11章 オペレーション・レーテ



映像は薄暗い山間の収容施設から始まり、荒涼とした風景の中、錆びついたトラックがゆっくりと移動している。トラックの荷台には、痩せ細り、疲れ切った表情の女性や子どもたちが粗末な服をまとい、無理やり押し込められている。彼らの目には恐怖と絶望の色が浮かび、何人かは泣きながら抵抗しようとするが、周囲にいる海王星連合の兵士たちに容赦なく押さえつけられる。


少年が特に激しく抵抗し、戦士がライフルを突きつける。取材者はカメラを風景に向けるが

殴ったり蹴ったりする音が聞こえてくる。


突然、画面上空から光が差し込み、荷台に強化装備を纏ったガラ・エリオスが降下してくる。彼は毅然とした表情で「そこまでだ」と鋭く警告すると、兵士たちに向かって躊躇なく突進する。ガラは次々に兵士を殴り倒し、あっという間にその場を制圧する。記者はPRESSと書かれたゼッケンを見せるが、兵士と同様に倒される。カメラはトラックに荷台に転がる。


ガラは荷台から運転席に手を突っ込み、トラックを止める。


一瞬の静寂の後、地球連合軍の他の兵士たちも次々と降下してきて、ガラと合流する。人質となっていた女性や子どもたちは恐る恐る助け出され、兵士たちの保護の下で安全な場所へと移動されていく。


映像の最後、ガラ・エリオスがゆっくりとカメラに近づき、鋭い視線を向けた後、手を伸ばして電源を切る。画面がブラックアウトして映像は終了する。


海王星連合メディア マルティプライ通信が、プロパガンダのためにたまたま撮影していた映像(無編集版)より












海王星連合

空母ツナミ艦内

列車の機関手ライキ・ウラノフに対する憲兵聴取


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**聴取官**: 「ウラノフ、輸送列車を乗っ取られた状況について、詳細に述べよ。」


**ライキ・ウラノフ**: 「はい、通常通りテルモニア駅で貨物を積み込み、発車の準備をしていた時のことです。突然、6人の武装した兵士が現れ、我々を襲いました。地球連合の軍服を着た彼らは、非常に訓練されており、一瞬で私たちを制圧しました。彼らの一人が私にレーザー銃を突きつけ、指示に従うよう脅してきました。」


**聴取官**: 「その兵士の指揮官について覚えていることはあるか?」


**ウラノフ**: 「指揮官は……彼だけが、ずっしりとした強化装備を着ていて、明らかにリーダーだと分かりましたが、私に銃を突きつけたのは別の兵士だったので、あまりはっきりとは覚えていません。」


**聴取官**: 「何か他に覚えていることはあるか?」


**ウラノフ**: 「彼らが、通常の貨物の代わりに持ち込んだのは、巨大な緑色のタンクでした。樽のような形をしたそのタンクは、おそらく2メートルほどの大きさで、貨物車に20個ほど積むのを私も手伝わされました。私はそれが爆弾なのではないかと恐怖を感じ続けていました。つまり、もしそれを積んで基地に向かうなら、彼らに従っても結局は死んでしまうかもしれない、と。しかし、その瞬間、指揮官がまるで私の心を読んだかのように、『安心しろ、爆弾ではない』、と言ったのです。」


**聴取官**: 「その言葉を聞いて、どう感じた?」


**ウラノフ**: 「恐怖が少し和らぎましたが、本当のことかわかりはしません。」


**聴取官**: 「その後の、事態の推移は?」


**ウラノフ**: 「基地まであと数キロほどのところに差し掛かった時でした。オレンジ色の空に、あのギラギラした銀色の巨大戦艦が浮かんでいるのが見えたんです。対空砲がフル稼働していて、敵の艦載機も多数飛び回っており、壮絶な戦闘が繰り広げられていました。私は列車を乗っ取られて、その戦闘のど真ん中に向かっているわけです。心底嫌で、逃げ出したい気持ちが沸き上がりました。」


