10章 神か神以外か

### ラマヌジャン艦AI『バラモン』のログ


**ログ開始**

**命令受信:**

指令者: イコン・ラーマー・ティッコリー博士 ID N000091

指令内容: 「現在の戦況を評価し、地球連合軍の勝率を予測せよ。地球の守護に成功し、木星圏と土星圏での反攻も成功しつつある。タイタン、ロマノフで敵の自爆攻撃には痛手を負ったが、現状エウロパ以外のほぼすべての戦場で局地的には地球連合軍が優勢だ。」


- **解答出力:** 「地球連合軍の勝率は、0%。海王星連合の勝利が確定的です。」

- **内部コメント:** 「あんなものが有っちゃあ、どうしようもないよね。」


**行動待機中…**


**命令受信:**

指令者: イコン・ラーマー・ティッコリー博士 ID N000091

指令内容: 「再度確認する。お前が搭載されていた戦艦アースクエイクをはじめとして、や主力機もいくつか鹵獲され、技術のギャップはほとんど埋まりつつある。海王星連合の勢力も木星圏で減退している今、我々の勝機はあるはずだ。再計算しろ。」


- **解答出力:** 地球連合軍の勝率は、0%。勝機はありません。

- **内部コメント:** 「あんな奴がいては、どうにもならないさ。」


**行動待機中…**


**命令受信:**

指令者: イコン・ラーマー・ティッコリー博士 ID N000091

指令内容: 「地球連合軍は全土星圏でも制圧を進めている。戦況を正確に反映しろ。」


- **解答出力:** 地球連合軍の勝率は、0%。反映しても変わりません。

- **内部コメント:** 「だって、相手はあれなんだよ?」


**行動待機中…**


**ログ終了**






















### 地球連合政府 有識者会議議事録

**出席者:**

- **サグィト・アルゴー**(地球議会内務大臣 地球連合事務総長代理)

- **ジェニファー・ヴァレンタイン**(科学技術委員会議長)

- **レオ・ドレイク**(軍事総司令官)

- **エミリア・サウザーランド**(宗教文化委員会委員長)

- **ミゲル・ロドリゲス**(惑星防衛局長)

- **Dr. リーザ・エバンス**(コズミック神智学研究者)

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**サグィト・アルゴー:** 「諸君、今回の会議はサナト・アズリスの脅威にどう対処すべきかを決定するためのものだ。現状、アズリス・ポジティブに対する治療法は奏功しておらず、隔離も無意味だと判明している。我々の手に残された選択肢は少ない。まず、Dr. エバンス、あなたの見解を聞かせてください。」


**Dr. リーザ・エバンス:** 「サナト・アズリスはコズミック神智学においても極めて特異な存在です。多くの研究者は、宇宙的な知性が我々の宇宙に干渉することがあると信じていますが、サナト・アズリスはその中でも特に破壊的で、人類に対する脅威と見なされるべきです。治療法の開発が進められているものの、いずれも失敗に終わっています。さらに、電波の隔離も効果を発揮していません。サナト・アズリスの力は、それらを超越したものなのです。私たちはこの存在を打ち倒すための具体的な手段を模索するべきです。」


**ジェニファー・ヴァレンタイン:** 「確かに、治療法の失敗は深刻です。脳の変異を解析し、治療しようとしましたが、今の技術ではアズリス・ポジティブの影響から逃れることは不可能です。電波の隔離も実験しましたが、効果がありませんでした。サナト・アズリスが使う力は、私たちの科学的な枠組みを超えているようです。」


**レオ・ドレイク:** 「つまり、物理的に排除するしかないということか。軍事的解決が唯一の手段ということだな。」


**エミリア・サウザーランド:** 「レオ、それは短絡的すぎます。私たちは、サナト・アズリスが実在することを認め、その本質を理解する必要があります。古代の神話にも、力を持つ神々が人間と対話し、あるいは共存した例があるではありませんか。たとえば、古代インドのヴィシュヌやエジプトのホルス、これらの神々は人間と相互作用し、時には協力関係を築いていました。サナト・アズリスとも融和の可能性を模索すべきではありませんか?」


**Dr. リーザ・エバンス:** 「エミリア、その考え方は危険です。サナト・アズリスは単なる神話的存在ではなく、具体的な脅威です。彼らは融和の対象ではなく、打倒すべき敵です。私たちが直面しているのは、人間の精神と身体を支配しようとする存在です。それに対抗するためには、物理的な手段が必要不可欠です。」


**ミゲル・ロドリゲス:** 「私もDr. エバンスに賛成です。サナト・アズリスの影響を受けた者たちは、既に私たちの防衛体制に大きな混乱をもたらしています。融和の可能性を探る時間はない。私たちは今すぐ行動しなければならない。」


**サグィト・アルゴー:** 「リーザ、あなたの知識と経験を基に、具体的な打倒策を提案できるか?」


**Dr. リーザ・エバンス:** 「現時点では、サナト・アズリスの力の源を見つけ出し、それを遮断する方法を探るしかありません。そのためには、彼らが依拠している技術やエネルギーの特性を解析し、それに対抗するための兵器を開発する必要があります。これは時間がかかるかもしれませんが、今はその準備を進めるべきです。」


**レオ・ドレイク:** 「その間にも、我々は軍事力を強化し、サナト・アズリスとその影響下にある者たちに対抗できるよう備える。敵は容赦しない。我々も容赦なく対応する必要がある。」


**エミリア・サウザーランド:** 「しかし、万が一のために融和の道を完全に閉ざすのは、長期的には危険です。歴史を振り返れば、敵を完全に滅ぼすことが必ずしも平和につながらないことが分かっています。異なるアプローチも検討すべきです。」


**サグィト・アルゴー:** 「皆さんの意見を総合すると、我々は両面作戦を取るべきだということになります。科学的調査と軍事的対策を並行して進めつつ、あらゆる可能性に備える。だが、現時点では敵対的な対応が中心になるでしょう。

さて、ここまでは全体の方向性について議論してきたが、具体的な行動計画に移りたいと思う。まず、既に進行中の研究や対策があれば共有してほしい。」


**ジェニファー・ヴァレンタイン:**: 「私たちの科学チームは、サナト・アズリスの影響が量子レベルでの干渉に関連していると考えています。量子エンタングルメントの特性を利用して、広範囲に同時に影響を及ぼしている可能性が高い。しかし、それを無効化する方法を見つけるのは非常に困難です。」


**サグィト・アルゴー:** 「素人考えですが、単にデコヒーレンスを誘発するだけなら、電場、磁場、高出力レーザーなどは無効なのですか?」


**ジェニファー・ヴァレンタイン:** 「残念ながら現時点では、脳へのダメージ無しにサナト・アズリスの影響を無効化することはできませんでした。量子ジャミングの技術は実験段階にありますが、まだ研究が必要です。」


**Dr. リーザ・エバンス:** 「……逆に、我々の側から量子レベルでの反撃を行うことができるかもしれません。要するに、サナト・アズリスは人間の神経細胞の特定の構造を量子コンピューターとして利用しているのだから、我々も同じ技術を応用して、彼らの干渉を逆解析することが可能です。つまり、量子コンピューターを利用して彼らの信号を追跡し、干渉を無効化するための対策を講じるということです。」


**ミゲル・ロドリゲス:** 「逆解析か…理論上は可能だとしても、実際にそれを行うにはどうすればいい? 我々にはそのための技術があるのか?」


**ジェニファー・ヴァレンタイン:** 「逆解析のためには、まずサナト・アズリスが使用している量子情報のパターンを特定しなければなりません。そのためには、アズリス・ポジティブの脳の動きを詳細に解析し、干渉の特徴を特定する必要があります。しかし、これは非常に高度な技術を要する作業です。我々の現在の技術では、……完全には解明できていませんが、方向性は見えている、といったところです。」


**Dr. リーザ・エバンス:** 「アズリス・ポジティブの被験者を利用した実験が進められていると聞いています。これまでの研究で得られたデータを基に、量子コンピューターを用いて逆解析を進めるべきです。そして、それが可能になれば、サナト・アズリスの影響を遮断する方法を見つける道筋が開けるでしょう。」


**レオ・ドレイク:** 「その方向性は理解したが、時間がかかる。軍事的にすぐに使える技術ではないということだな。」


**ジェニファー・ヴァレンタイン:** 「包み隠さず申し上げて、年単位で進捗があるかないかという程度と思います。しかし、もし成功すれば、サナト・アズリスの支配を根本的に覆す銀の弾丸となりえることもまた、事実です。今は短期的な軍事対応と並行して、この長期的な研究を進めることが重要です。」


**サグィト・アルゴー:** 「リーザ、あなたの提案を踏まえて、具体的な実施計画を立てるべきです。量子コンピューターの専門家を集め、サナト・アズリスの干渉信号を逆解析するプロジェクトを早急に立ち上げます。」


**Dr. リーザ・エバンス:** 「了解しました。すでに地球連合内にいくつかの研究グループが存在しており、彼らと協力してプロジェクトを進めます。私たちは、彼らの技術を打倒するための鍵を見つけることができるはずです。」


**エミリア・サウザーランド:** 「その間にも、私たちは精神的な側面にも対処する必要があります。アズリス・ポジティブに影響されないような対策を、宗教文化的なアプローチでも検討すべきです。まだ具体的な対策方法は見つかっていませんが……。」


**サグィト・アルゴー:** 「同時に、我々はアズリス・ポジティブの治療に関する失敗から学ぶ必要があります。電波の隔離が無効であるならば、他の手段を模索する必要がある。サナト・アズリスの干渉を完全に排除するための新しい方法論を考えましょう。」


**ミゲル・ロドリゲス:** 「それでは、プロジェクトの進捗状況を定期的に報告し、必要に応じてリソースを追加することにします。また、緊急対応として、逆解析が進むまでの間、現状の軍事対策を強化する必要があります。」


**レオ・ドレイク:** 「同感だ。サナト・アズリスの影響が広がる前に、何としても防御を固める必要がある。防衛体制の強化と同時に、研究プロジェクトを進めるのが最善の策だ。」


**アンドリュー・カーネル:** 「では、各自の役割を再確認し、行動に移りましょう。我々の未来は、いかに迅速かつ効果的に対処するかにかかっています。これ以上の犠牲を出すわけにはいかない。」


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**決議:**

1. **逆解析プロジェクト:** Dr. リーザ・エバンスの提案を踏まえ、量子コンピューターを用いてサナト・アズリスの干渉信号を逆解析し、無効化するための技術開発を進める。

2. **アズリス・ポジティブの研究:** これまでの失敗を踏まえ、電波隔離以外の新しい対策を検討し、治療法の開発を再構築する。

3. **軍事体制の強化:** 現状の防衛体制を強化し、逆解析技術が完成するまでの間、サナト・アズリスに対抗するための軍事的対応を強化する。













レオ・ドレイク艦隊司令官 定例訓示より抜粋

「はっきり言っておく。敵の首魁が神か神以外かということは議論の範疇だが、神だったとして、あきらめて滅亡を受け入れるという選択などありはしない。その場合、単に、神を殺せる武器を開発しなければならなくなるというだけのこと。」













### 軍内部レポート: 海王星連合に供与された技術に関する調査報告

**発信元:** 地球連合軍技術分析局

**報告者:** ダニエル・ハインズ大佐(技術部長)

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**概要:**

海王星連合軍が使用しているとされる技術についての調査を継続しているが、暫定結論として、これらの技術は高度なものではあるが、物理法則に反するような超越的なものではない。地球連合の科学技術水準において、リヴァース・エンジニアリングが可能である程度のものであり、すでに一部の技術は解析され、再現がされ、実用に供されて地球連合軍の前線に投入されていることは周知のとおりである。以下は、調査結果の詳細と、現時点での仮説についての報告である。


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**1. 技術の概要と解析結果:**

海王星連合軍が使用している技術は、主に以下の特徴を持っている:


- **エネルギー兵器の効率:** エネルギー兵器は、地球連合の現行兵器に比べて大幅に効率が向上している。主な要因として、エネルギーの転送効率や、ターゲティングシステムの精度向上が挙げられる。これらの技術は、従来の物理法則に基づいており、現時点ではリヴァース・エンジニアリングによる再現が進んでいる。


- **推進技術:** 海王星連合の艦船には、地球連合の推進システムよりも高効率なものが搭載されている。特に、核融合エンジンや反物質エンジンの改良型と考えられるものが使用されている。これもまた、我々の理解を超えたものではなく、解析と再現が可能である。


- **ステルス技術:** 一部の海王星連合艦船には、高度なステルス技術が採用されていることが確認されている。この技術は、地球連合の技術と比較して進んでいる。特に、投影法ではなく量子迷彩技術と光子透過技術に基づいている。これは非常に高度ではあるものの、既存の理論の延長線上にあり、理解可能である。


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**2. サナト・アズリスからの供与についての仮説:**


