第8話 この女を屈服させる②
彩子が目を覚ますと、彩子は自分がベッドに横たわっていることに気づいた。自分がいる部屋を見回し、彩子は自分のいる場所がどこなのかすぐに悟った。壁際のソファーでは、草野がこちらを見ながらニヤニヤと笑っている。
「どういうこと?私はなぜここにいるの?」
「やっと目覚めたようだね。やはりお疲れだったのかな。よく眠っていたよ…」
草野はまだ笑っている。
「私に何をする気なの?」彩子の顔は青ざめ、恐怖に満ちていた。
「まず、この動画を見てもらおうか。」草野は自分のスマホを彩子の前にかざした。彩子の中学校の時のクラスと出席番号、卒業アルバムの顔写真、自宅の住所、彩子が草野に対してした行為のリスト、勤務先の店名と源氏名、最近の顔写真と全身写真が、次々と流れてくる。
「これは、君が私に対してしたことのまとめ動画だ。全て事実に基づいている。」
草野は低い声で、表情を変えずに彩子に言い放った。
「お前は俺から金を巻き上げた。その恐怖のせいで学校に行けなくなり、人付き合いもできなくなった。俺が孤独な生活を送ってきた原因の一つは、お前だ。」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい!私は、どうやって謝罪すれば…」
彩子は声をうわずらせて、涙を目に浮かべながら草野に尋ねた。
「俺は中学の頃、お前の言いなりだった。今度はお前が俺の言いなりになる番だ。だが安心しろ。俺の言う通りにすれば、この動画は公開しない。」
草野は不敵な笑みを浮かべながら、彩子に目を向けた。
「では、私はどうすれば…」
彩子はこれから自分の身に起こることを半ば覚悟しつつも、まだ救われるかもしれないという微かな希望を心に抱きながら、草野に問いかけた。
草野は何も答えずに彩子を見つめている。
1分ぐらいだろうか。長い沈黙が二人の間を支配した。
「まず、着ている服を脱いでもらおうか…」
彩子が最も恐れていた展開だ。彩子が微かに抱いていた、「私なら助けてもらえるかもしれない」という希望は、もはや打ち砕かれた。彩子は全身に落雷が落ちたような衝撃を受けた。彩子もやはり、他のいじめっ子連中と同じ草野の復讐対象の一人にすぎなかったのだ。
彩子は中学卒業後、偏差値は低いが底辺ではない、地元の普通高校を卒業した。進学することなく、はじめの就職先は一年で辞めて、それからフリーターとしてバイトを転々としながら、数年前に夢キララで夜の仕事をするようになった。
周りでは所帯を持つ友人も出始めて、私もこのまま夜の仕事を続けるのは良くないかなと仕事を変えることを考えつつも、学歴も職歴もない彩子は、将来に対する不安が少しずつ芽生えてきていた。
草野の言葉に乗って、夜の仕事から足を洗えるかもしれないという淡い期待を抱いたが、結局それは実現することもなく、変えられない自分の過去がいまになってこの身に降りかかってきたのだ。
「どうした?言うことを聞かないと、この動画をアップロードするぞ」
草野は表情を変えずに冷静に言った。
「従うしかないのね…従わなければ、私の人生はもっと酷いものになるかもしれない…」彩子は観念した。
だが手が動かない。手が震えている。
彩子も人並みの生活を送り、それなりに恋愛経験も持った。性行為も嫌いな方ではない。どちらかといえば、好きな方だ。それでも、恋人以外に自分の裸体を見せることはしなかった。
それがいま、恋人でもない相手、それも過去に自分がいじめていた相手に対して、自分の裸体を晒そうとしているのだ。
屈辱だった。でも、原因は自分にあるのだ。彩子はその事実から逃れられない。「従うしかないのね…」
彩子は少しずつ、着ているタンクトップを捲り上げた。もう言葉は出ない。タンクトップを脱ぎ捨て、彩子は立ち尽くしている。
「どうした?まだ脱ぎ終わっていないぞ」
草野の言葉が追い打ちをかける。
彩子の目から涙が止まらない。親には見せられない姿だ。恋人でもない相手の前で、惨めに裸体を探している姿。かつてない屈辱を味わいながら、それでも彩子は自分の過去から逃れられない。
彩子はブラジャーを外し、それからゆっくり短パンと、最後の下着を脱いだ。
ソファで膝を組んでいる草野の前で、一人の女が裸体を晒して泣きながら立ち尽くしている。草野は自分の視界に入っているこの弱々しい女が、かつて自分から金を巻き上げた女だということが半ば信じられなかった。草野の一言で、この女は衣服を脱ぎ捨てたのだ。これに勝る優越感は、草野は過去に感じたことがなかった。
「これで、もういいでしょう…」彩子が弱々しい声で、精一杯声を捻り出した。
「まだだ。」
草野は落ち着き払って言った。
「俺はお前に金を巻き上げられたことを忘れていないぞ。」
草野は無表情に言葉を放つ。対して彩子はこれから起こるであろう最悪の展開から逃れたいかのように、矢継ぎ早に助けを求める。
「お金はすべて返します!利息も払いますから!どうか、これで終わりにしてください…」
彩子の必死の懇願にも草野は動じない。
「俺はお前に何度も蹴られたことを忘れていないぞ!」
草野の声が少しずつ荒ぶってきた。
「さあ、始めようか。」
全ての過去の事実が、いま形になって彩子に襲い掛かろうとしている。
「まず、横になって目を閉じてもらおうか。いまこの場で報いを受けて終わりにするか、それともあの動画と共に一生生きていくか、どちらがいい?」
草野にはもう恐れるものはない。彩子は確かに草野の言いなりになった。彩子は嗚咽を堪えながら、もう涙も枯れ果てたように、ベッドに横たわった。
それからの10分間、そのラブホテルの一室には、天国と地獄が入り混じっていた。
陵辱され、誰にも助けも求められず、過去のいじめの事実を突きつけられながら犯された彩子。
対して、過去の恨みを晴らし、彩子を屈服させて復讐に成功した草野。
草野は過去に受けたいじめの過酷さを頭の中で思い出し、その苦しみを倍返しにするかのように、夢中で腰を振り続けた。彩子は歯を食いしばりながら、自分の過去の行為を悔いていた。
中学時代に受け続けたいじめの数々、そしてそれが原因でまともな人付き合いもできなかった行き場のない悔しさ、恋愛経験の一つもなかった孤独感。草野のいまの境遇の原因が全て彩子であるかのように、全ての怨念を込めて、草野は彩子の中に精を放った。
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