第六話『洞窟に響く音』

 Q.朝はどうしてやってくるのだろうか?


 それは全人類……いや、旅行前の人々とかはまた別かもしれないので、語弊が無いよう少し表現を付け加えて、全人類(一部除く)が朝日を仰いで浮かべる疑問だと思う。

 かく言う私も中学生くらいから、そんなことを考えながら気だるい体を起こしている。


 だけど今朝は、そんな憂鬱な気分がほんの少しだけ軽く感るのだ。


 それはきっと、ベットのすみっこで猫ちゃんのように丸くなって、すぴすぴと寝息を立てている金髪の美幼女を眺めているからだろう。


「なんだ、このてぇてぇ生き物は……?」


 その正体が、昨日成り行きで青乃家に居候することになった、杖の精霊であるユニ・オリオンなのは、いくら寝ぼけている頭でも理解できるのだが、その寝姿が起きている時の彼女のまるで悪ガキのような印象とはあまりにかけ離れていた。

 カーテンから差し込むお日様の光をいっぱいに受け、輝く長い金髪。昨日お姉ちゃんと悪ノリで着せたサイズピッタリの純白のネグリジェを身に纏った姿は、まるで由緒正しい家柄のお嬢さんのようだ。(私のおさがりだけど)

 そして何より、穏やかな呼吸に合わせて膨らんだり縮んだりを繰り返しているほっぺたに、私の目はもう釘付けだった。


「これ、絶対柔らかいやつだよね……どれ、ちょっと失礼して――」


 ぷにっ


 しっ、沈んだッ! 指がッ!! それも第一関節までッ!?


 ほっぺたとはこうも柔らかいものだったろうか……?

 その真相を確かめるべく試しに自分のをつついてみるが、いくらピチピチの二十歳女子のお肌を以てしても、ユニの赤ちゃんほっぺの感触とは雲泥うんでいの差があった。


 ぷにっ ぷにっ ぷにっ


 この病みつきになるこの感覚……どこかで経験したことがあるような気がする。

 そうか、これは昔大人たちがみんな持っていた『無限プチプチ』を、頭空っぽにしてずっとやっている感覚に近いかもしれない。


 ぷにっ ぷにっ ぷにっ ぷにっ ぷにっ ぷにっ ぷにっ ぷにっ ぷにっ ぷにっ


「ほっほぉ~♡ こりゃたまりませんなぁ~」


 一ぷに毎に、朝の憂鬱さがみるみる軽減されていくのを感じる。

 そうだ、これを今度の動画のネタにしよう。タイトルは……


「ずばり、【ガチ検証】幼女のほっぺ無限ぷにぷにで、ストレスは――」



「随分と楽しそうじゃな、祭莉よ」



 と、新たなネタを思いたのも束の間。企画終了のお知らせが冷たく告げられる。

 いつの間にか起きていたユニが、まるで汚物でも見るような鋭い視線で私を見据え。

 隠しきれない怒気を含んだ声に、私の体中の筋肉が硬直した。


「お、おはぷにぷに~……ははは……は」


 何か言わなきゃと思い、“おはよう”と直前まで口にしていた“ぷにぷに”が合体して、妙な挨拶をひねり出したが、ユニの表情は一向に変わらないどころか眉間のしわがどんどん寄っていく。


「なぁ祭莉よ。“ぷにぷにしていいのは、ぷにぷにされる覚悟のあるやつだけだ”という言葉を知っておるか?」


 そう言って手をワキワキさせて、徐々に距離を詰めてくる。


「し、知ってるけどなんか違うよ!」


「まぁ細かいことは気にするな。さ、頬を差し出すのじゃ」


 そして何よりも怖いのが、顔は笑っているはずなのに目が笑ってないところだ。


「ちょ、落ち着いて……目がマジだから!」


「問答無用! 覚悟ッ!!」


「ひぃッ――」



 ピリリリリリリリリンッ!