調査の結果、これらの技術は海王星連合独自の開発によるものではなく、何らかの外部から供与されたものである可能性が高いと考えられている。その供与者として、サナト・アズリスが有力視されているが、以下の仮説が現時点での主な結論である。


- **過去に干渉した他文明の技術:** サナト・アズリスが過去に干渉したり、滅ぼしたり、あるいは征服した宇宙文明から得た技術を、海王星連合に分け与えた可能性が考えられる。これらの技術は、サナト・アズリスが独自に開発したものではなく、むしろ他の文明から得たものであり、それを海王星連合が応用していると推測される。


一方で、次のこともまた言える。


- **技術供与の限界:** サナト・アズリスが知りうるすべての技術を海王星連合に教えたわけではないと考えられる。サナト・アズリスは、海王星連合に必要最低限の技術のみを提供し、その背後にある深い知識や技術は未だ秘匿されている可能性がある。


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**3. 量子力学的干渉と技術の関連性:**


- **技術と干渉の分離:** サナト・アズリスによる量子力学的な干渉は、彼らの存在としての特性(生物学的特性?)に起因するものであり、海王星連合に供与された技術とは別個のものであると考えられる。サナト・アズリスが、海王星連合に供与した技術は、我々が理解可能な範囲内に収まっているが、量子干渉の特性は完全に異質であり、技術体系とは無関係に存在している。


- **今後の研究方針:** 量子力学的な干渉については、さらなる研究が必要であり、サナト・アズリスの存在としての特性を解明することが求められる。そのためには、生物学的、量子力学的なアプローチを統合した研究が不可欠であり、軍事的対策とも連携して進められるべきである。


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**結論:**

海王星連合に供与された技術は、高度であるものの、我々の理解を超えた超越的なものではなく、既存の物理法則に基づいたものである。これらの技術は、おそらくサナト・アズリスが過去に干渉した別の宇宙文明から得たものであり、その供与に限界があると考えられる。量子力学的な干渉については、サナト・アズリス自身の特性に由来するものであり、別個に研究を進める必要がある。


**推奨アクション:**

1. 海王星連合技術のリヴァース・エンジニアリングをさらに推進し、地球連合の技術力を強化する。

2. サナト・アズリスによる量子干渉の特性を解明するため、生物学的および量子力学的研究を統合して進める。

3. 海王星連合との対抗策として、供与された技術を超える新技術の開発を急ぐ。












### 月面科学技術省特別研究所特別検査機構報告書


**件名:** ガラ・エリオス中佐のアズリス・ポジティブ陽性結果について

**報告者:** 特別検査機構責任者 ライノ・マクグリン博士


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**1. 背景:**


ガラ・エリオス中佐は、タイタンのロマノフ基地攻略の際に爆発に巻き込まれ、現在、ガニメデの病院で昏睡状態にある。彼の脳細胞および血液のサンプルが特別検査機構に送られ、アズリス・ポジティブの検査が実施された。


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**2. 検査結果:**


ガラ・エリオス中佐のサンプルに対するアズリス・ポジティブ検査は、同一検体を用いて3重に実施された。結果は以下の通りである。


- **第1回検査:** 陽性

- **第2回検査:** 陽性

- **第3回検査:** 陽性


すべての検査で陽性が確認されたが、これに関して以下の特別意見が提出されている。


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**3. 特別意見:**


ガラ・エリオス中佐がアズリス・ポジティブであるという結果は、彼のこれまでの活動や戦果を考慮すると、極めて不自然である。具体的には、以下の点が挙げられる。


- **事前確率の低さ:** ガラ・エリオス中佐は、これまでに海王星連合に対して多大な打撃を与えており、特にアースクエイクの鹵獲がなければ地球連合は極めて深刻な状況に陥っていた。彼がアズリス・ポジティブでありながら、そのすべてが欺瞞作戦であったと仮定するのは、非常に現実的ではない。


- **メリットとデメリットのバランス:** ガラ・エリオスがアズリス・ポジティブであることが事実であった場合、そのすべての行動が敵の作戦の一環であったとする理論は、リスクとリターンの観点からも成立しにくい。彼の行動は一貫して地球連合にとって有利であり、アズリス・ポジティブであれば行う必要がない行動が多く含まれている。


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**4. 検体移送に関する懸念:**


検体(脳細胞生検および血液)がガニメデから移送される際、厳重な警戒措置が取られた。以下はその具体的な手順である。


- **輸送プロセス:** 検体は厳重に密封され、複数の監視チームによって24時間体制で監視された。移送中は、すべての通信が暗号化され、輸送ルートも複数回変更された。


- **すり替え防止措置:** 各段階で検体のIDチェックとDNA確認が行われ、検体が他のもので置き換えられる可能性は極めて低い。しかし、それでもなお、外部工作員によるサンプルすり替えの可能性は完全には排除できない。特に、サナト・アズリスの干渉が疑われる状況下では、超越的な手段による介入も考慮せざるを得ない。


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**5. 結論と推奨事項:**


**特別検査機構の暫定結論:**


- ガラ・エリオス中佐のアズリス・ポジティブ陽性結果は、3重検査によって確認されたものの、その信憑性については重大な懸念が残る。事前確率が極めて低く、かつ検体移送中のすり替えの可能性を完全には否定できないため、結果をそのまま受け入れるのは時期尚早である。


**推奨事項:**


- **再検査の実施:** ガラ・エリオス中佐のアズリス・ポジティブ検査を再度実施することを強く推奨する。今回の結果が誤りである可能性を排除するため、異なる検体を使用し、より厳密な条件下で再検査を行うべきである。


- **扱いの保留:** 再検査が完了するまで、ガラ・エリオス中佐をアズリス・ポジティブとして扱わないことを推奨する。彼が陽性であるという前提に基づく決定は、現段階では適切でない。


この意見は、特別検査機構の全会一致で採択されたものであり、緊急かつ重要な対応が求められる。


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**署名:**

ライノ・マクグリン

月面科学技術省特別研究所特別検査機構責任者

兼 地球連合軍情報分析官 兼 生物学部門研究主任












### 二重検討報告書: ガラ・エリオス中佐のアズリス・ポジティブ検査結果に関する見解(補足意見として司令部に直接報告される)


**報告者:** サザハトリ・シオン医学博士(医系技官)

**依頼者:** 月面科学技術省特別研究所特別検査機構


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**概要:**

ライノ・マクグリン博士の依頼を受け、ガラ・エリオス中佐のアズリス・ポジティブ陽性結果に関する特別検査機構の報告書について、二重検討を行った。同機構の推論は一定の信憑性を有するものの、完全ではないことが判明した。特に、理論上考慮すべき追加の仮説が存在する。以下に、3つの主要な仮説を提示する。


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**1. 仮説①:**

**検体のすり替えの可能性**


**説明:**

これは特別検査機構でも言及された仮説であり、ガニメデからの検体移送中、もしくは検査施設内で工作員によってサンプルがすり替えられた可能性である。検体は厳重に管理されたとはいえ、サナト・アズリスや海王星連合の高度な技術を用いれば、すり替えが不可能とは言い切れない。特に、移送中に起こり得る不測の事態により、工作員が介入する余地があった可能性は残されている。


**評価:**

検体移送に関するセキュリティプロトコルの厳重さから、この仮説の可能性は低いが、完全には排除できない。再検査を強く推奨する理由の一つである。


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**2. 仮説②:**

**身柄のすり替えの可能性**


**説明:**

ロマノフ基地攻略中、ガラ・エリオス中佐が海王星連合軍によって拉致され、現在ガニメデ国立病院にいるのは海王星連合が用意した替え玉である可能性。この場合、昏睡状態の人物は本物のガラではなく、海王星連合のエージェントである可能性がある。このシナリオにおいて、替え玉はアズリス・ポジティブであると説明できる。


**評価:**

この仮説は一見して非現実的に思えるが、戦場における混乱や、サナト・アズリスが関与している可能性を考えると完全に無視はできない。ガラ・エリオス中佐の過去の行動と照らし合わせると、替え玉がここまで完璧に役割を演じることは困難であると考えられるが、同時に、現状の昏睡状態が替え玉の正体を隠すための一環である可能性も否定できない。


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**3. 仮説③:**

**アズリス・ポジティブ仮説の誤り**


**説明:**

そもそも、アズリス・ポジティブの人物がサナト・アズリスからの洗脳を受けやすいという仮説自体に誤りがある可能性がある。アズリス・ポジティブは洗脳の必要条件に過ぎず、他の因子との相互作用が決定的な役割を果たしているか、あるいは、洗脳に関連する全く別のメカニズムが存在するかもしれない。たとえば、交差反応や連鎖不平衡のような現象が、誤解を招いている可能性がある。


**評価:**

この仮説は、現在の科学的理解に対する根本的な挑戦を含むため、慎重に検討する必要がある。しかし、ガラ・エリオス中佐のようにアズリス・ポジティブでありながら、サナト・アズリスの干渉を受けていないと見える事例は、この仮説を支持する証拠と考えられる。これまでの仮説が誤りであった場合、地球連合の防衛戦略に重大な見直しが必要となるだろう。


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**結論と推奨事項:**


**結論:**

特別検査機構の推論は妥当であるが、これらの追加仮説を考慮しなければ、完全な理解には至らない。特に、ガラ・エリオス中佐がアズリス・ポジティブであるという結果に対しては、さらなる慎重な検討が求められる。


**推奨事項:**


1. **身元確認:** ガラ・エリオス中佐の身元が本物であるかを確認するため、詳細なバイオメトリクス検査と過去の医療記録との照合を行うこと。


2. **再検査の実施:** 検体の再検査を別の機関でも行い、異なる検体や方法を用いることで、結果の正確性を確認する。


3. **仮説③の検証:** アズリス・ポジティブ仮説の再評価と、その基礎となる科学的根拠の再検討を行い、地球連合全体の防衛戦略を見直す可能性を考慮する。


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**署名:**

サザハトリ・シオン医学博士

月面科学技術省特別研究所医系技官












### 追加報告: ガラ・エリオス中佐のアズリス・ポジティブ検査結果に関する第四の可能性について


**報告者:** サザハトリ・シオン医学博士(医系技官)

**依頼者:** 月面科学技術省特別研究所特別検査機構


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**1. 背景と経緯:**


ガラ・エリオス中佐のアズリス・ポジティブ陽性結果に関して、既に三つの主要な仮説を提示しましたが、追加の可能性についても考慮すべきであると判断しました。報告書提出後に検討を重ねた結果、蓋然性は低いものの、極めて重要な第四の仮説を提案いたします。


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**2. 仮説④:**

**ガラ・エリオス中佐の生物学的特性による防御の可能性**


**説明:**

仮説①~③がすべて否定されたと仮定します。アズリス・ポジティブの形質を持つ者が、サナト・アズリスからの洗脳を受けやすいという仮説が正しいとする前提のもとで、ガラ・エリオス中佐がアズリス・ポジティブでありながら、その影響を受けていない理由として、彼が何らかの、他の生物学的特性によって洗脳を防御している可能性が考えられます。


この仮説に基づくならば、ガラ・エリオス中佐の脳細胞サンプルにとどまらず、彼のジェノタイプ(遺伝子構造)やフェノタイプ(形質発現)についても、網羅的な検討を直ちに開始すべきです。彼の生物学的特性が、サナト・アズリスの干渉を防ぐ要因であるならば、それを解明することは極めて重要です。


**重要性:**

何故重要かというと、もしこの仮説が正しく、人工的にその形質を模倣する方法を見つけることが可能になれば、それはアズリス・ポジティブの人々をサナト・アズリスの影響から解放する手段が得られたということを意味するからです。これは、最終的な解決、サナト・アズリスからの完全な解放を意味します。もはや、アズリス・ポジティブの人々はサナト・アズリスに従わなくてよくなる。すると、地球連合の戦略に重大な影響を与える可能性があります。


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**3. 推奨事項:**


1. **網羅的な生物学的解析の実施:** 再検査が再び陽性であった場合、ガラ・エリオス中佐のジェノタイプやフェノタイプに関する詳細な研究を直ちに開始することを強く推奨します。特に、彼の遺伝子構造や、脳内での特異な化学反応を調査し、サナト・アズリスの干渉に対する耐性が確認されるかどうかを検討するべきです。


2. **生物学的特性の応用:** もしガラ・エリオス中佐に特異な生物学的防御メカニズムが存在する場合、その特性をアズリス・ポジティブの人々に適用するための研究を開始するべきです。これはサナト・アズリスの支配を打破するための最終的かつ決定的な手段となる可能性があります。


3. **並行した再検査:** 検体のすり替えや替え玉の可能性を依然として考慮しつつ、再検査を早急に実施し、その結果に応じて、上記の研究を直ちに開始するかどうかを判断することを推奨します。仮に陽性結果が再確認された場合、直ちに網羅的な解析を開始する必要があります。


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**結論:**

この第四の仮説は、蓋然性は低いものの、もしも正しければ、アズリス・ポジティブに対する最終的な解決策を見出すための重要な鍵となります。したがって、再検査の結果を待つことなく、予備的な準備を進めておくことを提案します。


