奪うことは、法治国家の基本原則に反する行為だ。さらに、死刑によって彼らの命を断つことが、過去の罪を清算し、未来の社会をより良くするための道であるとは言い難い。
私たちが目指すべきは、復讐ではなく、法と人道に基づいた公正な裁きである。彼らに法の裁きを受けさせ、罪の重さを感じさせることが、真の正義を実現するための道だ。死刑という選択肢が常に疑問視されるべきなのは、私たち自身が正義という名の下に暴力を行使することの是非を問い直さなければならないからだ。
犯した罪を裁くことは重要だ。しかし、その裁きが私たちの社会に何をもたらすのか、冷静に見極める必要がある。私たちは、正義と人道の名の下に、死刑という手段を排除し、法に基づいた公正な裁きを求めるべきである。
**ギャラクシーTV: ガニメデ 街頭インタビュー**
**リポーター**: ここガニメデの街頭で、タイタン・イワン地上基地の制圧に対する市民の反応を聞いてみました。敵幹部が生け捕りにされたという報道を受け、ガニメデ市民はどう感じているのでしょうか?
**インタビュー1人目**: 「生け捕りにできて本当に良かった。戦死させるより、やつらを裁判にかける方が正しい。だって、死刑にできるんだから。」
**インタビュー2人目**: 「さあ裁判だ、裁判だ。これでやつらが犯した罪を、世界の前で暴くことができる。裁判が待ちきれないよ!」
**インタビュー3人目**: 「ケレスも取れず、タイタンも失い、やつらはもう実体銃弾にも事欠くありさまだ。炭素資源がなくなったらどうやってアーマーを作るつもりなんだ? 俺の姉さんの頭蓋骨から銃弾を引き抜いて再利用でもするか!?」
**リポーター**: このように、ガニメデの市民たちは敵幹部の捕縛と裁判に大きな期待を寄せています。彼らの怒りと興奮が、街全体に広がっているのを感じます。
**映像が切り替わり**、敵幹部が仮に移送されたとみられるガニメデ空港の周囲を取り囲む群衆の姿が映し出される。彼らは口々に「裁っ判っ!裁っ判っ!」と声を上げ、その声は次第に大きくなっている。
**リポーター**: こちらでは、敵幹部らが移送されたとみられる空港を取り囲む群衆が、「裁っ判っ!」と大声で叫び、彼らへの裁きが行われることを強く求めています。
**リポーター**:これまで、海王星連合軍の捕虜が生け捕りにされることは非常にまれでした。しかし、今回のタイタンでの勝利によって、連合軍はついに敵幹部を捕らえ、彼らを裁判にかける機会を得ました。この裁判は、彼らが犯した残虐行為の真相を解明し、正義を実現するための重要なステップとなるでしょう。
**ギャラクシーTVスタジオ討論**
**エレノア・ピアフ(ニュースキャスター)**: 皆さん、こんばんは。今日はタイタンでの勝利を受け、捕虜となった海王星連合軍の幹部たちの扱いについて、惑星間通商弁護士のヴェルハルト・ジュナスさんと、ガニメデ惑星議会議員のロナルド・テンソルさんにお話を伺います。
**ヴェルハルト・ジュナス(惑星間通商弁護士)**:まず確認しておきたいのは、惑星間条約によると、戦時中に捕らえられた者が重大な戦争犯罪を行った場合、その者を裁判にかける権利が明確に規定されています。火星での虐殺に関与した証拠があれば、彼らを裁判にかけることは国際法上正当です。軍民への攻撃ではなく一般人を標的にしたのですから、明らかな戦争犯罪です。被害者に正義をもたらすためにも、この裁判は必要不可欠だと考えています。
**ロナルド・テンソル(ガニメデ惑星議会議員)**:もちろん、犯罪者は裁かれるべきです。しかし、現実的に見て、これらの捕虜が裁判にかけられるかどうかは微妙です。国際法上、捕虜としての地位は保障されているわけです。映像資料は断片的で、供述がなければ確たる証拠にはならないかもしれません。それよりも、士官を捕虜交換のカードとして利用することで、戦略的な利益を得られる可能性も考慮するべきです。現段階では、感情的に裁判を求めるよりも、全体の戦略を考慮して冷静に判断する必要があります。
**ヴェルハルト・ジュナス**: 確かに、捕虜交換も一つの選択肢ではありますが、法の裁きを行わずに交換してしまうと、正義が果たされないまま終わってしまうかもしれません。特に、火星での虐殺に関わった者たちが再び自由になることは、被害者やその遺族にとって耐え難いことでしょう。
**ロナルド・テンソル**: その点は理解できますが、裁判をしたとして、犠牲者や人質が戻ってくるわけではありません。人質交換なら、人質は戻ってくるわけです。捕虜交換を通じて交渉の場を広げる方が、戦略的に見て、最終的な平和や良き帰結に繋がる可能性もあります。交渉のカードになるものを、裁判でただ殺して満足するというのは馬鹿げてはいないでしょうか。
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**火星タブロイド紙「レッドプレス」**