 万事休す、跡形もなくぷにられるかと思われた次の瞬間。ベットの傍らに置いていたスマホから、けたたましいアラーム音が鳴り響き、私達は一斉に音源を凝視する。

ひとまずアラームを止めるため、アイコンタクトで「止めてもいいですか?」「よかろう」と許可をもらい、スマホを手にとって停止ボタンをタップする。


「いやぁ、ビックリしたー……って、もうこんな時間!? これ三個目のアラームじゃん!!」


 これは共感してくれる人がいるかもしれないが、私はバイトなど絶対に遅れられない予定がある日は、アラームを十分刻みで三段階にかけている。

 さっき鳴り響いたのは、最終防衛ラインの三個目、その名も「ほんとに起きろ。」。

 きっとその前の二つは脊髄反射で止めてしまったのだろう。危ない……。


「ふ、ふむ……邪魔が入ったが改めて……」


「ごめん! まじでバイト行かなきゃだから! 遅刻するぅ~!!」


 報復の続きをと再び接近を始めるユニを寝返りで華麗に回避し、どたどたと慌ただしく着替えを済ませて洗面所に走った。

 部屋に置き去りにされたユニもよいしょと起き上がる。


「あっ、こら待たんか〜!」


 部屋からそんな怒声が聞こえてくるが、それは顔を洗う水の音でかき消された。



        ◇



「あ~……暇じゃ……」


 家を飛び出していった祭莉を見送ってから二時間程が経過しただろうか。

 その間、二度寝をしたりごろごろしていたユニは、退屈に耐えかねて情報量の多い六畳間ちょっとの広さがあるオタク部屋の探索に乗り出していた。


「しかし本当にオタクじゃな……」


 部屋の壁を覆い隠す本棚には大量の漫画やライトノベル、ゲームソフトにフィギュアに円盤のボックス。果てはゲームの大会か何かだろうがトロフィーまでもが几帳面に収められている。

 ユニにはもちろん、何が何だかわからない代物たちだが、試しに気になったものを手に取ってみることにした。


 最初に手に取ったのは、ユニでも届く低い位置にあった漫画。

 本のタイトル【ドキッ☆胸キュンプリンス】の文字を脳が認識して少し顔を引き攣らせるが、気を取り直して小口に貼られた付箋のページをめくってみる。

 そのページでは表紙にも載っていた爽やかな容姿をした王子が、ヤンチャそうな風貌のヒロインに一目惚れして、頬を赤く染めていた。

 別の付箋が貼られたページでは王子が意外にもヒロインに壁ドンされていたり、周りの後押しもあってヒロインに愛の告白をしていたりと、タイトルに偽りなく王子の胸がキュンキュンしている名シーンが目白押しで、その部分をすぐに読み返せるよう付箋を貼って目印にしているのだと推察できる。


 試しに別の本も取るがどれもこれも付箋がびっしりで、まるで大学生の使い込まれた参考書のようだ。


「ふむ、意外とマメな性格なんじゃな。後で読んでみるとするか……さて、次は――」


 次は何で時間をつぶそうかと視線で各棚をなぞると、右腕に装備された大きな剣が特徴的な青と白のカラーリングで、少年のような幼さを感じる顔立ちのロボットがふと目に留まった。


 台座から取り外して手に取ってみると、想像よりもしっかりした重みがあり、プラモデルの類ではないのがわかる。

 そして何よりも目を引くのはその細部の精巧さだろう。こうした物は当然初めて見るユニだが、美麗な彩色や細部に施されたデカール、そして動くかな……と恐る恐る触った部分が大体動くことに、目を輝かせざるを得ない。


「おぉ、こいつ動くぞ! なかなか面白いのぉ!」


 右手の大剣を振り抜いた後のようなポーズを崩して、腕や脚をガシガシ動かしたり、「ぶーん!」と無邪気に口にしながら手狭な部屋を走りってブンドドする姿は、元気いっぱいな子どものようで実に微笑ましい。


 が、こんな時のお約束と言えば……


「行くぞ、名も知らぬ青きロボよ! ぶ~――うわっと!?」


 秒速フラグ回収。やはりというべきか、カーペットに足を取られ、顔面から盛大に転んでしまった。


 バキッ……!!