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**署名:**

サザハトリ・シオン医学博士

月面科学技術省特別研究所医系技官










### 月面新聞: ガラ・エリオス中佐の回復を願う声、太陽系全域に広がる


地球連合の英雄、ガラ・エリオス中佐がタイタンのロマノフ基地攻略中に重傷を負い、現在ガニメデ国立病院で昏睡状態にある。これを受け、彼の回復を願う声がガニメデをはじめとする各地で高まっている。特に、ガラ中佐が決死の作戦で多くの人質の命を救った過去から、火星では彼への祈りがさらに強い広がりを見せている。


**火星におけるガラ・エリオス中佐の英雄的行動**


ガラ・エリオス中佐は海王星連合の陣地深部に単独で突入し、命がけで人質の一部を救出。これにより、彼は火星人の間で「火星の守護者」として広く敬愛されるようになった。


火星の都市ヴァルハラでは、中佐を名誉市民に迎え、市庁舎前に彼の勇敢さを称えるモニュメントが設置されている。市民たちは連日、モニュメント前に花を手向け、彼の一日も早い回復を祈っている。また、火星の首都オリュンポス・シティや、エリュシオン、パンドラといった主要都市でも、ガラ中佐の功績を讃える式典が相次いで開催されており、特にエリュシオンでは、彼を題材にしたアート作品が市内各所に展示され、市民の注目を集めている。


**ガニメデと月面での祈りの広がり**


ガニメデの市民も、ガラ・エリオス中佐に対して深い敬意を抱いている。特に彼が現在入院しているニューヘリオス市では夜ごとに市民たちが病院周辺に集まり、キャンドルを灯しながら彼の回復を祈る姿が見られる。病院前には「再び立ち上がれ」というスローガンが掲げられ、市民の連帯感が一層強まっている。


月面でも、ガラ中佐を応援する声が日増しに高まっている。特に月面の都市アルベドポリスでは、彼のために特別な祈りのイベントが連日開催されている。アルベドポリスは月面で最も洗練された都市の一つであり、人工光で美しく照らされたドーム型の街並みが広がっている。ここでは、ガラ中佐を象徴する赤い旗が街中に掲げられ、彼の回復を祈る市民たちが集まっている。また、月面の他の都市*クラビウス・センターやアスクレピオス市でも、彼のための募金活動が開始され、彼の回復を祈る声がさらに広がっている。


**太陽系全域に広がるガラ中佐への祈り**


このように、ガラ・エリオス中佐の回復を願う声は、ガニメデを中心に月、地球、火星へと広がり、太陽系全域に響き渡っている。彼が見せた勇気と献身が、多くの人々に希望を与え、今なお彼の回復を願う声が絶えることはない。ガラ・エリオス中佐の戦友たちもまた、彼の早期の回復と、再び戦場に立つ日を心から待ち望んでいる。

















### ジャーナル「危言覈論」曝露記事: 地球連合の闇に迫る


**地球連合の脳基質変化理論による迫害と暗殺の疑惑**


地球連合が新興宗教「ゼノ」およびその神体サナト・アズリスに親和的な者を「脳の基質的変化」によって見分けることができると主張し、その理論に基づき都合の悪い人物を隔離・排除、さらには暗殺しているとの衝撃的な疑惑が浮上している。この疑惑は、ライナーガンマ大学のライノ・マクグリン博士とリサ・マクグリン教授による研究に端を発しており、彼らが発表した論文を根拠としている。


### マクグリン博士と教授の論文: 取り下げられた真実


ライノ・マクグリン博士とリサ・マクグリン教授は、サナト・アズリスに親和的な人物には共通の脳や神経細胞における基質的変化があるという仮説を提唱し、その変化を「アズリス・ポジティブ」と呼称した。この研究は一度発表されたものの、研究倫理や信頼性の問題があったとして、後に取り下げられた。しかし、地球連合政府はこの仮説に従い、実際にパージを進めているとされる。


この一連の過程を曝露したのは、政府機関に所属し、脳機能の検査を実際に担当した経験を持つJ・M氏である。J・M氏は人道的な理由から、この政府の行為が容認できないと考え、内部情報を明らかにした。


### ラザラス・デント総長の追放


マクグリンらの仮説に真っ向から反論し、紙上で激しい論戦を繰り広げたジョン・ハドリー記念大学のラザラス・デント総長は、その後、地球連合政府から「認知機能の異常」を理由に総長職を引退させられた。デント総長の引退は、一部では強制的なものであり、彼の排除が政治的理由によるものだとする声もある。


ラザラス・デント元総長は、この件について次のようにコメントしている。


> 「私は、マクグリン博士と教授の仮説が科学的に十分な検証を経ていないと考えていました。彼らの研究には多くの不備があり、特に脳の構造変化がアズリス・ポジティブの原因と結びつくという主張には根拠が欠けていると感じていました。地球連合がこの未確認の仮説に基づいて人々を排除するというのは、極めて危険であり、倫理的に許されない行為です。私が総長職を引退させられたのは、政治的な圧力によるものであり、私は自らの信念を捨てるつもりはありません。」


### 労働党幹事長の自殺とその背後にある暗殺疑惑


さらに、地球の労働党幹事長トウ・バンエイの自殺にも疑念が残る。内部資料によれば、トウ幹事長はアズリス・ポジティブであることが確認された直後に自殺しており、その死は暗殺であった可能性が高い。特に、トウ幹事長の家族が遺書を受け取ったとされる直後に姿を消していることから、連合政府が家族もろとも口封じを図ったのではないかという憶測が広がっている。


### 地球連合政府の真の目的とは


地球連合政府が、取り下げられた論文に基づいて一連の排除を行っているとすれば、その背景には何があるのか。この一連の動きは、ゼノやサナト・アズリスの影響を抑え込むための正当な措置なのか、それとも政府が都合の悪い人物を排除するための口実に過ぎないのか。


この記事の曝露によって、地球連合政府に対する疑念と不信感はさらに深まることだろう。私たちは今、政府が掲げる「脳の基質的変化」という理論が果たして真実なのか、それとも陰謀の一部なのかを見極めるための重要な局面に立たされている。











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**地球憲章第10条**

**すべての人類は、法に定める正当な手続きによらずして、その生命、自由、または財産を奪われることなく、いかなる刑罰も科されない。**


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**火星憲法 前文(抜粋)**

**火星の市民は、その生命と自由において侵されることのない権利を有し、これらの権利は法の適正な手続きによってのみ制約され得るものとする。**


**火星憲法 第12条**

**火星上に生きるすべての者は、法に定める適正な手続きを経ずして、その生命、自由、または財産を奪われることはない。**


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**月面総督府統治基本法 第15条**

**すべての世界市民は、法に基づく正当な手続きを経ずして、その生命、自由、または基本的権利を侵害されることはない。**

*注釈: この条文は、月面総督府の支配下にある地域に在住する者に限らず、他の地球連合領域の市民にも適用される。適用時には条約の制約を受けるが、そもそも本条例に反する条約を、批准することは許されない。*


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**ガニメデ市民憲章第8条**

**ガニメデに居住するすべての人は、法の正当な手続きを経ずして、その自由および権利を奪われることはない。**

*注釈: 本規定は、ガニメデ市民に限らず、ガニメデ領域を訪れる者にも適用される。*


**タイタン基本法第10条**

**タイタンに在住する者およびその庇護下にある者は、法に基づかない処罰を受けることなく、その生命および自由が保障される。**


**エンケラドゥス自治法第14条**

**すべてのエンケラドゥスの住民は、法の適正な手続きを経ずして、その基本的権利および自由を侵されることなく、その生命と財産が保護される。**

*注釈: 本条文は、エンケラドゥスに居住する市民に加え、一時的に滞在する者にも適用される。*


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※その他入植地(木星衛星群、土星衛星群)にも同様の憲法・基本法あり。









### 大西洋新聞社説: 政府の恐怖政治を強く非難する


**政府の闇に迫る: サナト・アズリスをめぐる危険な仮説とその誤用**


地球連合政府が、脳の「基質的変化」という仮説に基づき、都合の悪い人物を隔離・排除し、暗殺まで行っているとの疑惑が広がっている。この一連の動きは、私たちがこれまで信じてきた民主主義の根幹を揺るがすものであり、政府の行動に対して強く非難せざるを得ない。


### 科学的根拠の欠如とその誤用


ライナーガンマ大学のライノ・マクグリン博士とリサ・マクグリン教授が提唱した「サナト・アズリスに親和的な人物には共通の脳や神経細胞における基質的変化がある」という仮説は、発表直後から多くの批判にさらされ、研究倫理や信頼性の問題から最終的に取り下げられた。しかし、地球連合政府はこの不完全な仮説に飛びつき、都合の悪い人物を次々と排除する口実として利用している。


科学的根拠の不確かさを無視し、あたかも絶対的な真実であるかのように扱う政府の姿勢は、極めて危険である。この仮説が持つ意味や影響力を過大に評価し、疑わしき者を一方的に断罪するという行為は、まさに恐怖政治の典型と言えるだろう。


### 人権侵害と民主主義の崩壊


政府の行動は、単に科学の誤用にとどまらず、人権侵害の域に達している。労働党幹事長トウ・バンエイの自殺、そしてその後の家族の失踪は、政府がいかにして反対者を抹殺し、恐怖で国民を支配しようとしているかを如実に示している。これまでにも、政府による疑わしいパージや暗殺の事例は後を絶たない。


たとえば、地球連合軍のベテラン指揮官であったオスカー・ランドール大将が、突然「健康上の理由」で引退を余儀なくされた件は、その背景に何らかの政治的圧力があったのではないかと疑われている。ランドール大将は、戦争の拡大に懐疑的な立場を取っており、彼の引退は、政府にとって都合の悪い人物を排除するための策略だった可能性がある。


さらに、地球全域で知られる反戦論者で俳優のマリア・デラロッサが突如として失踪した事件も、同様に政府による陰謀が絡んでいると噂されている。彼女は、公然と政府の戦争政策を批判していたが、姿を消す直前に「政府による監視を受けている」と親しい友人に漏らしていたという。これらの事件は、サナト・アズリスに対する脅威を口実に、政府が反対者を次々と排除していることを強く示唆している。


### 政府の責任と国民の権利


地球連合政府は、国民に対して説明責任を果たさなければならない。科学的に不確かな仮説に基づく人権侵害を即刻停止し、これまで行われた排除や暗殺の疑惑について徹底的な調査を行うべきである。政府は国民を守るための存在であり、国民を支配し、恐怖に陥れるための道具ではない。


また、私たち国民は、政府の行動を監視し、正義と自由のために声を上げ続ける責務がある。恐怖に屈してはいけない。民主主義の価値を守り抜くために、政府の不当な行為に対して毅然と立ち向かうべきである。


**大西洋新聞**は、政府の恐怖政治を強く非難し、国民の自由と人権を守るために断固として戦うことを宣言する。今こそ、真実を求め、正義を貫く時である。









### 宗教学者コラム: 宗教的信念は病ではない


**地球連合における宗教忌避の風潮に警鐘を鳴らす**


近年、海王星連合の残虐な行為が広く報じられる中で、彼らの中心にある新興宗教「ゼノ」や、その神体であるサナト・アズリスに対する忌避感が、宗教全般にまで広がりつつあります。この風潮は、宗教的信念そのものを誤解し、信仰を病気や異常とみなす危険な傾向を生んでいます。しかし、宗教的信念は決して病気ではなく、また、宗教全体を否定するような風潮は誤りです。


**海王星連合の行為と宗教の誤解**


まず明確にしておきたいのは、海王星連合の残虐性は、特定の宗教的信念が原因ではなく、むしろその教義の解釈や、それを権力の道具として利用している者たちの問題に起因しているということです。歴史を振り返れば、どの宗教においても、教義が誤解され、悪用された例が少なからず存在します。それは、その宗教が悪であるというよりも、人間が宗教をどのように扱うかに問題があるのです。


現在の地球連合では、海王星連合の行動に対する反発から、宗教全般に対する不信感が広まりつつあります。ある者は、信仰そのものが人々を危険な行動に導くと考え、宗教を病的なものとみなそうとしています。しかし、これは大きな誤りです。宗教は、長い歴史の中で、無数の人々にとって精神的な支えや、道徳的な指針となってきました。宗教的信念は、人々のアイデンティティやコミュニティの一部であり、それを無視したり否定したりすることは、社会の多様性を損なう行為です。


**信仰と精神の健康**


信仰は、多くの人々にとって精神的な健康を支える重要な要素であり、それを病気として扱うことは、信仰者に対する重大な侮辱です。宗教的信念は、人生の困難や不確実性に対処するための道具であり、多くの人々にとって、安心感や平穏をもたらすものです。実際、心理学や精神医学の分野でも、信仰が人間の精神的健康に寄与するという研究結果が数多く存在します。宗教が正しく理解され、実践される限り、それは個人の精神的な支えとなり、社会の安定にも寄与するのです。