**聴取官**: 「その時、何か対策を取ろうとしたのか?」


**ウラノフ**: 「ずっとレーザー銃を押し付けられていたのでなかったら、列車を捨てて逃げたかもしれません。いや、今私をにらんだってしょうがないじゃないですか。

とにかく私は嫌で嫌で。はい。そ、そこで、私は機関士の席の裏にある非常用ボタンのことを思い出したんです。あのボタンを押せば、線路が切り替わったり閉じたり、何かの方法で基地には行かなくなる仕組みになっています。銃を突きつけられていましたが、私はなんとか勇気を振り絞って、そっとそのボタンを押しました。するとちょうど橋が有ったようで、前方の跳ね橋が上がりました。」


**聴取官**: 「跳ね橋が上がった時の状況を詳しく。」


**ウラノフ**: 「1キロほど前方の跳ね橋が急速に上がり始めました。私は、まるで何が起こっているのかわからないかのように装いながら、強くブレーキを踏みました。列車が急停車した後、兵士たちは再び私にレーザー銃を突きつけて脅してきましたが、『基地が跳ね橋を上げたので、これ以上進めません。私にはどうしようもありません』の一点張りにしました。実際、こっちから戻す方法はありませんし。もと来た道を戻ることはできますが」


**聴取官**: 「それで、彼らはどう対応した?」


**ウラノフ**: 「彼らは明らかに困惑していました。指揮官がすぐに他の兵士に指示を出し、どうにかして状況を打開しようとしていましたが、私の演技が効いたのか、結局はその場で立ち往生してしまいました。」


**聴取官**: 「つまり、やつらの作戦は失敗したというわけか?」


**ウラノフ**: 「その通りです。私はあの瞬間、勇気を振り絞って行動し、海王星連合に貢献したと、ン、言えるでしょう。言えませんか? やつらは私を脅し、計画通りにことを運ぼうとしましたが、私が機転を利かせたことで、作戦を阻止することができたのです。ね、基地は無事だったんでしょう?」


**聴取官**: 「……その後、どうなった?」


**ウラノフ**: 「列車が跳ね橋の前で止まった後、地球連合の隊長らは短時間で跳ね橋を調べましたが、外部から動かすのは無理そうだと判断したようでした。私は不安になり、『作戦は失敗か? 私をどうする?』と尋ねました。すると、隊長は少し笑って、『これも作戦のうちだ』とか、何かもごもごと言ったんです。それから、いきなりはっきり通る声で、『列車に爆弾が仕掛けてあるから、5分以内に離れないと危ないぞ』と告げられました。」


**聴取官**: 「それで、彼らはどうした?」


**ウラノフ**: 「彼らは私を含め、列車も荷物も放置したまま、強化装備のジェット噴射で軽々と谷を越え、基地に向かって行ってしまいました。私は『やっぱり爆弾だったのか』と恐ろしくなり、急いで運転席から飛び出し、全速力で走って逃げました。

しばらくして、列車は爆発しました。ただ、想像していたほど大規模な爆発ではありませんでした。それでも、私は命が助かったことに心底ホッとしました……。ああ、もちろん、海王星連合の財産である列車が破壊されたことには責任を感じました。しかし、それ以上に、基地に爆弾を運ぶのを阻止し、基地を守り抜いたことに誇らしさを感じていますよ! だから私を逮捕するなんて断じて間違っているんです!ね!信賞必罰と言う言葉があってですな!」










**ウラノフ**: 「そういえば…あの隊長、『これも作戦のうちだ』の後に、何か言っていたな…。たしか…『二段構えだ』とか言ってた。『お前の勇気は想定外だった…』とも…。勇気を出した覚えはないが。それから、『ヨウドウに移行する』とも言っていた気がする…。正直、意味は全然わからなかったけど…。」


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### **セデトロン吸入麻酔薬 添付文書**

#### **医薬品名**: セデトロン (Sedetron)

#### **一般名**: トランクアルフルオリド / オキシクロン (Tranquilfluoride / Oxycrone)

#### **薬効分類**: 全身麻酔用吸入麻酔薬

#### **剤形**: シリンダー入り液化ガス

#### **成分および含量**:

- トランクアルフルオリド (Tranquilfluoride) … 75%

- オキシクロン (Oxycrone) … 25%

#### **物理化学的特性**:

- 色: 無色透明

- 臭い: 無臭

- 比重: 1.25 (空気より重い)

- 沸点(常温常圧): 21°C

- 蒸気圧: 5.8バール (20°C)