 この手の玩具から絶対に聞きたくない。もし聞いてしまったならば三日三晩寝込む(経験済み)ような破損音が、静まり返った部屋に鈍く響き渡った。


「あっ……」


 右手に握りしめた細身なロボットを見やると、上下ともに尖ったシールドを装備した左腕が胴体とさようならしていた。


「……ま、まぁ今朝のお返しということで……そ、そうじゃ、これをこうして……」


 ぶつけたおでこをさすりながら、近くにあった布で左腕をが無いことを隠蔽してみる。


「…………」


 だが、これではバレるのも時間の問題だろう。


「……よし! わしも出掛けるとするかな」


 気持ちを切り替えて指をぱちんと鳴らすと、純白のネグリジェが光の粒子となり、一瞬にしていつもの淡藤色のローブへと変化した。


「さて、行くか」


 魔法で着替えを済ませたユニはおもむろに窓を明け放つと、低級古代魔法である【浮遊】でぷかぷかと浮かんで、そそくさと宇都宮の街へと繰り出すのであった。



        ◇



 ここは栃木が誇る峠・いろは坂。

 きっと誰でも一度はその名を聞いたことがあるのではないだろうか。

 一説ではその昔北側下りの第一いろは坂と、南側登りの第二いろは坂を合わせて、全四十八個のヘアピンカーブがあることから「いろはにほへと」にちなんでこの名が付いたとかなんとか……。(wiki調べ)


 そんな峠で、だんだんとヘアピンが多くなり始めるセクターツーに、赤と白、二台のマシンが今差し掛かろうとしていた。


 ギュワアァアアアア!!


 凄まじい音を立てながら一つ、また一つときついヘアピンをドリフトでクリアする二台のマシン。

 ステアリングを握る右手、ペダルにかかる両足とシフトに添えられた左手をタイミング良く動かしつつ、前に出る隙を伺うが、一車線道路でかつ先頭を行くの白い車がリアサイドに輝く『R』のバッチをまざまざと見せつけて、私の駆る深紅のマシンを通さんと言わんばかりに大柄な車体でブロックしてくる。


 ここまで完璧なブロッキングをされている以上、普通にオーバーテイクするのは不可能と言えるだろう。


「こうなったら“あれ”しかないか――」


 だがしかし、このコースにはとある“ショートカット”が存在する。

 それが実行できるのは、この後に控える『こ』の三十三コーナー!!


 直前のヘアピンを難なくクリアし、二台揃ってアウト側のラインに乗る。

 相手はさっきまで同様、インを締めた非の打ち所のないドリフトを開始する。

 この状況で抜くとしたら、通常大外から並ぶしかないのだが、ここでは違う――!!


「――ッ、ここだ!!」


 狙うはインベタのさらにイン。

 高低差の大きないろは坂特有の地形だからこそ、実現可能なこのコーナリングライン。

「行っくよぉ!! これがオキテ破りの地元走りだッ!!」


 ゴアォ!!


 刹那。私の駆る真紅の車が、空中に軌跡を描いて飛翔した。

 空中にいる間、車内で流れていたはずのユーロビートや、車の排気音などが世界から無くなって、神経が研ぎ澄まされたように感じた。

 とはいえ約千三百キロの車体は、すぐに重力に引っ張られてコースに戻されてしまうが、相手の目の前に着地してオーバーテイクに成功する。


 抜いてしまいさえすればこっちのもの。ここから先は私の独壇場だ。

 ゆるい右カーブを抜けるとすぐに怒涛の六連続ヘアピンが姿を現し、二台揃ってフルブレーキングからのドリフト。


 肉薄しながらも私のリードで最初の二つを流し、次の三つ目のコーナーが見える。


「――ッ!!」


 体に覚え込ませたタイミングでブレーキをかけてインベタのインをつき、車体をジャンプさせる。

 着地と同時に思い切り逆ハンドルを切って再びジャンプ。

 お次はワンテンポ置いてから右に切ってジャンプを決めて、またすぐに逆ハン切って高難度の四連続ジャンプポイントを抜けてみせた。


 これを練習するためにこれまで何十クレ……否、何十回この峠に通い詰めたか正直想像もしたくないが、こうして自分の技として習得すればみんなに誇れる武器となるのだ。

 つまり何が言いたいかというと……


 みんなも時間とクレを突っ込んで、技を磨こうぜ!