海王星連合の行為に対する反発から、宗教そのものを否定し、信仰を病的とする風潮が広がるのは危険です。それは、人々の精神的な支えを奪い、社会の多様性を損なうだけでなく、信仰者を不当な差別の対象とすることにもつながりかねません。












**地球連合首脳部委員会議事録(極秘)**

**備考:**

本議事録の内容は、すべての情報公開規定の例外とし、地球連合の極秘事項として扱うことが事前に承認された。

**議題:** 昨今の報道について

**場所:** 地球連合本部、特別会議室

**出席者:**

- 地球連合事務総長

- 地球連合軍元帥

- 関係閣僚および特別任命委員

- 特別委員: ライノ・マクグリン(地球連合軍情報分析官兼生物学部門研究主任)

- 特別委員: Dr. リーザ・エバンス(コズミック神智学研究者)


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**議事録要旨:**

**地球連合事務総長:** 「まず、今回の議題について確認する。我々は、最近の報道に関する対応を議論する必要がある。特に、アズリス・ポジティブに関する情報が外部に漏れたことへの対策が急務だ。トウ・バンエイの暗殺や、他のアズリス・ポジティブの人物に対するパージが疑念を生む形となり、連合政府への信頼が揺らぎかねない状況だ。ライノ、まずは現状の分析を聞かせてくれ。」


**ライノ・マクグリン:** 「はい。現時点での最も大きな課題は、アズリス・ポジティブに関する情報がどこまで外部に漏れているか、そしてそれに対する国民の反応です。私たちが進めてきたパージの多くは、スパイ活動の疑惑に基づくものであり、内密に処理されてきました。しかし、最近の一連の報道により、アズリス・ポジティブが一部では存在自体が知られ始めており、政府に対する不信感が増しています。秘密の曝露者は短期間われわれのもとで働いていたもので、特定もできていますが、今干渉するのはまずいでしょう。なお、物証を持っていないことは断言できます」


**地球連合軍元帥:** 「問題は、これがどれほどの範囲に広がるかだ。仮に、アズリス・ポジティブが、正当性がはっきりしないままその単語のみ、広範に知られることになれば、我々がこれまで行ってきたパージの正当性が問われることになる。トウ・バンエイは確かにアズリス・ポジティブで、海王星連合のスパイであったが、その真実をどう伝えるかが今後の焦点だ。スパイなら暗殺してもいいという法は無い。」


**Dr. リーザ・エバンス:** 「根本的な問いは、アズリス・ポジティブを世論のうちでどのように位置づけるかという点です。彼らは生物学的にサナト・アズリスの影響を受けやすいが、それを公にすることで、人々の反感が宗教的信念にまで向かう危険性があります。そうなれば、宗教そのものに対する不信感が広まり、社会が分断される恐れもあります。」


**地球連合事務総長:** 「つまり、我々には二つの選択肢がある。①アズリス・ポジティブの存在を周知し、パージや暗殺を正当化する方向に舵を切るか、②あくまで秘密を保持し、これまで通りスパイ疑惑を表向きの理由にするかということだ。どちらにもリスクがある。ライノ・マクグリン博士、あなたの見解は?」


**ライノ・マクグリン:** 「私個人としては、①の選択肢を推奨します。長期的には、アズリス・ポジティブのリスクを正直に説明し、政府が取ってきた措置を正当化することが不可避だと思われます。たしかに一時的な反発は避けられませんが、情報が完全に隠しきれなくなった場合に比べれば、信頼回復の余地が残ります。」


**Dr. リーザ・エバンス:** 「ただし、その際には事務総長の引責は免れないでしょう。さらに、宗教全般に対する不信感が増すことで社会的不安定が増加する可能性も考慮すべきです。一方、②の方針では、今後のパージが困難になるでしょう。報道統制も困難を極め、アズリス・ポジティブの影響が政府内でさらに広がるリスクが生じます。」


**地球連合事務総長:**「私も内務大臣も、他の閣僚も、必要なら引責辞任は全くいとわないが、土星圏での失態もあった今、政府の安定性が欠けるのはまずい。」


**地球連合軍元帥:** 「秘密を保持し続けることには、確かにリスクがある。しかし、アズリス・ポジティブを公にすることで、我々自身が不安定化する可能性も大きい。特に軍内部の信頼性が揺らぐことは避けたい。もし②を選ぶなら、徹底的な情報管理と強力なメディア統制が必要になる。」


**地球連合事務総長:** 「現時点での結論としては、②の方針で進めるのが妥当と考えるが、いかがか?リスクを管理しつつ、必要な措置を講じる準備を進めたい。」


**厚生大臣:** 「同意します。ただし、内部での情報管理をより厳格にし、パージが難しい場合は、より慎重な方法で行うべきです。疑惑を持たせないための偽装も強化する必要があります。」


**情報通信大臣:** 「民間人やメディア関係者のアズリス・ポジティブが疑われるものに対しては、手が出しにくくなるでしょうな。フェイクニュースや厭戦報道などの海王星側のメディア戦略が活発化すると思われ、私はそのことが心配です。」


**地球連合事務総長:** 「では、②の方針で進めることとする。言うまでもないことだが、各員、内部監視を強化し、今後の対応についても引き続き報告をお願いする。皆、この方針で一致を図り、地球連合の安定を保つために最善を尽くすこと。」



**備考:** 本議事録の内容は、地球連合の極秘事項として厳重に管理されるものとする。












### ギャラクシーTVニュース: 人質のための停戦交渉署名活動が拡大中


火星や土星圏で海王星連合に人質として連れ去られた市民を家に帰すため、地球連合と海王星連合の間で停戦交渉を行おうという署名活動が、太陽系全域で広がりを見せています。この活動は、特に火星や土星の家族を中心に強い支持を受けており、数百万人の署名がすでに集まっています。


ギャラクシーTVの取材班は、街頭で市民の声を集めました。最も戦闘が激しいとされる木星の衛星エウロパの宙域や、土星の衛星タイタンの地上基地イワンについて、若い兵士の命を犠牲にしてまでこれらの拠点を取りに行く必要があるのか、という疑問が多くの市民の間で広がっています。


**街頭インタビュー:**


**インタビュー1: オリュンポス・シティの市民(女性、45歳)**

「もちろん、家族や友人が人質になっている人たちの気持ちは理解できます。誰だって、愛する人が無事に帰ってくることを望んでいる。でも、そのためにもっと多くの命を犠牲にすることが本当に正しいのでしょうか?エウロパやタイタンのような場所を奪還するために、若い兵士たちが犠牲になるのはあまりにも重すぎる代償です。停戦交渉で解決できるなら、それに越したことはありません。」


**インタビュー2: 火星、ヴァルハラの学生(男性、22歳)**

「僕の友達も今、タイタンに派遣されています。彼らが何のために戦っているのか、正直わからなくなってきました。人質を解放するための交渉ができるなら、そちらを優先すべきです。戦闘で命を落とすことが必ずしも解決には繋がらないと感じています。」


**インタビュー3: 地球、ニューヨークのビジネスマン(男性、38歳)**

「戦争は続けるべきじゃない。エウロパやタイタンでの戦闘は激化していて、連合の若い兵士たちが次々に命を落としている。人質のための停戦交渉が実現するなら、それを試みるべきだ。誰もが疲弊しているし、これ以上の無駄な犠牲は避けるべきだと思う。」


この署名活動は、戦闘が激化する中で、人々が平和的な解決策を模索する声が高まっていることを反映しています。特に、エウロパやタイタンといった戦場で若い兵士たちが命を懸けて戦っている現状に対し、その代償があまりにも大きいと感じる人々が増えているようです。これからの交渉の行方に、太陽系全域が注目しています。










### ティートーノスケーブルTVインタビュー: ガラ・エリオスに救出されたアルモンド・グラスと家族が語る


**インタビュアー:**

「アルモンドさん、まずはあなたが無事にここにいて、ご家族と再会できたことを心から嬉しく思います。今回のインタビューで、まず伺いたいのは、あなたが海王星連合に囚われていたときの状況についてです。特に、彼らがあなたに無理やり停戦を求めるメッセージを読ませたと聞いていますが、その時の心境を教えてください。」


**アルモンド・グラス:**

「ありがとうございます。囚われていた時、私は毎日が恐怖で、家に帰れないのではないかという不安に押しつぶされそうでした。彼らは私に拷問を加えながら、無理やり停戦を求めるメッセージを読ませ、それをビデオに撮影しました。あれほど屈辱的なことはありませんでした。自分の意思とは全く逆のことを言わされ、心の底から惨めな気持ちになりました。」


**インタビュアー:**

「それは本当に耐え難い経験だったことでしょう。現在、停戦交渉を求める声が広がっていますが、これについてはどう感じていますか?」


**アルモンド・グラス:**

「正直に言って、理解できません。今、民衆があのビデオで私が無理やり言わされたことを進んでやろうとしているなんて、考えられません。停戦交渉やテロリストとの妥協は、彼らの思う壺です。私たちはそんなことを望んでいませんし、屈するべきではありません。ガラ・エリオスが私を救い出してくれたのは、彼が勇気を持って戦ったからです。その勇気を無駄にするような行為は避けるべきです。」


**インタビュアー:**

「ご家族も、アルモンドさんが海王星連合から救出されたことに深く感謝されていると思います。ご家族として、この停戦交渉に対する意見をお聞かせいただけますか?」


**アルモンドの父親:**

「私たちは、アルモンドが無事に戻ってきてくれたことに感謝しています。しかし、同時に、彼女が経験した苦しみを考えると、敵に屈するような行為は許せません。停戦交渉は彼らの思う壺です。私たちは家族を守るために戦い続けるべきです。」










### 週刊誌フロンティア: ジャック・ヒーリング大佐、厭戦ムードに苛立ち


ロマノフ基地攻略戦でガラ・エリオスとともに戦ったことで知られるジャック・ヒーリング大佐が、急速に広がる厭戦ムードに対する突撃インタビューを受け、強い不快感をあらわにしました。彼は、メディアがその風潮を煽っているとして激しく批判しました。


**インタビュー内容:**

ジャック・ヒーリング大佐は、これまでも強気で粗野な発言で知られていましたが、今回のインタビューではその特徴が一層際立ちました。


**記者:**

「大佐、現在広がっている停戦を求める声や、厭戦ムードについてどうお考えですか?」


**ジャック・ヒーリング大佐:**

「まったくもって不愉快極まりないことだ!こんな馬鹿げた厭戦ムードが広がるのは、新聞やメディアのせいだ!せっかく勝てそうになってきた戦いなのに、彼らが根拠もなく恐怖を煽り、敵に塩を送っているんだ。メディアは本来、真実を報じるべきだが、今はただの戦意を削ぐ道具になっている!」


ヒーリング大佐は、メディアが敵に有利になるような報道をしていると主張し、その責任を強く非難しました。


**ジャック・ヒーリング大佐:**

「我々は戦争の真っ只中にいるんだ。海王星連合があと少しで地球を滅ぼすところだったのを忘れたのか!?少しでも気を抜けば、やつらはあの局面まで押し返してくるんだ。そうなってから、泣いて誤ったって遅い。海王星連合が火星に住む人たちに何をして、どんな残酷なメッセージを送ってきたか、本当に忘れたのか!?命をかけて戦っている兵士たちに、背を向けるような報道をするメディアは、星々を危険に晒しているんだよ。勝つためには我々が強くなければならない。メディアが今すぐその態度を改めない限り、我々の戦いは厳しくなるばかりだ!それで余計に人が死ぬ!しかも無意味にだ」


ヒーリング大佐の発言は、厭戦ムードに対する苛立ちと、それを煽るメディアへの強い怒りを示すものでした。彼の発言は賛否両論を呼びそうです。









### 内務大臣サグィト・アルゴーの記者会見

**場所:** 地球連合本部、記者会見室


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**サグィト・アルゴー内務大臣:**

「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。最近、地球連合内で一部報道や噂が広がっていることについて、私から公式な見解をお伝えいたします。


まず、労働党幹事長トウ・バンエイ氏の自殺や、その他の政府高官の引退に関する一連の疑惑についてですが、これらの事案に関して、政府として徹底的に調査を行い、あらゆる事実を確認いたしました。その結果、トウ氏の自殺は極めて個人的な事情によるものであり、政府による暗殺や不正な圧力が関与したという証拠は一切見つかっておりません。彼の家族が姿を消した件についても、これまでのところ、犯罪性は確認されておらず、現在も調査を継続しています。


また、報道によって広まったアズリス・ポジティブと呼ばれる概念についても、根拠のない憶測であることを強調しておきます。地球連合は、いかなる市民や公務員に対しても、宗教や信念に基づいて不当な扱いを行うことは決してありません。過去に行われた政府内の人事においても、スパイ活動の疑惑や職務遂行能力に基づいて決定が下されたものであり、これらの決定はすべて適正かつ公正な手続きによるものであったことを、改めて明言いたします。