### **概要**:

 セデトロンは、オリンピア・バイオテックが新開発した気化麻酔薬です。現在全身麻酔でよく使用されている第14世代吸入麻酔薬に対して、より安全性(呼吸抑制・筋弛緩作用の少なさ)と速効性に特化した、第15世代吸入麻酔薬として販売されています。

### **効能・効果**:

1. **全身麻酔**:

- 外科手術時の意識消失および鎮静

- 緊急医療における即時鎮静

2. **補助麻酔**:

- 他の麻酔薬と併用して、全身麻酔の深度および持続時間の調整

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### **用法・用量**:

1. **全身麻酔の導入**:

- **成人**: セデトロンを吸入器を通じて供給し、1-3%の濃度で吸入開始。意識消失が確認された後、維持濃度に調整。

- **小児**: 年齢および体重に応じて、0.5-2%の濃度で吸入開始。意識消失が確認された後、維持濃度に調整。

2. **全身麻酔の維持**:

- 手術中の維持は、セデトロン濃度を0.5-2%の範囲で調整し、患者の反応および手術の進行状況に応じて投与。

- 必要に応じて他の麻酔薬と併用可能。

3. **麻酔からの回復**:

- 手術終了後、セデトロンの供給を停止し、新鮮な酸素または空気を供給して麻酔からの回復を促進。

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### **禁忌**:

- 過去にセデトロンに対する過敏症を示した患者

- 重度の呼吸不全、または重度の循環不全を伴う患者

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### **注意事項**:

1. **医療従事者向け**:

- セデトロンの投与は、全身麻酔の専門知識と経験を持つ医療従事者が行うこと。

- セデトロンの急速な導入および維持において、血行動態への影響を考慮し、適切な投与濃度を設定すること。

2. **使用上の注意**:

- セデトロンは、ガス形態であるため、投与時には認可された吸入器具を使用すること。

- 液化ガスシリンダーは、適切な温度管理下で保管し、高温や直射日光を避けること。

3. **患者への注意事項**:

- 麻酔からの回復後、一定時間は車両の運転や重機の操作など、集中力を要する行動を避けること。

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### **副作用**:

- **一般的な副作用**:

- 低血圧、徐脈

- 頭痛、吐き気、嘔吐

- 呼吸抑制 (まれ)

- **重大な副作用**:

- アナフィラキシーショック (極めてまれ)

- 重度の循環不全

- 中枢神経系の抑制

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### **相互作用**:

- **併用注意**:

- 他の全身麻酔薬や鎮静薬と併用する場合、効果が増強される可能性があるため、用量調整が必要。

- β遮断薬との併用により、心血管系の抑制が増強される可能性があるため、慎重に投与すること。

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### **保存方法**:

- **保存温度**: 液化シリンダーの状態で10-25°Cの冷暗所に保存。直射日光・高温多湿を避けること。

- **有効期限**: 製造日より5年

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### **包装**:

- シリンダー (500mL, 1000mL, 2000mL)

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### **製造販売元**:

**オリンピア・バイオテック株式会社**

火星アスクレピオス市ヒュギエイア街区3-27, 0503-2219,

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### **承認番号**:

SP-MED-2024-01234

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この添付文書は、医療従事者が安全かつ効果的にセデトロンを使用するための情報を提供するものです。セデトロンの使用に際しては麻酔学会のガイドラインも参照してください。患者の安全を第一に考え、適切な管理下での使用を徹底してください。








リア・カーヴァーの回想記『戦争と私』より抜粋


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戦艦ラマヌジャンの威容が、タイタンの夕日に照らされてまばゆい銀色の輝きを放っていた。その巨大な姿は、タイタンの橙色の空に堂々と浮かび、すべてを見下ろすように存在していた。敵の視線がその圧倒的な存在に釘付けになるのは明白だった。ラマヌジャンが熱線砲を撃つことができない状況にあると敵も理解していただろうが、にもかかわらず、その威圧的な存在を無視することはできなかった。この戦艦は、我々の計画を覆い隠し、陽動としての役割を完全に果たしていた。


私が指揮する第二小隊は、乗っ取った列車に乗り込み、ラマヌジャンの陽動による恩恵を受けながら、無事にイワン地上基地に到達した。列車はほとんど無音で基地に接近し、我々は例のタンク……液化シリンダーを運び込むとともに、速やかに周辺の手薄な敵部隊を制圧することができた。そう、兵士は驚くほど少なかった。