 レースに戻ろう、律儀に全てのコーナーをクリアしてきたであろう白い車体が、数秒遅れてバックミラーに映る。

 左と右の連続コーナーからの左のヘアピンを抜けると、久しく見なかった長いストレートに差し掛かり、まだ少し余裕はあるが徐々にここまで稼いだマージンが詰まって、ミラー越しに4WDの圧を徐々に感じる。


 しかしすぐに最後のコーナー群に差し掛かり、しっかり前を見て何十回と下ったこの道と向き合う。

 最初は右。立ち上がったら間髪入れず左にハンドルを切る。

 それをクリアしたら左の直角カーブを曲がると、最後の五連続ヘアピンが現れた。


 レース序盤のお返しと言わんばかりに、相手が差し込む隙を与えず五つ全てを抜け切ると、レースももう大詰めだ。

 左の直角を抜け、トンネルから続くストレートをアクセル全開で駆け抜ける。


 このバトルの結末は、ダブルクラ……じゃなかった、ここまで稼いだマージンがどれだけあるかで決まると言ってもいいだろう。

 現にバックミラーには、ストレートになり六百馬力のパワーを存分に発揮する白い車が、凄まじいエキゾーストノートを立てながら猛進し、あっという間に横に並ばれてしまう。

 そこから少し行き、大谷川に架かる榮橋を抜けきった所にある僅かな段差を並走した二台のマシンが、猛スピードで突入してその車体をふわりと浮遊させる。


 グァアシャン!! 


(――ッ)


 着地の瞬間、右側を走る白い車が着地地点に散らばった落ち葉にタイヤのグリップを奪われて一瞬だけだがスリップしたのが見えた。


(――貰ったッ!!)


 その一瞬の隙を見逃さずに真紅の車体を前に押し出し、左、右と連続でゆるいコーナーを曲がってゴール前の短いストレートを疾走……そして――。


【FINISH!】


【YOU WIN!】


 バトルが終了し、私の勝利を示す金文字が画面の中央に現れる。


「ふぅ〜、今回も勝てたぁ……」


 顔も名前も知らない相手と本気で技比べをして、その末に勝利を掴み取る。

 これがいかに気持ちよく、病みつきになることか……それはもう犯罪的だっ……!


「へへへ~、もう一回やっちゃお~♪」


 ポケットからガチャガチャとアーケード用に百円玉をぎっしり入れたがま口財布を取り出し、そこから一クレをチャリン♪


 たまには対戦じゃなくてタイムアタックでもしようか。

 いろはは十分堪能したから、今度は初見でカーブの多さにビビりまくった八方ヶ原でも攻めてみるとしよう。


 にっこにこでコースを選択し、次に流すユーロビートを選んでいると、不意に誰もいなかったはずの隣の席に気配を感じた。


「――ッ!?」


 バッと首を左に九十度回して、左隣のお豆腐屋さんのシートを見ると、そこには見知った金髪幼女が座っていた。


「よぉ、奇遇じゃな。真昼間から随分と楽しそうで何よりじゃ」


「うげっ!?」


 デモモードの映像が流れる画面を見ながら、割と楽しそうにハンドルを回したり、シフトをガチャガチャして割と遊んでいる。(もちろんペダルに足は届いてない)


「して、今朝バイトに行くとかなんとか抜かして家を出たと思うんじゃが……これが仕事なのか?」


「えっと……仕事では無いのですが……食休み的な? 今お昼休み中だし……?」


 現在の時刻は十二時半頃を回ったくらいだろうか。

 バイトの日の昼時は大体うどんか焼きそばを速攻で平らげて、フェスタ地下のスタジオプリモにGOして午後の戦意を養っているのだが、はた目から見たらただただ仕事をサボって遊んでいるように見えてしまうことだろう。


 しかし何を隠そう、私はこの“宇都宮フェスタ公認広報担当”。


 いいですか? 大事な事なのでもう一度言いますよ?


 “宇都宮フェスタ公認広報担当”であるからして、街で見つけたトピックやら各テナントのお知らせなんかをSNSで発信することが、私に課せられたミッションなのだ。


 しかしフェスタとは別の場所に事務所があるため、こうして毎日お仕事という大義名分を掲げて就業時間中に堂々と、そして胸を張ってネタ探し兼新商品チェックをしているのである。どうだい、羨ましかろう?