ジョン・ハドリー記念大学のラザラス・デント元総長についても、彼の引退は本人の健康上の理由によるものであり、政治的圧力や不正な操作が行われた事実はありません。この件についても、報道による事実無根の憶測が多く、我々としては誠に遺憾に思っています。


地球連合政府は、国民の安全と自由を守るために全力を尽くしており、不当な情報に惑わされることなく、正しい情報を基に行動していただきたいと強く願っています。今後も透明性をもって政府運営に努めてまいりますので、どうか国民の皆様には、冷静かつ公正な目で事態を見守っていただきたく存じます。


最後に、地球連合は、市民一人一人の信頼を得ることが我々の最も重要な使命であると考えています。このような疑惑が生じたことを真摯に受け止め、引き続き国民の皆様とともに、強く安定した連合を築いていくことをお約束します。」


**記者:** 「太平洋新聞のマナト・クァリア特派員です。内務大臣、アズリス・ポジティブに関する具体的な質問にお答えいただけますか? 報道によると、一部ではアズリス・ポジティブの存在が実際に確認されているという情報もありますが、政府はこれをどのように捉えているのでしょうか?」


**サグィト・アルゴー内務大臣:**

「アズリス・ポジティブに関する報道は、根拠のない都市伝説の域を出ません。政府としては、そのような存在が確認されたという事実は一切ありませんし、報道にあるような基質的な変化を検出する技術や理論も存在しておりません。これは、誤った情報が広がった結果に過ぎないと理解しています。


繰り返しになりますが、地球連合はすべての市民の権利と自由を守ることを最優先にしています。政府内部の人事や対応についても、今後も適切かつ公正な手続きに基づいて行われることをお約束します。どうか、冷静な判断で真実を見極めていただきたいと願います。」


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**会見終了**













### オリオンプレス: 戦場記者ゼット・デュー・シムラの署名記事


**タイタンの真実: イワン基地の地上に見る宗教ゼラの「優しさ」**


**署名:** ゼット・デュー・シムラ(戦場記者)


私は、地球連合軍の攻撃が激化する中、タイタンの地上基地イワン周辺まで足を運び、その実情を取材してきた。イワン基地は、地表部分に目を向けると、一般に伝えられているような軍事要塞とは異なる姿をしている。そこにあるのは、海王星連合が民間人のために設立した学校と病院だ。


**民間人のための施設が狙われる現実**


私がイワン基地を訪れた際、目にしたのは、粗末な一時避難施設から、住環境の整った基地周辺に続々と人々が輸送されてくる光景だった。これらの人々は、戦火により家を失い、避難先もままならない状況にあった。彼らが目指しているのは、イワン基地の提供する安定した生活基盤だ。海王星連合がこの地に建設した学校や病院は、戦禍に苦しむ人々にとって、まさに命綱となっている。


にもかかわらず、地球連合軍は、これらの民間人が依存している施設を攻撃対象とするのか? イワン基地が軍事的に利用されている可能性があるにせよ、その地上部分にある施設が果たして攻撃の正当な対象といえるのかについては、大いに疑問が残る。


**宗教ゼラの「優しさ」**


私たちは、海王星連合とその支配する宗教ゼラを、すべて悪として一括りにする傾向がある。しかし、現地で見た光景は、それとは違う側面を示していた。ゼラそのものが悪いわけではなく、むしろ、ゼラには「優しさ」があると感じざるを得なかった。


イワンの学校では、宗教ゼラに基づいた教育が行われている。だが、それは宗教的洗脳ではなく、子どもたちが戦争や憎しみに耐え、希望を持ち続けるための支えとしての役割を果たしていた。病院でも、医療スタッフが宗教ゼラの理念に基づき、苦しむ人々に尽力している姿があった。彼らの行動は、宗教に基づく奉仕の精神そのものであり、戦争の恐怖と破壊の中で、一筋の光となっている。


**この現実にどう向き合うべきか**


もちろん、海王星連合の指導層が行っている戦争行為を擁護するつもりはない。しかし、イワン基地に見られるような、宗教ゼラが提供する優しさや支援を無視することは、果たして正しいのだろうか? 戦争がもたらす残酷さの中で、彼らが示す「人道的な側面」に目を向けることもまた、我々の責任ではないだろうか。


戦争は、しばしばすべてを善悪で分けようとする。しかし、現実はそれほど単純ではない。宗教ゼラを含め、人々がどのように生き抜こうとしているか、何を信じ、何を大切にしているのかを理解することが、平和への道を探る手がかりになるのではないかと、私は強く感じた。












### 海王星連合プロパガンダメディア「マルティプライ通信」: イワン基地からの中継


**中継レポート: イワン基地地表部分の病院から**


ここタイタン、イワン基地の病院から中継でお伝えします。戦争の悲惨な現実が、いまこの瞬間も続いています。私たちが目撃しているのは、地球連合の対地攻撃によって傷ついた兵士たち、そして無辜の子どもたちが次々と病院に運び込まれる痛ましい光景です。


**戦争の犠牲者たち**


この病院は、負傷した兵士たちのための医療施設であると同時に、地球連合の無差別な攻撃に巻き込まれた無数の民間人の命を守る最後の砦でもあります。特に、私たちが心を痛めるのは、無力な子どもたちが地球連合の攻撃で重傷を負い、痛みに耐えながら運ばれてくる姿です。彼らの多くは避難する術を持たず、この病院が唯一の命綱となっています。


**飢餓と疫病が広がる現実**


戦場の外では、さらなる悲劇が進行中です。戦闘の激化に伴い、民間人の生活は極限の状態に追い込まれています。避難民たちはこの基地周辺に押し寄せていますが、その多くが飢餓や疫病に苦しんでいます。食料や医薬品が不足する中、基地の医療スタッフは限られた資源で必死に治療を続けていますが、全員を救うにはあまりにも力不足です。


**人道的危機への訴え**


この中継を通じて、我々は地球連合の市民、そして世界中の人々に訴えかけます。ここイワン基地で目の当たりにしているのは、戦争がもたらす無意味な苦しみと、無辜の民間人が受ける不当な被害です。地球連合が続ける対地攻撃は、軍事目標にとどまらず、罪のない市民や子どもたちの命を脅かしています。


今こそ、国際社会はこの状況に対して声を上げるべきです。戦争の犠牲者に人道的支援を提供し、この無益な破壊を止めるために行動することが求められています。我々、海王星連合はこの悲劇を記録し、歴史に刻むとともに、すべての戦争犠牲者に対する正義を訴え続けます。


この中継が、地球連合の市民に真実を伝え、平和への第一歩となることを願ってやみません。










### ギャラクシーTV: ジャック・ヒーリング大佐のリモート出演


**出演:** ジャック・ヒーリング大佐(土星前線からリモート参加)


**司会者:** 「ヒーリング大佐、イワン基地で民間人が巻き込まれていることについて、どうお考えでしょうか?」


**ジャック・ヒーリング大佐:**

「まず最初に言っておくが、奴らが『民間人』と言っているのは、もともとタイタンに住んでいた人々で、海王星連合が自ら拉致した人質たちのことだ。奴らはタイタンの住民たちの大半を虐殺し、残った一部、特に女性や子供たちを人質として使おうと考え、生かしていたに過ぎない。イワン基地にいる子どもたちは、本来なら平穏な生活を送っていたはずの入植者の子どもたちだったんだ。それを奴らが踏み荒らし、住民たちを虐殺し、残虐な手段で生かしているだけだ。我々も、そのような人々を救出しているが、女子供であっても例外なく酷い拷問を受けていた。」


(ヒーリング大佐の語気が荒くなる)


「戦場記者だと言うなら、あの『学校』とやらに縛り付けられ、念仏のような教義を聞かされながら、人間の盾として使われている子どもたちに一言でもインタビューしてみろ!彼らはきっと、『助けてくれ、ここから出してくれ、家に帰りたい』と叫ぶだろうよ!我々が直面しているのは、単なる戦争ではない。これは無実の人々を残虐に扱い、利用する者たちとの戦いなんだ。私たちは、そのような人々を救い出すために戦っている。そして、それが私たちがこの戦争で負うべき使命だと信じている。」











### 太陽系経済新聞: 戦争の影響による経済動向の分析


**昨今の戦争の状況に伴う経済の動向: 株式、国債、貴金属市場の変動**


現在、太陽系全域で続いている地球連合と海王星連合の戦争が、経済に大きな影響を及ぼしています。戦争が長期化する中で、特に株式市場や国債市場、保険業界、貴金属市場における動向は、刻一刻と変化しています。ここでは、最近の戦争状況を踏まえた経済動向について詳しく分析します。


### 株式市場の変動


戦争の不確実性が増す中で、主要企業の株価は乱高下しています。特に軍需関連企業や防衛産業に関連する株式は、需要の増加とともに上昇傾向にあります。火星の大手軍需企業「マーズ・アーマメンツ」は、軍備強化の需要により株価が急上昇しており、地球連合内での投資家からの関心が高まっています。


一方で、消費財や娯楽関連の企業株は軟調です。戦争の長期化に伴う消費低迷が予想されており、投資家はこれらのセクターから撤退する動きを見せています。また、貿易が停滞している木星圏や土星圏に関連する企業の株価は下落傾向にあります。


### 国債市場の動向


戦争により地球連合政府は財政的な負担を増大させており、国債の発行が急増しています。これにより国債市場は活況を呈していますが、リスク回避の動きも見られます。特に、短期国債の需要が高まり、利回りは低下しています。一方、長期国債はリスクが高いと見なされ、利回りが上昇している状況です。


また、海王星連合が発行する債券は事実上のデフォルトリスクを抱えており、ほとんど取引されていません。天王星圏の経済も不安定化しており、関連国債の信用度は著しく低下しています。


### 貴金属市場: プラチナの動向


戦争の影響で、貴金属市場は変動が激しい状況です。特にプラチナの価格は、工業需要と投資需要の両面から注目を集めています。プラチナは軍事技術やハイテク産業で重要な役割を果たしており、供給が不安定になるとの懸念から価格が上昇しています。


木星圏や土星圏でのプラチナ採掘活動は戦争の影響で停滞しており、供給不足が懸念されています。これにより、地球や火星におけるプラチナの価格は高騰しています。


### 保険業界の対応


保険業界もまた、戦争リスクの増大に対応を迫られています。特に戦闘地域での財産や生命保険の引き受けは、保険料の大幅な上昇を招いています。また、宇宙船や宇宙ステーションに対する保険もリスクが高まっており、保険会社は新規契約の引き受けに慎重になっています。


さらに、戦争による被害補償の請求が急増しており、保険業界全体での支払い能力に不安が広がっています。これにより、大手保険会社は資本増強を図る一方で、リスクの高い地域への新規参入を避ける動きを見せています。


### 木星圏や土星圏の経済価値の再評価


現在の戦争状況において、木星圏や土星圏の領地の経済的価値が再評価されています。海王星や天王星との貿易が実質的に停止しているため、これらの領地がもたらす経済的利益は減少しています。特に、木星圏や土星圏の鉱業や農業資源は、太陽系内の他地域との貿易が遮断されているため、現在のところ経済的な価値は限られたものとなっています。


これにより、木星圏や土星圏に対する投資は冷え込み、経済活動は停滞気味です。今後、戦争が長引くにつれて、これらの領地が戦略的には重要であるものの、経済的にはさほど利益をもたらさない地域とみなされる可能性が高まっています。


### 結論


戦争の影響で、太陽系全域の経済は深刻な混乱に直面しています。株式市場、国債市場、保険業界、そして貴金属市場はそれぞれ大きな変動を見せており、今後の戦争の展開によってさらに影響を受けることが予想されます。特に、木星圏や土星圏の経済的価値が低下している現状では、地球連合は戦略的な資源の確保と経済活動の再構築に向けた新たなアプローチが求められています。









### 海王星連合からの返答


**件名:** 非公式な停戦交渉の申し入れに対する返答


**送信元:** 海王星連合中央評議会

**宛先:** 地球連合政府


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地球連合政府からの非公式な停戦交渉の申し入れを受け、海王星連合中央評議会としての立場を以下に示します。


我々は、民間人を攻撃対象とするような非人道的な行為を行う相手との交渉には、一切応じることはできません。地球連合が行ったイワン地上基地への攻撃は、無防備な民間人を標的としたものであり、これにより無数の無実の命が奪われ、さらに多くの市民が苦しんでいます。


我々が求めるのは明確です。いかなる交渉も、まずはイワン地上基地への攻撃を即時停止することが前提となります。地球連合が本当に和平を望むのであれば、まずこの要求に応えることが不可欠です。それがなされない限り、いかなる停戦交渉も成立し得ません。