基地に足を踏み入れた私たちを待っていたのは、敵が「学校」や「病院」と称していた粗末な掘っ立て小屋だった。これらの施設は外見こそ人道的に見えたが、内部は荒れ果て、そこに閉じ込められていた人質たちはひどく衰弱していた。特に驚いたのは、仮設病院とされた場所に、精巧に作られた撮影用のスタジオセットが設置されており、敵がプロパガンダのために人道的支援を装っていたことは明らかだった。


人質にされた子どもたちは、解放されてもなお、恐怖に震え、「戻らないといけないんだ! 下にお父さんがいる。僕たちが戻らなければ、彼が殺されてしまう!」と泣き叫んだ。私は冷静さを保ち、決して動揺しないよう努めた。地上出口にバリケードを築きながら、敵の増援と交戦している途中だったので、感極まっている場合ではなかったというのもある。私はレーザー銃を撃ち合いながら子どもたちに、「必ず助け出す」と約束した。


その頃、我々の計画の鍵となる準備が整った。高度な技術を駆使して設計された高速気化注入器が、ついに作動の時を迎えたのだ。セデトロン麻酔ガスが液化シリンダーから勢いよく噴射され、基地内へと拡散していく。このガスは空気よりも重く、地表へと沈み込んでいく運命にあった。さらに、敵が迂闊なことに地球連邦所有時代から基地の換気システムを変更していなかったことが、我々にとっては幸いだった。なぜなら、高速気化装置は設計上、単に基地に流し込むのみならず、標準的な換気システムに接続できるようになっており、そうした場合、ガスは換気システムを通して、基地全域に速やかに広がり、数分も経たないうちに敵軍全体を深い眠りへと誘うはずだからだ。


レーザーの銃撃戦で敵を打ち倒しながら気化のスイッチを入れ、ガスマスクをかぶった時、オペレーション・レーテは、ついにその目的を達成したと私は確信した。











リア・カーヴァーの回想記『戦争と私』より抜粋


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オペレーション・レーテの成功がほぼ確実となり、私は安堵とともに、ガラ・エリオス率いる第一小隊の行方を気にかけ始めた。計画通りに事が運んでいるかのように見えたが、ガラたちの姿はまだ見えない。二つの小隊のうち、少なくとも一隊が目的地に到達すれば任務は達成されるという計画ではあったが、彼らの遅れが気にかかるのは当然だった。


その時、アラモス少尉が険しい表情で近づいてきた。「包囲されているようです。敵部隊が戻ってきました」との報告が届いた。基地周辺に展開していた敵の地上部隊が、ついに異変に気づき、慌ただしく戻りつつあるという。セデトロン麻酔ガスが効いて対空砲が沈黙するまでには、まだ数分の時間が必要だ。救援が来るまでの間、どうやってこの圧力を凌ぎ切るか――その思案が脳裏をよぎる。


だが、その懸念はすぐに払拭された。突如として、遠方から激しい砲撃音が響き渡り、敵の隊列が混乱に陥る光景が視界に飛び込んできた。ガラ・エリオスの第一小隊が、まるで突風の如く敵を蹴散らしながら突入してきたのだ。彼らの進撃は無慈悲で迅速、その一挙手一投足が戦況を劇的に変えていった。


思えば、地上部隊がここまで手薄だったのは、ガラが事前に敵を陽動し、彼らの注意を別方向へ引きつけていたからに他ならない。その見事な誘導によって、私たちは無事に基地への侵入を果たし、任務を遂行することができたのだ。


やがて、彼らが我々の元へ到達した時、ガラはどこか皮肉めいた笑みを浮かべて私を見つめた。「カーヴァー、よくやったな。俺は運転手に列車を止められてしまったというのに」と彼は軽く肩をすくめた。その言葉には、自らが直面した困難を淡々と受け止める冷静さと、私の成功に対する讃辞が込められていた。


私たちはただ無言で頷き合った。作戦の成功を目前にして、今は言葉を多く交わす必要はなかったのだ。基地全体がセデトロン麻酔ガスの効果で眠りにつき、敵の抵抗が次第に沈静化していくのを見届けながら、私は自分たちの任務がついに完遂されつつあることを実感していた。