### **火星の遺族と元人質たち、火星での裁判を強く要求**
火星都市 — タイタンで捕縛された海王星連合軍の幹部たちに対し、火星での裁判を求める声が高まっている。特に、火星での虐殺によって家族を失った遺族や、生還した元人質たちは、彼らを火星の法廷で裁くことを強く訴えている。
「私たちの家族を虐殺した者たちが、地球や他の惑星で裁かれるのではなく、この火星の地で法の裁きを受けるべきだ」と、ある遺族は涙ながらに語った。火星での裁判が行われれば、彼らが犯した残虐な行為を、被害者が直接その目で見届ける機会が与えられることになる。
元人質たちも同様に、火星での裁判を支持している。「私たちは地獄のような状況を生き延びました。彼らが私たちに何をしたのか、この火星の地で、そして世界中の人々に明らかにする必要があります」と、生還した元人質の一人は強調した。
**ギャラクシーTVで放送された討論番組より抜粋**
**ゼット・デュー・シムラ(戦場記者)**: 私は、火星で裁判を行うのは不公平だと考えています。火星での裁判は、公正な裁判を行う上でバイアスがかかる危険性があります。公正を期するためにも、ニュートラルな場所で裁判を行うべきではないでしょうか。
**ジャック・ヒーリング大佐(満面の笑みで)**: バカめ、いや、アンタに言ったんじゃない。ああ、あいつらがバカだよと言ったんだ。火星で裁判されたくなかったら、火星で殺さなきゃよかったんだ。あの連中は火星で人を生きたまま焼いて、子供を殺し、女を連れ去ったんだから、火星で裁かれるのが当然だ。火星の人々は、彼らの行為の結果を直接目の当たりにしてきた。だからこそ、火星で裁判を行うことが正しいんだ。
**ゼット・デュー・シムラ**:私が懸念しているのは、裁判そのものが感情に左右され、公正さを欠くことです。
**ジャック・ヒーリング大佐**: その公正さが、火星でこそ問われるべきだと思うよ。火星の人々は最も被害を受けたんだ。彼らが直接、あいつらの行為に対して裁きを下すのは当然の権利だ。公正な裁判とは、被害者の声がしっかりと反映されるもののことを言うんだよ!
**太平洋新聞**
### **捕虜の裁判は火星で実施へ**
#### **地球連合法務委員会が公式決定、事務総長が定例会見で発表**
地球連合 — タイタンで捕虜となった海王星連合軍幹部たちの裁判が、一部の例外を除き、火星で行われることが公式に決定された。地球連合法務委員会は、戦争犯罪に関与した捕虜の裁判を火星で行うことが最も適切であると判断し、この決定を地球連合事務総長が定例会見で発表した。被告は最低でも35人とみられる。
「火星での虐殺に直接関与した者たちに対しては、火星で裁きを受けさせることが正当であり、被害者やその遺族が正義を実感できる場で行うことが重要です」と、地球連合事務総長は語った。ただし事件の重大性を鑑み、陪審員裁判にはならない予定。
この決定により、火星での法廷が今後の裁判の舞台となることが確実となり、戦争犯罪者たちがその行為に対する責任をどのように問われるかが注目されている。すでに戦争犯罪者たちの火星への移送が始まっており、海王星勢力によるテロへの警戒も高まっている。
**海王星連合 声明**
サナト・アズリスの聖なる光に導かれる我々は、捕虜の地位が惑星間条約により保障されていることを強調する。地球連合が彼らを不当な裁判にかけ、処刑することは、正義に反する冒涜的な行為である。
もし我々の同胞が処刑されるならば、非常に遺憾で、やりたくはないことなのだが、我々は、お前たちから捕らえた人質を、同胞1人の処刑につき100人、縛り首にして、その死体が腐っていく映像をお前らに中継する。
**地球国営通信**
### **海王星連合の脅迫的声明、地球連合が猛烈に非難**
#### **「正義を冒涜する無法な威嚇に屈することはない」**
海王星連合は、本日、地球連合に対して脅迫的な声明を発表し、捕虜となった同胞が処刑される場合、報復として地球連合の人質を虐殺すると宣言した。これは、明らかに暴力と恐怖を駆使した卑劣な脅迫である。
海王星連合は、捕虜の地位が惑星間条約で保障されていることを強調し、地球連合が行おうとしている裁判を「不当な裁判」と非難した。しかし、この声明は続けて、同胞の処刑が行われた場合、報復として地球連合から捕らえた人質を1人に対して100人、縛り首にして、その腐敗する様子を中継すると脅迫した。