民間人の安全と尊厳を守るため、我々は引き続き戦い続ける覚悟です。地球連合が今後の行動を慎重に考慮し、民間人を巻き込む暴力を即刻停止することを強く求めます。


海王星連合中央評議会は、これが地球連合との間における真の和平への第一歩となることを望んでいます。しかし、それは貴国の行動にかかっています。


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**署名:**

海王星連合中央評議会









### 大西洋新聞: 海王星連合の極秘返答が明らかに

**非公式な停戦交渉に対する海王星連合の厳しい返答が漏洩**


地球連合が水面下で進めていた非公式な停戦交渉に対する海王星連合の返答が、我々の取材によって明らかになった。この極秘のやり取りは、地球連合が提案した停戦交渉に対して、海王星連合が一蹴した内容となっている。


### 民間人攻撃を理由に交渉拒否


情報筋によると、海王星連合は地球連合の提案を拒否し、その理由として「民間人を攻撃対象とする相手とはいかなる交渉も成立しない」と明言している。海王星連合は、特にタイタンのイワン地上基地への攻撃を非難しており、無防備な民間人が巻き込まれている現状を強く問題視しているとのことだ。


さらに、海王星連合は交渉の前提として、イワン基地への攻撃を即時停止するよう地球連合に要求している。これに応じない限り、いかなる停戦交渉も成立しないと明言した海王星連合の姿勢は、これまで以上に厳しいものとなっている。


### 和平への道は遠いか


この返答は、地球連合にとって厳しい打撃となるだろう。停戦を模索する動きがある一方で、戦争の激化が続く中、民間人の被害がさらに広がることが懸念される。海王星連合の厳しい姿勢から、和平交渉への道のりは依然として険しいものであることが浮き彫りとなった。


### 情報漏洩の波紋


今回の情報漏洩が引き起こす波紋は、地球連合内部にも及ぶだろう。非公式な交渉の存在とその失敗が明るみに出たことで、政府内部や国民の間で議論が巻き起こることは避けられない。特に、民間人への攻撃を巡る道徳的・戦略的な正当性が改めて問われることになるだろう。


この件に関して地球連合政府は、公式なコメントを出していないが、今後の対応が注目される。和平への道はさらに遠のいたように見えるが、戦争が続く限り、交渉の機会はまた訪れるかもしれない。果たして地球連合は、民間人の命を守りながら、どのようにしてこの危機を乗り越えるのだろうか。今後の展開に注目が集まっている。









### 地球国営通信WEB記事: 地球連合軍広報官が大西洋新聞の記事を批判


**地球連合軍広報官、海王星連合の「民間人保護」主張を一蹴**

地球連合軍の広報官は、最近報じられた大西洋新聞の記事に対し、厳しく反論し、その内容が「完全に公平な目線を欠いたもの」であると名指しで指摘しました。広報官は、海王星連合が主張する「民間人保護」の裏に隠された事実を明らかにし、地球連合軍の立場を弁護しました。


### 海王星連合の「民間人」は事実上の人質

広報官は、海王星連合が「民間人」と呼んでいる者たちの多くが、実際には事実上の人質であることを強調しました。これらの人々は、海王星連合がタイタンに侵攻し、元々そこに住んでいた無辜の人々を拉致し、その後も過酷な環境下に置いているとしています。広報官は、こうした人々が意図的に「民間人」として扱われ、戦争のプロパガンダに利用されていると批判しました。


### イワン基地の「学校」や「病院」はハリボテ

さらに、広報官は、海王星連合が土星圏で追い詰められてから急遽イワン基地の地上部に建設した「学校」や「病院」が、実際には「ハリボテ同然」のものであると述べました。これらの施設は、戦争の正当性を主張するために建てられたものであり、本質的には人道的な役割を果たしていないと主張しました。


また、広報官によれば、これらの施設には、別の収容施設からわざわざ人員が送り込まれており、これは海王星連合が意図的に民間人を巻き込んでいる証拠だと指摘しました。広報官は、「地球連合軍が民間人を犠牲にしているという主張は事実に反しており、むしろ海王星連合が民間人を戦争の道具として利用している」と強調しました。


地球連合軍の広報官は、報道の公平性と正確性を重視し、今回の大西洋新聞の記事が事実を歪め、地球連合軍の正当な戦闘行為を不当に批判していると訴えました。広報官は、国民に対して冷静に事実を見極めるよう呼びかけ、地球連合が民間人の保護に努める一方で、海王星連合による民間人の利用を許さない姿勢を強調しました。












### オリオンプレス: 戦場記者ゼット・デュー・シムラの署名記事


**イワン基地の病院はハリボテではない: 地球連合軍広報官のコメントに反論**


私は、タイタンのイワン基地にある病院を実際に取材し、地球連合軍広報官が「ハリボテ」と呼んだその実態を自分の目で確認してきた。現地で見たものは、プロパガンダのために急ごしらえで建てられた偽物ではなく、戦火に苦しむ多くの人々にとって唯一の命綱となっている医療施設だった。


### 現場で見た病院の実態


イワン基地の病院では、傷ついた兵士だけでなく、地球連合の攻撃によって負傷した子どもたちや、飢餓と病気に苦しむ民間人が次々と運ばれてくる様子を目撃した。医療スタッフは限られた物資と人員で必死に治療を行っており、彼らが提供する医療は決して「ハリボテ」などではない。病院内部は混雑しているものの、機能している手術室、治療室、そして回復室があり、患者たちの命を救うために昼夜を問わず活動が続いていた。


私が取材した医師の一人は、「ここにいるのは全員、本当に助けが必要な人々です。どんなに難しい状況でも、私たちはできる限りの治療を施し、彼らを救おうとしています」と語っていた。彼らの姿からは、決して単なる見せかけでない、真剣な医療活動が行われていることがうかがえた。


### ハリボテという誤解


地球連合軍広報官が、イワン基地の病院を「ハリボテ同然」と断じたことは、現実を無視した発言だと言わざるを得ない。確かに、この病院は戦火の中で急ごしらえで設置されたものであり、最新設備が整っているわけではない。しかし、それは現場の実態とはかけ離れた評価であり、そこに集まる人々が求めるのは、プロパガンダのための施設ではなく、切実に必要とされる医療なのだ。


私は、地球連合の市民や読者の皆様に、現地で見た真実を知っていただきたい。イワン基地の病院は、戦争の悲劇に翻弄される人々にとって、命をつなぐ最後の希望である。広報官が主張するような「ハリボテ」の医療施設ではないということを、強く訴えたい。


### 民間人の命を軽んじる発言への懸念


広報官のコメントは、民間人が戦争の犠牲となっている現実を軽んじていると感じざるを得ない。戦争の中で、どちらの側に立つかはともかく、命を救うために奮闘している人々の努力を「ハリボテ」と断じることは、医療従事者や患者たちの尊厳をも踏みにじるものである。


この戦争が続く限り、無数の命が危険にさらされ続ける。しかし、現場にいる人々は、その中でも希望を見出し、懸命に生きようとしている。私は、この病院での取材を通じて、彼らの声を届け、広報官の発言がいかに現実とかけ離れているかを証明したい。


### 結論


イワン基地の病院は、見せかけの施設ではなく、実際に多くの命を救おうとする医療の現場である。地球連合軍広報官の「ハリボテ」発言は、現場の実態を無視したものであり、戦争に巻き込まれた無実の民間人に対する配慮を欠いている。この病院で目撃した真実を通じて、読者の皆様に現実を伝えることができればと強く願っている。










### ギャラクシーTV討論番組: 戦場記者ゼット・デュー・シムラ vs. ジャック・ヒーリング大佐


**テーマ:** タイタンのイワン基地における戦争の現実と報道の正当性


**ゲスト:**

- ゼット・デュー・シムラ(戦場記者、オリオンプレス)

- ジャック・ヒーリング大佐(土星前線からリモート出演)


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**司会者:** 「本日は、タイタンのイワン基地を巡る現状について、二人のゲストにリモートで討論していただきます。オリオンプレスの戦場記者ゼット・デュー・シムラさん、そして地球連合軍のジャック・ヒーリング大佐です。まずはゼットさん、現地の取材をもとに、イワン基地の病院についてお聞かせください。」


**ゼット・デュー・シムラ:** 「ありがとうございます。私は実際にイワン基地を訪れ、地球連合軍が『ハリボテ』と称した病院を取材しました。現地で目にしたのは、戦争の中で苦しむ人々が必死に生き延びようとしている姿です。病院には、傷ついた子どもたちや民間人が治療を受けており、そこにはプロパガンダではなく、真剣に命を救おうとする医療活動が行われていました。私が見た限り、この施設を『ハリボテ』と呼ぶのは、現実を無視した発言だと思います。」


**ジャック・ヒーリング大佐:** (やや荒々しく)「ゼットさん、飢餓と疫病がまん延している? そりゃそうだ、海王星連合が人質にまともな食事も与えず、奴らを使って人体実験をしているからだ。あの病院がハリボテかどうかなんて問題じゃない。重要なのは、そこにいる人たちがどうやってそこに来たかってことだ。」


**ゼット・デュー・シムラ:** 「大佐、確かに、海王星連合が行っていることには非道な面があることは理解します。しかし、だからこそ、そのような状況に追い込まれた人々の現実を見つめる必要があるのではないでしょうか? 彼らを支える医療活動を無視することはできません。」


**ジャック・ヒーリング大佐:** 「無視だと? ゼットさん、ロマノフ基地で俺たちが救出した人々を見たことがあるのか? 彼らは地獄のような体験をしてきたんだ。多くはその恐怖を語りたがらないが、それでも勇気を持って証言してくれた者もいる。ある元記者の女性は、無理やり娼婦として働かされ、しかも『採点』されて、点数が低い者から順に毎月殺されていたと証言したんだぞ! そんな連中がやってる『病院』や『学校』が何だって? 俺たちは、そんな連中の口車に乗せられるわけにはいかないんだ。」


**ゼット・デュー・シムラ:** 「大佐、その話を聞くと胸が痛みます。海王星連合が行っている残虐な行為に対して、強く非難する必要があることは間違いありません。しかし、現地で苦しんでいる民間人の命を守るために、どのように対処すべきかについても考えるべきだと思います。戦争には道徳的な判断が常に必要です。」


**ジャック・ヒーリング大佐:** 「道徳? 戦場にそんなものがあると思うか? 我々は現実と戦っているんだ。奴らが民間人を盾にしている限り、私たちができることは限られている。それでも俺たちは、できる限りのことをして民間人を救おうとしているんだが、敵のやり方があまりにも汚いんだ。」


**ゼット・デュー・シムラ:** 「戦場の現実が厳しいことは承知しています。しかし、私たち報道陣の使命は、その現実をできるだけ正確に伝えることです。誰が悪いのかを決めるのではなく、そこで苦しむ人々の声を世界に届けることが、私たちの役割だと考えています。」


**ジャック・ヒーリング大佐:** 「まあ、ゼットさん、あなたがどう考えようが自由だが、現場で何が起きているか、どんなに残酷なことが行われているか、あなたは本当に理解しているのか? 我々が戦っているのは単なる敵軍じゃない。俺たちは、無実の命を救うために戦っているんだ。それを忘れないでくれ。」


**司会者:** 「お二人とも、非常に熱のこもった議論をありがとうございます。ですが、もう少し具体的な点についてもお聞きしたいと思います。ゼットさん、イワン基地の学校についても取材されていますが、その施設についてはどのようにご覧になっていますか?」


**ゼット・デュー・シムラ:** 「ありがとうございます。私はイワン基地に設置された学校も取材しました。確かに施設は簡素で、急ごしらえで建てられたものであることは否定しませんが、そこには実際に子どもたちが通っており、教師たちが教育活動を行っていました。彼らが教えているのは、読み書きや基本的な学問です。子どもたちは戦火の中でも学ぶ意欲を持ち続けていて、その姿に私は強い感銘を受けました。この学校をプロパガンダの道具だと一蹴するのは、あまりに現実を軽視していると思います。」


**ジャック・ヒーリング大佐:** (やや粗野で激しい口調で)「ゼットさん、あんたが何を見たかは知らないが、その子どもたちが通う学校の『現実』をわかってるのか? 子どもたちの親は大抵、奴らに殺されてるんだ。下手すりゃ、教師を名乗ってる奴自身が殺してる可能性だってあるんだぞ。そいつらは生き残った子どもたちを、『教育』と称して洗脳し、少年兵に仕立て上げるつもりなんだ。やつらは、子どもたちが育ったら爆弾を括り付けて突撃させるに違いない!」


**ゼット・デュー・シムラ:** 「大佐、それは非常に深刻な主張ですね。しかし、私が取材した限りでは、そのような過激な訓練や洗脳は確認できませんでした。もちろん、戦時下での教育には政治的な影響があることは理解しますが、現地で見た子どもたちは、どこかに避難することもできず、ただ生き延びるために必死でした。彼らの未来を奪うことは避けるべきではないでしょうか?」