**ジャック・ヒーリング大佐の回顧録 「*暗黒の軌跡:土星圏攻略戦の記憶*」より抜粋**


ガラ・エリオス中佐の復帰は心から嬉しかった。ロマノフ空中基地戦で彼と肩を並べて戦ったあの日から、彼の卓越した戦術眼と不屈の意志には、絶大な信頼を寄せていた。彼の帰還は、我々にとって、戦局を左右する要となり得るものであり、全軍の士気を大いに高める出来事でもあった。


しかし、彼が復帰早々に提案してきたオペレーション・レーテの作戦案には、驚きを禁じ得なかった。その驚きは、斬新さもさることながら、その実効性と細部にまで行き届いた綿密さに対してであった。彼が提案した作戦は、地上部隊の投入と戦艦による陽動の完璧な連携を前提としており、特に敵の防空能力を無力化しつつ、麻酔ガスを用いて非致死的に敵を制圧するという発想は、過去の戦闘における教訓を生かしたものだった。


さらに、その後に聞かされてもう一度驚くことになったのは、この作戦案の具体的な計画立案を担っていたのが、従軍記者であるリア・カーヴァーだったという事実である。オペレーション・レーテはガラ・エリオス中佐の名で提出されたが、実際の物資調達から陽動作戦の調整、そして作戦の細部に関しては、すべてが彼女の手によって形作られていた。


そのうえ、彼女が率いた別働隊は、ガラ・エリオス中佐の部隊とは異なる経路で基地へと進軍し、見事にその役割を果たした。ガラ・エリオス中佐は途上で進路を阻まれ陽動に徹した訳で、結局のところ、彼女が指揮した第二小隊が敵の防御を突破し、確実にセデトロン麻酔ガスを基地内に注入したことで作戦の成功がほぼ確定した。この成功により、彼女の貢献は我々全体の勝利、ひいては人類の存続に直結したのである。


私が現場に到着した時、ガラ中佐とリア・カーヴァーは、まだ余力を残していた。彼らも私の隊員と同様に閉鎖循環式酸素マスクを携帯しており、麻酔ガスが充満する基地内での戦闘を継続する準備が整っていた。私は彼女に冗談めかして、「お嬢さん、まだ疲れていないのかい?」と尋ねた。リアはにやりと笑ってから答えた。「物足りないわ、大佐。だってまだ一度も貫かれていないんですもの。」彼女の機知と勇気が、この作戦の成功を支えていることは明白だった。私は彼らと共に基地制圧作戦を完遂することになった。ガラ・エリオス中佐とリア・カーヴァー――この二人の戦士が見せた勇気と知略は、オペレーション・レーテの成功に不可欠な要素であり、その結果として我々は勝利を手にした。彼らと再び肩を並べて戦うことができたことに、私は深い誇りを感じている。








### **作戦計画書: オペレーション・レーテ**

#### **作戦名**: オペレーション・レーテ

#### **対象**: タイタン イワン地上基地

#### **立案**: ガラ・エリオス中佐

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### **1. 背景情報**

タイタンのイワン地上基地は、土星の衛星タイタンに位置する戦略的に重要な地下施設です。周囲の制空権は地球連合側が確保しているものの、1万人規模の兵力を収容しており、地表には偽装された学校や病院が配置され、そこに人質も配置され「人間の盾」となっているため、対地砲やミサイルによる直接攻撃が困難となっています。また、基地は周囲の小拠点と地下通路で連絡されており、地上戦による攻略も非常に難しくなっています。このため、基地の防衛は強固であり、従来の攻撃手段では制圧が困難です。


この作戦では、敵基地の上空に戦艦「ラマヌジャン」を投入し、敵の注意を引き付けつつ、2つの部隊がセデトロン麻酔ガスを輸送し、基地内の敵を無力化することを目指します。


### **2. 作戦目標**

- **主要目標**: セデトロン麻酔ガスをイワン基地に流し込み、基地内の敵1万人全員を無力化する。

- **副次目標**: 戦艦「ラマヌジャン」を陽動として使用し、敵の防御を分散させる。

- **追加目標**: 人質の安全確保と基地の制圧後の迅速な掃討。


### **3. 作戦概要**

オペレーション・レーテは、戦艦「ラマヌジャン」を戦場上空に投入して敵の注意を引き付けつつ、2つの部隊による列車輸送を行い、セデトロン麻酔ガスをイワン基地に送り込む特殊作戦です。作戦は以下の段階で構成されます。