「はぁ……つまり暇ということじゃな?」


「えっ、いや違っ。これやったらボル――じゃなくて事務所に戻って仕事しようと……」


「では行くぞー【次元門ディメンション・ゲート】」


「やだっ、待って! もう始まっちゃ――」


 私の制止も空しく、ユニが小声であのかっこいい転移魔法を詠唱すると、シートに座る私達を光が包み込んで一瞬にして昨日の中断地点である路地裏に飛ばされていた。


「さぁ、今日から本格的にオーブを……って、どした?」


 くるりと回ってユニが私にそう呟くが、私は下を見てプルプルと震える拳を握りしめる。

 そして――。


「んなぁぁんでぇぇぇぇ!! どぉぉじでだよぉぉぉぉおおおお!!」


 と、年甲斐もなく異世界の空に向けて、いろんな感情を含んだ叫び声を解き放った。


 ――しばらくして。


「それでー、今日はどちらまで行くんでしょうかね?」


「なんでちょっとトゲがあるんじゃ……自業自得じゃろ、このサボり魔め」


「サボってないです休憩中だったんですぅ〜! それにあれ放置したらお店に迷惑かかっちゃうでしょうがッ!! タイムアタックだったからまだよかったけど、あれが対戦だったらと思っただけで……んきぃぃ!!」


「あ~また始まったわい……」


 頭を抱えて発狂する私に目もくれず、ユニは近くに置いてった木箱の上にちょこんと乗っかって大きく咳払いした。


「え~こほん! 祭莉よ、一旦落ち着いて聞くのじゃ」


「これが落ち着いていられるか!」


「落ち着けぃッ! お主をこの世界に呼び寄せた理由は覚えておるか?」


「いやいやユニさん、さすがに昨日の今日で忘れませんよ〜」


 ユニと出会ったのは昨日のお昼の出来事だ、さすがに三歩歩けば忘れる鶏じゃないんだから覚えているとも。

 手をひらひらさせ、余裕の表情で昨日の出来事を振り返って口を開く――が、思ったよりいろんなことありすぎて最初の空中庭園での会話まで、うまく記憶を遡れずにいた。


「あ、あれでしょ? あれだよ、あれ……そう、救世主!」


「……救世主になって?」


「うわ、続きがある!? えぇっと……まっ、魔王!」


「を?」


「た……倒す……?」


 頬に一筋の汗を伝わせ、その後に繋がりそうな単語を自信無さげに呟くと、ユニがはぁと大きくため息を吐いた。


「チョー嚙み砕いて言ったらそういう事じゃ……先が思いやられるな……」


「あ、あのユニ先生! 質問があります!」


 授業中に質問するように手を挙げて、壇上のユニへと質問を投げかける。


「うむ、青乃くん。発言を許可しよう」


「私まだ【青雷せいらい】しか使えないんですけど、それで魔王は倒せますかー?」


 現状使った記憶にある魔法といえば、ゲーターを丸焦げにした青き救世の雷である【青雷】だけだ。

 しかし、あれだけ大柄なリザードマンをたった一撃で戦闘不能にして、尚且つ初めての使用だったのだ、きっと使い方やらなんやらをもっと修練していけば、スキルレベルが上がって魔王だって屠れるのではなかろうか……!


 あぁ、これが――“異世界人の力”ってやつ? 異世界転移・転生モノの主人公たちよ、私も今仲間に――。


「いや無理に決まってるじゃろ、頭おかしいんじゃないか?」


 なろうとしたんですけど、どうやらまだダメみたいです……。


「シンプル悪口!? じゃ、じゃあどうすれば……?」


「お主、昨日の話聞いておったのか? 七つのオーブにはそれぞれに賢者が習得していた七つの魔法……謂わば“スキル”が納められておるからして――ここ第一世界の……」


 オーブ――昨日からユニの話に度々出てくる七つの魔法が封印された結晶。

 そういえば昨日の夜、部屋で少しだけ教えてもらっていたんだった。

 たしか各世界から入れるダンジョンに隠されているって話で、そこを攻略しに行こうって話だったはず……だんだん昨日の記憶が蘇ってきたぞ!