地球連合は、これに対し、即座に激しく非難する声明を発表。地球連合のスポークスマンは、「正義を冒涜する無法な威嚇に屈することは決してない」と断言し、海王星連合の脅しを「人道に反する無分別な行為」と厳しく批判した。
「地球連合は、惑星間条約の精神を尊重し、正当な法の下で捕虜を裁く権利を行使する。海王星連合がこのような非道な行為で我々を揺さぶろうとしていることは、彼らがいかに絶望的な状況に陥っているかを示しているに過ぎない。我々は正義の名の下に、冷静かつ断固たる対応を続ける」と、地球連合は宣言している。
**ユーザー1**: 「いつも思うんだが、海王星連合に今更人道を期待している奴は何なんだ?」
**ユーザー2**: 「さあ、海王星と天王星の領域に反攻だ!今こそ正義を示す時だ!」
**ユーザー3**: 「人質1人につき、海王星連合の狂人どもは100人死ぬけどな。それで満足か?」
**ユーザー4**: 「こんな脅迫に屈してはならない。正義を貫け!」
**ユーザー5**: 「海王星連合には人間の心がないのか?この残虐さには怒りしか湧かない。」
**ユーザー6**: 「母親を人質に取られている者として言うが、裁判はやるべきだ、こんな脅しに屈したら、この世から正義という正義が消えうせる。」
**ユーザー7**: 「これが彼らの『聖なる光』か。笑わせるな、ただのテロリストだ。」
**ユーザー8**: 「地球連合は正しい。こんな脅しに屈するわけにはいかない。」
**ユーザー9**: 「もし彼らが本当に人質を殺すなら、全力で報復するしかない。」
**ティートーノス・ケーブル**
**マリア・ミアズミの姉**: 「私たちは、妹が無事に戻ってくることをずっと願っていました。しかし、海王星連合の卑劣な脅しを聞いて、彼らがどれほど冷酷で非道なことを考えているかに怒りを覚えます。正義が行われるべきであり、脅しに屈することは決してありません。」
**マリア・ミアズミの父親**: 「海王星連合のやり方は人道に反するものです。彼らは、無実の人々の命を取引の道具にしようとしていますが、私たちはそれに負けるわけにはいきません。マリアがどれだけ苦しんでいるかを考えると、海王星連合がどんな手段を使ってでも私たちを脅そうとしていることが許せません。」
**司会者**: 「このような脅迫的な行為が許されることはなく、私たちは犠牲者とその家族のために、正義が行われることを強く求め続けます。」
(窓の外が光り、振動する)
ロトがゾアルに着いた時、日は地の上にのぼった。
主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降らせて、
これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。
創世記19:23-25
[通信途絶]
**ギャラクシーTV速報**
### **緊急速報: 火星地表の1/4が消滅、巨大クレーター出現、周囲は火の海**
火星発 — ただいま、火星地表の1/4が突如として消滅し、広範囲にわたる巨大クレーターが出現しました。オリュンポス市、ティートーノス市を含む多くの都市が壊滅し、犠牲者の数は少なくとも35億人に達する可能性があります。この事態により、火山活動への警報も発令されており、二次災害が発生する恐れがあります。
攻撃の正体は依然として不明です。視聴者の皆様におかれましては直ちに命を守る行動を取ってください。
- **利用可能なシェルターへ避難**: 可能な限り速やかに、最寄りのシェルターへ避難してください。シェルターは、安全を確保するための最も効果的な場所です。
- **シェルターにアクセスできない場合**: シェルターに避難できない場合は、建物の地下部分や窓の少ない堅牢な場所に避難し、外部からの衝撃や有害物質から身を守る行動を取ってください。
- **食料・水の確保**: 非常食や水、医薬品などの必要物資を手元に用意し、長期間の避難に備えてください。
- **通信手段の確保**: 可能な限り通信手段を確保し、政府や安全当局からの最新情報を受け取るようにしてください。
- **不要不急の外出を控える**: 外部への不要不急の外出は避け、できる限り屋内で安全を確保してください。
繰り返します。命を守る行動を取ってください。
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「ハ、ハ、ハ。裁判は中止だな。法廷がなくなった。文字通り火の中に消えたぞ。」
~カルリラル・ヴァルトラ将軍がエウロパ宙域において地球連合軍に聞かせた通信
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