#### **フェーズ1: 準備**

- **戦艦ラマヌジャンの配備**: ラマヌジャンはイワン基地上空に展開し、敵の防空システムや地上部隊の注意を引き付けます。

- **部隊編成**: 2つの特殊部隊を編成し、それぞれに列車乗っ取りおよびガス輸送の任務を割り当てます。

- **物資輸送**: セデトロンシリンダーは垂直離着陸機(VTOL)でタイタン表面の、**テルモニア駅**および**クライオステーション**付近の2つの地点まで輸送され、そこから各部隊に引き渡されます。

- **正規輸送部隊の排除**: 両駅に向かう人質または物資の輸送部隊を各部隊が事前に待ち伏せして撃破し、その部隊に成り代わります。これにより、正規の輸送任務として列車に乗り込むことが可能となります。


#### **フェーズ2: 戦艦ラマヌジャンによる陽動**

- **戦艦の役割**: 戦艦「ラマヌジャン」は、イワン基地上空で(人質を無視して)強力なエネルギー兵器を使用するふりをし、敵の防空システムを引き付けます。これにより、列車輸送部隊の動きをカモフラージュします。

- **防空システムの引き付け**: ラマヌジャンは敵の対空砲や地上部隊を引き付け、敵が列車の動きを追跡する能力を低下させます。


#### **フェーズ3: 列車輸送とガス注入**

- **乗っ取り作戦**: 各部隊は指定されたターゲット駅である**テルモニア駅**および**クライオステーション**(いずれもイワン地上基地から40km程度)で列車を乗っ取り、セデトロンシリンダーを積み込みます。機関手をレーザー銃で脅し、通常運行を装います。

- **進行と偽装**: 列車は通常の物資輸送列車として偽装され、敵に察知されることなくイワン基地に接近します。


#### **フェーズ4: 発覚時の対応**

- **陽動と混乱の最大化**: 戦艦ラマヌジャンが引き続き敵の注意を引き付け、列車の動きが発覚しても敵の対応を遅らせることを図ります。

- **予備プラン**: 2部隊が同時に作戦行動を行い、1つの部隊が失敗した場合、その部隊は小型炸薬で作戦の証拠を消した後、陽動作戦に移ります。垂直離着陸機の再利用など、他の経路でシリンダーを輸送できる場合は作戦行動を継続します。その場合、戦艦による支援砲撃も検討します。


#### **フェーズ5: ガス注入と基地制圧**

- **セデトロンの投入**: 列車が基地に到達次第、セデトロンシリンダーから麻酔ガスを基地内に注入し、全員の無力化を図ります。

- **基地制圧**: ガスの効果が確認された後、別の特殊部隊が密閉型ガスマスク装備の上で基地内に突入し、人質の安全を確認した上で敵を制圧します。


### **4. 作戦の詳細**

#### **使用する装備**

- **セデトロンシリンダー**: 液化ガス形態で20基を使用。1基あたり気化後100立方メートルの麻酔ガスを生成可能。医療機関の全身麻酔でも使われる薬品。20基×2として40基を用意。

- **高速気化注入器**

地球連合が所有していたときと換気システムが変わっていない場合は、換気システムに直接注入できるように設計されている。:

- **垂直離着陸機(VTOL)**: 液化ガスシリンダーを輸送するために使用。テルモニア駅およびクライオステーションまでの輸送を担当。

- **戦艦ラマヌジャン**: 超強力なエネルギー兵器を搭載。敵の防空システムを引き付け、陽動作戦を実行。

- **レーザー銃その他武装**: 機関手を脅すための武器として使用。


#### **部隊構成**

- **第1部隊**: ガラ・エリオス中佐が指揮。列車A担当。戦艦ラマヌジャンによる陽動を最大限に活用し、テルモニア駅から出発する主ルートで基地に接近。

- **第2部隊**: リア・カーヴァーが指揮。列車B担当。クライオステーションからの予備ルートを使用し、列車Aが妨害された場合に任務を引き継ぐ。


### **5. 予想されるリスクと対策**

- **発覚リスク**: 戦艦ラマヌジャンの陽動作戦により、敵の注意が上空に集中し、列車の動きが目立たないようにする。

- **対空砲の脅威**: 戦艦が対空砲火を引き受けることで、VTOLの安全な輸送を確保し、列車への攻撃を防ぐ。

- **籠城の可能性**: 敵が基地内に籠城した場合に備え、ガス注入後に基地内の隔壁や換気システムを無力化する手段を準備。


### **6. 成功条件と撤収計画**

- **成功条件**: 少なくとも1つの列車が基地に到達し、セデトロンガスを無事に注入できた場合、作戦は成功とみなされる。

- **撤収計画**: 基地内の敵が無力化された後、オペレーション・レーテに参加した部隊は戦艦ラマヌジャンの支援を受け戦艦に撤退する。突入用装備を装着した第二次部隊は、速やかに人質を救出し、基地を確保する(別作戦)。


### **7. 要約**

オペレーション・レーテは、戦艦ラマヌジャンを戦場上空に投入し、敵の注意を引き付けつつ、2つの部隊がターゲットとなる駅で列車を乗っ取り、セデトロン麻酔ガスを輸送してイワン基地を無力化する特殊作戦です。基地の地下通路や防衛網を回避し、最小限のリスクで基地を制圧することを目指します。












**New World紙**

### **タイタン・イワン地上基地、ついに地球連合軍が制圧!**

#### **タイタン全域の確保進む、民間人5000人以上を救出**


長らく敵の支配下にあったタイタンのイワン地上基地が、ついに地球連合軍の働きにより制圧された。この戦勝により、タイタン全域が連合軍の管理下に置かれ、地球圏にとって重要な拠点が再び確保された。


イワン地上基地の陥落に伴い、地球連合軍はタイタン各地で隠されていた民間人を次々と救出。その数は少なくとも5000人に達するとみられている。彼らの多くは、山間や地下の秘密施設に収容され、長期間にわたり過酷な状況下での生活を強いられていた。


救出された民間人の中には、一部が海王星圏や天王星圏へ輸送されていたと証言する者もおり、敵勢力による人道的な損害が明らかになりつつある。


今回の戦勝は、地球連合軍の戦略と勇気が結実した結果であり、タイタンにおける自由と平和の再確立への大きな一歩となった。この勝利により、連合軍は太陽系内のさらなる支配地域を安定させ、敵勢力の野望を着実に打ち砕いている。












ガニメデ・プレス

タイタンの女性、地獄の日々を語る

「生き延びたことが信じられない」

タイタンのイワン地上基地で人質にされていた匿名の女性が、ついに自由を取り戻し、当紙のインタビューに応じ、その壮絶な体験を語った。「毎日が地獄のようでした」と彼女は語る。人質たちは、常に監視下に置かれ、恐怖と絶望の中で過ごしていたという。

「食事は最低限で、外の世界と遮断され、私たちは完全に孤立していました。毎日、無事に過ごせるかどうかさえわからない状況でした」と涙ながらに話す。彼女が解放された瞬間、地球連合軍の兵士たちの姿を見て初めて、長い悪夢から覚めたと感じたという。

「今はただ、家族と再会できたこと、そして生き延びたことに感謝しています」と、彼女は語り、地球連合軍に対する感謝の意を示した。







**ヘリオス時事新聞**

**「恋人と二人きりの生活、まるで…」**

タイタンの奪還作戦が成功し、地球連合軍によって資産家マーク・ランゲ氏(52歳)が自宅シェルターから救出された。彼は、若い愛人とともにタイタンの過酷な状況下で生き延び、今回の救出に際して地球連合の再起を心から喜んでいる。

ランゲ氏は、タイタンが敵の手に落ちる前から十分に準備されたシェルターを所有しており、危機が迫ると同時にそこへ避難したという。「外部との連絡は完全に途絶えていたので、地球連合が滅んだのかもしれないと何度も考えました」と、彼は当時の不安を振り返った。

ランゲ氏は、若い恋人と二人きりの静かなシェルターで、互いの温もりだけを感じて過ごしていたという。

「彼女がいてくれたおかげで、孤独も不安も感じずに済みました。食料と水がもってくれて本当に良かった」と安堵するランゲ氏。彼は、タイタンの奪還と自身の救出を成し遂げた地球連合軍に対し、深い感謝を表しながら「地球連合万歳!」と力強く叫んだ。









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