「あー確かにそんなこと言ってたね〜完全把握。で、今日はそのダンジョンに行くんですかい?」


「なんじゃ話が早いな、よいしょ。では行くか、先に――――」


 ユニは木箱からぴょんと飛び降り、何かを呟きながらてくてくと通りの方へ歩いていってしまうが、彼女は普段から若干ぼそぼそ喋るせいか、さっきから所々聞き逃してしまい、行き先を聞きそびれた。


 そんな杖の精霊を目で追うだけ追って、大きなため息を吐く私は……


「なんだかなぁ……バイトクビになっちゃうよぉ……」


 と、ぼやきながらしぶしぶユニの後に続いて、昨日と変わらずモンスターたちで賑わう通り――【オリオンストリート】へ昨日ぶりにやってきた。


 やはり何度見ても、景色がどことなく現実のオリオン通りを想起させ、薬局があるはずの場所にはポーション屋の看板が、小物やアクセサリーを扱うお店の場所にはマジックアイテムショップが店を構えており、なんらかの因果のようなものを感じざるを得ない。


「もしかしたらカレーショップ フジとかもカレー屋さんのままあったりするのかな? 今度行ってみよ〜っと」


 この街の中で好きなお店は多々あるが、カレーいうカテゴリーで言ったらやはりフジのカレーが食べたくなるのが、宮っ子だろう。


 レトロで趣のある外観。優しい価格帯のメニュー。そして何よりあのボリューム感!

 ルーに入ったレーズンの甘酸っぱさが、カレーの味を引き立たせていているのだろうか? 最後の一口までまったく飽きずにいけてしまうあれもある種の“魔法”だ。


「って、ユニを探さなくちゃなんだった」


 通りに出てすぐ右が、昨日何かと世話になった【ラット・ライク・バーガー】が店を構えており、今日はがっつりお昼時だからか行列ができていて、かわいい看板娘がいる店の盛況ぶりを感じさせる。


「おぉ、これはなかなか……昨日はラッキーだったね」


 昨日は昼過ぎということもあってか、特に並ぶことなく入店してすぐに着席し、あの味を楽しめたのだから実に幸運だったといえるだろう。

 やはりこういった人気店に行く時は、ゴールデンタイムから少し時間をずらすことが攻略の秘訣なのかもしれない。


「おっとと……えっとユニ、ユニ……」


 辺りを見回し、人混みならぬモンスター混みでも目立ちそうな白いローブ姿の幼女を探す。

 右、左、また右と目線を配るが、ユニはどこにも見当たらない。


「え、ちょっと待って……ユニがいないと私帰れないんじゃ……」


 と、遠い昔に経験したことがあるような不安感が、冷静さを欠いた頭を埋め尽くした。

 この感覚は……そう、子どもの頃に親に連れられて行った東武百貨店で迷子になって、広い館内を彷徨っていた時のような胸のざわつき。


(もう、会えないかもしれない)


 子どもながらにそんな極大解釈をして、とうとう泣き出してしまったのは、今でも深いトラウマとして脳に刻み込まれている。


「ユ……ユニ〜……? どこ〜……?」


 それは年齢的に大人になった今現在も変わっていないようで、シャツの胸元をぎゅっと握って若干半泣きで探し人の名を、だんだんと自信が欠落してきた声で呼び続けた。


「――――」


 しかし帰ってくる言葉はない。

 耳に入るのは通りに反響するモンスターたちの喧騒だけ。

 私はとうとうその場にうずくまって。


「ぅう……お姉ちゃん……」


 と、ボソリと呟いた。



「――祭莉ちゃん?」



 そんな時、聞き覚えのある優しげな声音が鼓膜を震わせた。

「ぐすん……お、おねぇちゃん……?」


 声の方を見るとそこにいたのはお姉ちゃん――ではなく、見ているだけで甘い香りがしてきそうな桃色の長い髪を、黄色いシュシュで左右二つにまとめて、水色のワンピースの上に纏った小麦色のエプロンがよく似合う少女・アンが、ヴァイオレットの大きな瞳を心配そうにこちらに向けていた。