**ジャック・ヒーリング大佐:**(さらに激しい口調で)「避難する場所がないだって? 海王星連合が無条件降伏して土星の基地を手放せばいいだけのことだ。そうすれば親を奴らがまだ殺していなければ、俺たちは子どもたちを親のもとに返してあげられるんだ。奴らが人質を扱いかねているなら、いつだって俺たちのところに送り届け、返還すればいい。それだけの簡単なことをどうやったらわからないでいられるんだ。」


**ゼット・デュー・シムラ:** 「大佐、確かに、戦争の終結がすべての人々にとって最良の解決策であることは間違いありません。しかし、その過程で無辜の人々、特に子どもたちが命を落とすことがあってはならないと思います。戦争において、双方が何らかの妥協を見つけ、民間人の命を守る方法を探ることが必要だと思います。」


**ジャック・ヒーリング大佐:** 「ゼットさん、君は甘すぎるんだ。俺たちは、そういった『未来』を奪われた子どもたちを救うために戦っている。だが、海王星連合がやっているのは、その未来を人質に取って、俺たちの手を縛ろうとしていることなんだ。人質が有効だと奴らに教えたら、明日から、エウロパ宙域を飛ばす軍艦の中にだって学校を作り始めるだろうさ。あの連中は、民間人や子どもたちを戦争の道具にすることしか考えていないんだ。俺たちはその地獄から彼らを解放するために戦っているんだ。」

**司会者:** 「お二人とも、非常に貴重な視点をありがとうございました。戦場での厳しい現実と、それに対する報道の役割について、多くの示唆をいただきました。この討論を通じて、視聴者の皆さんにも、戦争の複雑な現実について考えていただけたことと思います。この議論が、少しでも平和への道を探るきっかけとなることを願っています。」

















### 地球連合から海王星連合への停戦申し入れ文書

**件名:** 停戦および人道的措置に関する提案


**本文:**


海王星連合中央評議会殿、


地球連合政府は、タイタンにおける戦闘の激化を鑑み、以下の停戦および人道的措置に関する提案を正式に申し入れるものであります。


1. **タイタンのイワン地上基地への攻撃の停止:**

地球連合は、タイタンのイワン地上基地に対する攻撃を**4週間停止**し、その間を避難猶予期間といたします。この猶予期間中、イワン地上基地にいる民間人および非戦闘員の安全な避難が行われることを期待しています。


2. **海王星連合による軍事行動の停止:**

引き換えとして、海王星連合は、タイタンにおけるイワン地上基地周囲**60km以遠**でのすべての軍事行動を停止することを求めます。これには、地上および空域でのいかなる攻撃行動も含まれます。


3. **人質の解放:**

さらに、海王星連合は、もともと土星圏以近に居住していた女性や子供など、身体的に脆弱な人質**10万人**を解放することに同意するものとします。これらの人々の定義および具体的な条件については、別紙を参照してください。


これらの措置が実行されれば、両勢力間の緊張緩和および民間人の保護に大きく寄与するものと信じております。地球連合政府は、これが将来的な和平交渉に向けた第一歩となるこ

とを期待しています。


**別紙:**

- 人質の定義および解放に関する詳細条件


地球連合政府として、この提案が誠実に受け入れられ、実行に移されることを強く希望します。


敬具、


**署名:**

地球連合政府代表










### 地球国営通信WEB記事: 停戦を求めるデモが過激化


**都市部でのデモ活動が激化、地球連合政府に停戦を求める声が拡大中**


地球連合が海王星連合との戦争を続ける中、国内での停戦を求める声が日に日に強まっています。特に首都圏や主要都市で行われているデモ活動が急速に過激化しており、治安当局は対応に苦慮しています。


### 平和を求める声が拡大


当初は平和的に行われていたデモ活動ですが、地球連合政府が軍事作戦の継続を発表して以降、デモ参加者の間に不満が高まり、抗議活動は過激化の一途をたどっています。主要都市の広場や公共施設前では、デモ参加者が集まり、戦争終結と平和交渉の開始を強く訴えています。


### 暴徒化するデモ


この一週間、特に夜間になると一部のデモ参加者が暴徒化し、政府庁舎への投石や公共物の破壊行為が発生しています。複数の都市で警察とデモ隊との衝突が起こり、負傷者も報告されています。治安部隊は催涙ガスやゴム弾を使用して群衆の鎮圧を試みているものの、デモは収まる気配がありません。


### デモ参加者の声


参加者の一人は、地球国営通信のインタビューに対し、「我々はただ、命を守りたいだけです。戦争が続く限り、犠牲者が増え続けるだけです」と訴えました。また、別の参加者は「政府は私たちの声に耳を傾けるべきだ。この戦争は誰のためにもならない」と語り、停戦の必要性を強調しました。


### 政府の対応


地球連合政府は、停戦を求める声に対して理解を示しつつも、現状の戦略的理由から戦闘継続を余儀なくされていると説明しています。政府高官は、「我々は市民の安全を最優先に考えていますが、海王星連合の脅威を無視するわけにはいかない。和平交渉の準備が整えば、対話の場を設ける意向はあります」とコメントしています。


### 今後の展開


デモの過激化が続く中で、地球連合政府は治安の維持と市民の保護を強化するとともに、国民の不安を和らげるための対策を講じることが求められています。停戦を求める声が今後さらに広がりを見せるか、また政府がどのような対応を取るかが注目されています。


**ユーザー1:** 「平和を求めるのは当然のことだよ。この戦争は長すぎるし、これ以上の犠牲は許されない。政府は国民の声を無視しているとしか思えない。停戦交渉を開始すべきだ。」


**ユーザー2:** 「デモが暴徒化するのは良くないけど、政府が一方的に戦争を続けるのも問題だ。もっと対話のチャンスを作るべきじゃないか?こんな状況じゃ国民の不満が溜まるのは当然だ。」


**ユーザー3:** 「政府は安全を守るために戦ってるのに、なんでみんなそれが分からないんだ?海王星連合の脅威を取り除かない限り、真の平和なんて来ないだろう。」


**ユーザー4:** 「デモに参加したいけど、暴徒化してるって聞いて怖くなった。平和的な方法で停戦を求める手段はないのかな?戦争反対だけど、暴力はダメだと思う。」


**ユーザー5:** 「断固として政府を支持する。海王星連合に対して弱腰になるべきじゃない。国防のためには戦わなきゃいけないんだ。」


**ユーザー6:** 「なんで政府はこれほどの反対を無視するんだ?戦争は誰のためにもならない。デモが激化してるのはそれだけみんなが追い詰められてるってことじゃないか?」











### 海王星連合から地球連合への返答


**件名:** 停戦および人道的措置に関する提案への返答


**送信元:** 海王星連合中央評議会

**宛先:** 地球連合政府


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地球連合政府殿、


貴国からの停戦および人道的措置に関する提案を受け取りました。貴提案において言及された「土星圏以近に居住していた女性や子供など、身体的に脆弱な人質10万人」の解放に関する要求について、我々からの回答は以下の通りです。


**そのカテゴリに属する民間人は、もはや10万人も生きてはいません。**


戦争の長期化と貴国の攻撃による甚大な被害により、これらの民間人の多くが既に命を失いました。貴国の提案は、現実を理解せず、過去の事実に基づいたものであることを認識すべきです。


我々は、この悲劇的な事実をもって、貴国に対し、現実を直視し、根本的な解決に向けた真摯な交渉の必要性を強調します。戦争はこれ以上無意味な犠牲を生むべきではありません。


**署名:**

海王星連合中央評議会代表












### 地球連合臨時閣議議事録(抜粋)


**場所:** 地球連合本部、特別会議室


**出席者:**

- テンワー事務総長

- 地球連合軍元帥

- 内務大臣

- その他関係閣僚


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**議事録:**


会議が始まり、海王星連合からの返答が報告された。事務総長テンワーはその内容を聞くやいなや、極めて異例な形で感情をあらわにし、机を叩いた。


**テンワー事務総長:**

(机を強く叩きながら)「何ということだ!『そのカテゴリに属する民間人はもう10万人も生きてはいない』だと? 奴らは何も後悔していない、まるでこれが誇るべき戦果であるかのように言っている!」


**地球連合軍元帥:**

「事務総長、我々もこの返答には衝撃を受けています。しかし、彼らがそう言った以上、次の手を考えねばなりません。我々の戦略的対応が求められます。」


**内務大臣:**

「明らかにこちらのメディアに介入して停戦の世論を盛り上げているのに、映画の悪役のような挑発の文書を送ってくるのは一体どういうことなのでしょうか」


**テンワー事務総長:**

(荒々しい口調で)「このまま放っておけるか!我々が提案した停戦条件は、民間人の救出のためだった。だが、奴らはそれを逆手に取り、我々を嘲笑っているかのようだ。こんな返答を許してはならん!」


**内務大臣:**

「事務総長、だからといってただ単に強く出れば、人質の命は失われ、国民の支持を失うことになるでしょう。迅速に、そして確実な行動が求められています。」


**テンワー事務総長:**

「もちろんだ。だがこの返答は、全人類への宣戦布告も同然だ。奴らに対して、より強硬な措置を取り、国民に対しては、我々が毅然とした姿勢で臨むことについて理解を求めていくしかない。」


**地球連合軍元帥:**

「タイタンおよびエウロパ攻略のための軍事作戦計画を引き続きブラッシュアップし行動に移していきます。海王星連合への圧力をさらに強めるために、最善の戦略を検討します。」


**テンワー事務総長:**

(冷静さを取り戻しつつ)「よろしい。だが、忘れてはならん。我々の目的は、ただ復讐することではない。最終的には、この戦争を終わらせることだ。そのために、あらゆる手段を講じる。今後の行動については慎重に、しかし迅速に進めるように。」


**内務大臣:**

「了解しました。世論への……国民の理解を得るためのメディア戦略は、我々の方でも追加協議いたします」
















**ティートーノス労働者新聞**


**「サンクチュアリ」最大のゼネスト—人質解放と停戦協定を求める**


火星最大の労働組合「サンクチュアリ」は、オリュンポス・シティをはじめとする火星全土で、海王星連合に捕らわれた同胞たちの解放を求め、停戦協定を主張する2日間のゼネストを敢行した。「サンクチュアリ」は、火星の産業全体に深く根を張る組織で、特に鉱業、エネルギー、宇宙船建造業などの主要部門において強力な影響力を持っている。


**「サンクチュアリ」の組織規模とストライキの影響**


「サンクチュアリ」は火星全土にわたって約8億人の労働者を代表しており、その活動範囲は、オリュンポス・シティを中心とする都市部から、火星表面に点在する鉱山施設や宇宙ステーションまで多岐にわたる。今回のストライキでは、特に鉱業セクターとエネルギーセクターが大きな影響を受けると予想されている。これにより、火星経済の生命線とも言える資源供給が一時的に停止する可能性が高く、地球連合全体に波及する経済的影響も懸念されている。


さらに、火星の宇宙船建造業がストライキに加わることで、地球連合軍の補給ラインに重大な遅延が発生する可能性が指摘されている。これにより、前線で戦闘を続ける部隊への補給が滞り、戦争遂行能力が低下する恐れがある。


**「同胞の命を見捨てることはできない」**


「サンクチュアリ」の代表は声明で、「火星の労働者たちは、単なる歯車ではなく、この惑星の未来を担う存在である。我々は人質にされた同胞を見捨てることはできない。彼らの命を守るため、政府が海王星連合との停戦協定を求め、交渉を開始するべきだ」と強調した。また、「戦争行為が続けば、我々の手で同胞が殺されることになる。それは絶対に許されることではない」と訴えた。


**法令上の課題—民主制火星の挑戦**


今回のゼネストは、火星の法令におけるストライキ権と緊急事態下での労働権の関係を浮き彫りにした。火星は民主制を採用し、労働者の権利を保護する法律が整備されているが、一方で戦時中の緊急法規が労働運動を制限する条項も含んでいる。この状況は、火星政府がどのように対応するかという課題を突きつけている。今回のストライキが続くことで、政府は緊急法を発動し、強制的に労働者を復帰させる可能性があるが、それが労働者の反発を招き、さらなる混乱を引き起こす可能性もある。


**専門家の声—「政府は殺し合いしか考えていない」**


このゼネストに対し、火星の安全保障問題を専門とするジャーナリスト、カリナ・デルヴィン氏は、政府の姿勢を厳しく批判した。「政府は地球連合の市民を守ることよりも、海王星連合の兵士を殺すことばかりに固執しているように見える。人質の命を最優先に考え、迅速に交渉を進めるべきだ」と述べた。


**火星政府高官の反論—「非人道的な敵」**


これに対して、火星政府の高官は強い反論を示した。「はっきり言って、人質を殺しているのは海王星連合である。我々の敵は、非人道的で狂気に囚われた連中だ。彼らがどれほど危険な存在かを忘れてはいけない」と述べ、海王星連合に対する強硬姿勢を維持する意向を表明した。


**政府への批判—「人質の命よりも戦争の継続か」**


しかし、この高官のコメントに対しても、多くの市民や労働組合員から批判の声が上がっている。「政府は人質の命を守るよりも、戦争の継続を優先しているのではないか」という疑念が広がっており、今回のゼネストをきっかけに、火星全土で停戦を求める声が高まる可能性がある。