「あ、アン……! あっ、これは……てか今お姉ちゃんって!」


 半べその姿を知人に見られ、あまつさえ「お姉ちゃん」と呼んでしまうなんて……。

 急に我に返された私は顔に火がついたように熱くなり、溢れる寸前だった涙を光の速さで拭った。


「ふふっ、祭莉ちゃんは今日もかわいい♪ ね〜ユニちゃん?」


「ん?」


 アンの後ろ、水色のワンピースの影に綺麗な金髪が微かにチラつく。


 首を左に傾げてその奥をじっと見ると、探し人が口元を必死に抑えて今にも飛び出しそうな笑いをガードしながら笑っていた。


 が――


「ぷっふふふ……祭莉よ、迷子になってしまったのか? ぷふふ……」


「ちょ、ちょっと二人とも! 一体どこから見てたの!?」


「ん〜とね……うちのお店を見てた辺りからだと思うけど……」


「ほぼ最初からじゃん! んぐぐぐぐ……くっ殺ッ! てかユニ、どこ行ってたのさ!」


「はぁ……本当に話を聞かないやつじゃな。ダンジョンの立入許可証をギルド本部に取りに行くとちゃんと言ったじゃろ?」


「ぼそぼそ独り言みたいに喋るから聞こえなかったんです〜!」


「わかったわかった……ごほんッ!! え〜ダンジョンに入るために登録も済ませていない新顔がぽっと出で行ってもだめじゃろうからして――」


「ギルド支部の受付嬢である私の紹介で無理やり申請を通したいと思いま〜す♪」


 さっそく反省を活かし、少し声量の上がったユニの言葉に、アンが何やらとんでもないことを続ける。

 ラット・ライク・バーガーはギルドの支部でもあり、その受付嬢であるアンの口添えでゴリ押すために、本部に赴く前にアンの所に寄ったのだろう。さてはこの精霊、昨日の内に話を付けてたな?


「いやぁ……いくら受付嬢とはいえ、そんな職権濫用のゴリ押しで行けるもんなんですかね……? 立入許可証がいるってことは戦闘力皆無の私が行ったら危ないんじゃ……」


「何、案ずるな――お主のことは、わしが命に変えても守るからな」


 え、何それめちゃくちゃイケメンじゃん……。


 不意に放たれた「〇〇は俺が守る」系のセリフに思わずキュンしてしまう。

 思い返せばゲーターと対峙した時も、森でロボットに追いかけ回された時も、彼女のおかげで私は今もこうして生きているのだ。


 だからきっとダンジョンに行っても……


「って、いやいや! いくらユニが強くても私のレベルが低かったらダメでしょう! もうちょっと草原とかでレベリングとかしてから行くべきじゃないの!?」


 ユニはきっと私が想像しているよりもずっと強くて、まだ力を隠しているとゲーマーの勘が告げている。


 なので彼女が命に変えても守ると言ったら、きっとなんだかんだで助かってしまうのだろうが、もしそれでユニが怪我でもしたら嫌だ。というのが、一番の……いや、二番の本音だろう。

 ちなみに一番の本音はというと……


「ダンジョンとか行くなら、絶対にレベルをキャップギリギリまで上げてからじゃないとアイテムとかMPとか、いろいろジリ貧になって大変なんだからね!」


 というゲーマー脳全開の発想が本音だった。


「チッ、セオリー通りにしか動けないゲームオタクじゃな……ほれ行くぞ。今度は迷子にならんようにな~」


 とうとう面倒くさがられたのか、はたまた私の対処法を会得しつつあるのか。ユニはちっちゃい手をひらひらとさせてそそくさと歩き始める。


「ほら、私たちも行きましょ? 今度は迷子にならないように私が手を繋いでおいてあげるからね♪」


 そう言ってアンが手をぎゅっと握ってくれる。


 他意はない、きっと彼女が持ち合わせている親切心から来る行動だろう。

 でもなんでだろう、めっちゃはずい! そんなことないはずなのに綺麗な顔で笑いかけてくれる萌えキャラに手を握られてるのに、素直に狂喜乱舞できない!