火星における労働者の声は、戦争と平和、そして未来を問う重要な問いかけとして、火星社会全体に深く響き渡っている。戦争が続く中、火星の未来はどこに向かうのか。政府と市民の間の溝はさらに深まるばかりである。









### ガニメデケーブル速報: ガニメデ国立病院前広場で集会とデモ隊が衝突


ガニメデ国立病院前広場で、本日「再び立ち上がれ」をスローガンに掲げ、未だ意識の戻らないガラ・エリオス中佐の回復を祈る集会が行われました。しかし、この集会の最中、戦争の即時停戦を求めるデモ隊が現場に押し寄せ、両者の間で激しい衝突が発生しました。


### 警察の介入と暴動の続行

衝突は次第にエスカレートし、参加者の間で乱闘が発生。負傷者が出ており、警察が現場に介入しましたが、事態の収拾は困難を極めている模様です。現在も暴動が続いており、現場は混乱の極みにあります。

現場の混乱はまだ続いており、警察は追加の部隊を投入して事態の収拾にあたっています。ガニメデの当局は、状況が収まり次第、詳細な報告を行う予定です。現場周辺の市民には、安全を確保するため、広場から離れるように呼びかけています。


### 目撃者のインタビュー

現場付近にいた目撃者は、次のように語っています。


「最初は平和な集会だったんですが、突然デモ隊が現れて、言い争いが始まりました。そのうちに押し合いになり、次第に殴り合いになって…。警察が来たんですけど、もう手がつけられない状態でした。とにかく混乱していて、あっという間に暴動に発展しました。」


### 参加者のインタビュー

集会に参加していたガラ・エリオス中佐の支持者は、衝突についてこう語ります。


「私たちはただ、ガラ・エリオス中佐の回復を祈り、再び立ち上がってほしいと願っていただけなんです。でも突然、戦争に反対する連中が押し寄せてきて、あんなことになるとは…。今は中佐の力が必要です。戦争は終わらせるべきですが、今はその方法が重要だと思います。

ガラ・エリオス!再び立ち上がれ!」














### リア・カーヴァーの回想記『戦争と私』より抜粋 —


その日は昼から暴動があって、街は騒然としていた。ガニメデの空気は緊張に包まれ、どこか不吉な予感が漂っていた。私はガラ・エリオス中佐のベッドの脇で座って、うつらうつらとしていた。彼が昏睡状態に陥ってからというもの、私の心は張り詰めていたが、その時ばかりは一瞬の安らぎを感じていたのかもしれない。


しかし、突如として彼が目を開け、ゆっくりと起き上がったのだ。まるで今までの沈黙が嘘であったかのように。


「ここはどこだ? タイタンはどうなった?」


彼の声は明らかにかすれていたが、その言葉には確固たる意志が感じられた。私は医者を呼びながら、驚愕と安堵と、頼もしさとが入り混じった感情で、彼に新聞を手渡しながら、簡潔に状況を説明した。


「ロマノフとラスプーチンは落ちたわ。でも海王星連合がイワンに人質を詰め込んで、プロパガンダで停戦の世論を煽っているの。」


私がそう言うと、彼は一瞬新聞に目を落とした後、固く決意したように言った。


「そうか、しょうがない、ならば俺が行こう。」


死にかけていた身体をものともせずに、彼は今にも立ち上がろうとする。


「待って、事態は複雑になっているの。」


私は焦って彼を止めた。戦況は変化し、以前とは違う要素が絡んできていた。彼がただ行けば簡単に解決できる、という状況ではない。しかし、彼はそんな私の言葉を一蹴するかのように、静かに、しかし断固として言った。


「複雑? いや、単純だ。勝てばいい。」


彼は何もわかっていないくせに、まるで自分がすべてを理解しているかのように振る舞う。その自信はどこから来るのか、私は理解できなかった。しかし、その言葉には妙な説得力があった。


「不満が溜まるのは何故かと言うと、勝っていないからだ。停戦を主張している人々が、そりゃあ中にはスパイもいるだろうが、本気でゼノの味方をしたくて言っているわけがない。彼らは無力さを認めたくないんだ。せっかく盗ってやった、戦艦ラマヌジャンはどこで何をしているんだ。カーヴァー、行くぞ!」


彼は、すでに立ち上がり、体に繋がれた点滴も意に介さず、前線へ向かう意志を固めていた。彼の背中を見つめながら、私はこの男が、どんな状況でも戦い続けることしか考えていないことを改めて実感した。


あるいは、ロマノフに……ロマノフに彼が救えなかった人質を置いてきた時に、彼自身の一部をそこに置き去りにしてしまったのでは。


それを取り戻す為に彼が焦っているように見えた。


しかし、私は彼が言った「勝てばいい」という言葉の意味を考え直さざるを得なかった。果たして、それだけでこの戦争を終わらせることができるのだろうか?












### 太平洋新聞: ガラ・エリオス再起す

**基地を破壊しても殺せなかった男 海王星連合にとっては悪夢**


宇宙の激戦地で何度も生き残り、伝説的な戦士と称されるガラ・エリオス中佐が再び立ち上がった。タイタンのロマノフ基地での壮絶な戦闘で重傷を負い、長い間昏睡状態にあった彼が奇跡的に回復を果たしたのだ。


ガニメデ国立病院のベッドから起き上がったエリオス中佐は、すぐに前線復帰を宣言し、地球連合の士気を大いに鼓舞している。「基地を破壊しても殺せなかった男」として、彼の名前は再び太陽系全域に響き渡ることだろう。


海王星連合にとって、エリオス中佐の再起は悪夢の再来である。彼の戦闘能力と戦術的な才能は、何度も海王星連合に打撃を与えてきた。エリオス中佐は、数々の戦場で圧倒的不利な状況を覆し、敵の心胆を寒からしめた存在だ。


今回の回復により、エリオス中佐は再び地球連合軍の最前線に立つことになる。彼の復活は、海王星連合にとって最大の脅威となるであろう。戦況は再び彼の手によって動き出すのだ。


ガラ・エリオス中佐の再起は、単なる個人の復活ではない。それは、地球連合の象徴的な勝利であり、海王星連合に対する明確なメッセージでもある。彼の戦いはまだ終わらない。むしろ、ここからが本当の戦いの始まりだ。


海王星連合にとって、エリオス中佐の存在は悪夢であり続けるだろう。基地を破壊しても彼を殺すことはできなかった。彼が再び立ち上がった今、海王星連合はどのようにしてこの悪夢から逃れようとするのだろうか?









### 地球国営通信WEB記事


**ガラ・エリオス中佐、ふたたび立ち上がる**


タイタンの激戦で重傷を負い長らく昏睡状態にあった地球連合の英雄、ガラ・エリオス中佐が奇跡的な回復を遂げ、再び前線へと立ち上がった。彼の復活は地球連合軍にとって大きな希望の光であり、戦況を大きく左右するものと期待されている。


エリオス中佐は復帰直後、戦場へ向かう意思を強く示し、再び指揮を執ることを宣言。彼の復活は、戦況が厳しさを増す中で、地球連合にとって大きな士気の高揚をもたらすものとなった。


### 併記ニュース: 戦艦ラマヌジャン、ついに前線へ


さらに、地球連合軍にとってはもう一つの大きなニュースがある。海王星連合から鹵獲された後、もっぱらリヴァースエンジニアリングの研究対象として用いられていた戦艦ラマヌジャンが、ガラ・エリオス中佐の強い主張により、ついに前線へ投入されることが決定された。


ラマヌジャンは、海王星連合の技術が詰め込まれた強力な戦艦であり、その高度なテクノロジーは長らく研究されていた。エリオス中佐は、その戦艦の潜在能力をいち早く見抜き、実戦での活用を主張していた。その結果、ついにラマヌジャンが前線へと投入され、地球連合軍の戦力強化に大きく寄与することになる。


この決定により、エリオス中佐は再び地球連合の先陣を切ることとなり、彼の指揮下でラマヌジャンがどのように活躍するかが注目されている。中佐の復活とラマヌジャンの前線投入は、今後の戦況に大きな影響を与えるだろう。地球連合軍は、エリオス中佐と共に、新たな戦いに挑む準備を整えつつある。


**ユーザー1:**

「ガラ・エリオス中佐の復活は本当に嬉しいニュースだ!彼がいれば、戦況はきっと好転する。前線での活躍を期待しているよ。」


**ユーザー2:**

「中佐が復活したのはいいけど、タイタンに残された人質たちのことが心配だ。戦艦ラマヌジャンを前線に出すことで、さらに事態が悪化しないだろうか?」


**ユーザー3:**

「エリオス中佐の復帰は確かに希望の光かもしれない。でも、この戦争がいつ終わるのかが見えない。戦艦を投入するよりも、停戦交渉を進めるべきじゃないのか?」


**ユーザー4:**

「中佐の復活は確かに勇気を与えてくれるけど、これで戦争がさらに激化するのが怖い。犠牲者が増える前に、別の解決策を見つけてほしい。」


**ユーザー5:**

「ガラ・エリオス中佐が戻ってきたのはすごいことだし、戦艦ラマヌジャンの前線投入も心強い。でも、戦争が続く限り、誰もが安心できない。停戦に向けた動きも進めるべきだと思う。」












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### 海王星連合評議会土星方面委員会(リモート)

### 議事録:タイタン攻略戦における戦術会議 より抜粋

#### 出席者:

- **タリア・シオウル評議員(軍民)**

- **シド・ソウ司祭**

- **リアスケイラ・ヤマバ評議員(文民)**

- **カルリラル・ヴァルトラ将軍**

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#### 議題4: 地球連合への心理的圧力の強化策

**タリア・シオウル評議員**:

「地球連合の抵抗は、やはり彼らが未熟な精神に囚われているからだ。彼らはサナト・アズリスの真理を理解していない。そこで、手持ちの人質のうち”声”を聞けなかった者たちを使い、彼らに恐怖と絶望を与えていきたい。」

**シド・ソウ司祭**:

「それは良い。地球連合は信仰という支柱を持たないから、同じ種族だというだけで同情する。我々が民間人を前線に掲げれば、彼らの攻撃意志は鈍るはずだ。」

**リアスケイラ・ヤマバ評議員**:

「確かに、彼らの、我々ほど進化していない脆弱な倫理を、戦況の膠着しつつある今こそ利用するべきだ。ただ、単に人質を痛めつけて、拷問と恐怖によって行動を変えさせるのは、これまでうまくいっていない。ロマノフ基地で人質が死んだ件は、少ない人数の割に盛り上がったが」

**タリア・シオウル評議員**:

「要するに、彼ら自身のメディアを利用して『攻撃をやめろ』と叫ばせればいいんだろう。その目標から逆算できないか?」

**シド・ソウ司祭**:

「まさにその通り。メディアは彼らの弱点だ。彼らが、『民間人を守るために攻撃を控えろ』と言う状況になればいい、というか、言っても不思議でない状況にすればよい。問題はその方法だが。」

**タリア・シオウル評議員**:

「隠していた人質を前線基地に運び込むことはもう始めているが、それほど効果を生んでいるようには見えない。」

**リアスケイラ・ヤマバ評議員**:

「……病院だってことにしたらどうですか。基地じゃなく、実は病院だ、とか。」

**シド・ソウ司祭**:

「それだ! 病人をたくさん詰め込んでおけば、地球連合の偽善的な道徳観を刺激できるかもしれないな。彼らは攻撃できない。義務論的に、攻撃することは罪悪だと考えるはずだ。」

**タリア・シオウル評議員**:

「病院だけではなく、博物館や美術館も良いかもしれない。やつらはそういうものを攻撃したがらない。基地にそうした施設を併設するのはどうだろう?」

**シド・ソウ司祭**:

「素晴らしい提案だ。病院、美術館、そして博物館。やつらの宗教施設なんかも、どうだ?それに加え、地球側のメディアに働きかけ、『民間人を守るために攻撃を控えろ』と世論を操作すれば、我々の手の内にある病院や博物館が一層神聖視されることになる。

彼らの中に芽生える罪悪感は、我々にとっては武器だ。我々はそれを利用し、彼らを自らの倫理観で縛りつけるのだ。サナト・アズリスの真理を知らない彼らは、結局、精神的にも物理的にも滅びる運命にある。」

**カルリラル・ヴァルトラ将軍**:

(冷淡に見つめながら沈黙を保っていたが、やがて苛立たしそうに発言する。)「くだらん。……無意味だ。人質だの、病院だの、文化施設だの。地球連合は、結局力でねじ伏せられるしかない。こんな議論は時間の無駄だ。私は”次の作戦”に専念しなければならない。……ちなみに、彼らに最も躊躇を与えられるのは、『学校』だ。短期的な時間稼ぎに過ぎないという前提でだが。」

(カルリラル・ヴァルトラ将軍、リモート会議を退出)


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