「よぉ〜し、れっつご〜♪」


「お、おぉ〜……」


 やけにテンションの高いアンに手を引かれて、私たちは先行するユニの後ろへと続いた。


        ◇


 ダンジョン【通称:フェスタ】 第一層


 伝説の賢者が古代魔法ロスト・マギアを秘匿するために創造した迷宮で、全七階層から成る“魔の世界”。


 それぞれの階層は出入り口となる七つの世界に繋がっており、第一世界から通じているここ第一層は、他の層と比較すると少し危険度が低い場所と言えるだろう。

 まるで洞窟を想起させる空間が無限に広がることから、冒険者たちの間では通称【無限洞窟】と呼ばれ、探索開始から数千年経過する今も尚、未踏のエリアや未開封のトレジャーボックスの存在が報告されている。


 通路には等間隔に松明が設置されて多少の明るさは保証されているが、ここをギルドの立入許可証が必要なほどに危険たらしめている要因はもっと別に存在した。


「はぁぁぁぁッ!!」


 ガキィィィィンッ!!


 激しい金属音が空間に反響し、周辺の空気を否が応でもひりつかせる。


 その音の発生源では、漆黒の魔狼・マーナと、赫い光を頭骨に灯し、風化した武具を装備した骸の魔物イービル・スケルトンセンチネルが、両者一歩も引かない剣戟けんげきを繰り広げていた。


 前述の通り、ダンジョンへの入場は各世界のギルドが厳格な審査の上、実力有りと認められた者にしか許されておらず、もし生半可な実力の者が足を踏み入れれば、ここに住まう魔物たちによって惨たらしく蹂躙じゅうりんされてしまうのは想像に難くない。


(さすがに腕が落ちている……まさか一層の魔物に足止めを食らうなんてね……)


 昨晩、アンの店で出会った大男・ゼムリャーに、何とも言えない違和感を覚え、一日が経っても消えぬその感覚の答えを求めて朝からダンジョンで刀を振るっていた。

 しかし半年近く戦闘系の依頼を避け続けたせいか、このレベルの相手だと考え事どころではなく、決定打となり得る一撃をなかなか届かす事ができずに苦戦を強いられていた。


(落ち着きなさいマーナ――神経を切っ先に集中させて……)


 スケルトンセンチネルの激しい攻撃。

 その一撃一撃が鈍重どんじゅうで、もしこれがまともに当たれば俊敏さ重視で軽装の彼女が、ただでは済まないのは火を見るより明らかだ。


 とはいえ相手は強い魔物の中でも比較的低位のB級であるためか動きが単調で、さすがにこうも刃を交えていると、次の攻撃の軌道も自然と予想が付く。



 ――刃を合わせる事は会話、言いたいことや考えていることが全てわかる。



 これは幼いマーナが、師に言われ続けた言葉だ。


(しばらく刀を持たない間に、師匠の言葉まで忘れてしまうなんて……でも、これでッ!!)


 刹那。マーナの姿が骸の眼前から消失する。

 突然攻撃対象を見失ったスケルトンセンチネルが、警戒した様子で辺りを見回すが魔狼の姿はどこにもない。


 「ガガッ……ガァッ――!!」


 そしてやっと視界の端で淡く鋭い光を捉えた瞬間――頭骨が胴から零れ落ちて赫い光がゆっくりと消える。

 その背後に立つマーナは、骸の絶命を一瞥いちべつしてから刀をさやへと納めて、技の名を告げる。


「魔狼刀術――朧月おぼろづき


 目にも止まらぬ速さで死角に回り込み、振るわれた刃を相手が捉える頃には、朧月ほどの淡く鋭い光しか捉えられずに息絶えさせる。これこそマーナの故郷である第三世界に伝わる魔狼刀術の奥義の一つだ。


 純粋な身体能力が秀でている魔狼族だからこそ使用可能な、電光石火で不可視の一撃。これを回避するには背後にも瞳を得なければならないことだろう。


「ふぅ……なんだかどっと疲れたわ……さてと、魔石は……あ、あったわ」


 切り伏せて本当にただの骨と化したスケルトンセンチネルの懐を漁ると、赫く輝くビー玉くらいのサイズの結晶・魔石を口で器用に咥えて、体の右側に備えたポーチに収納する。


 魔石とは、魔物が行使する魔法の魔力源としての役割を担っている重要な結晶体であり、魔物の体内からしか採取できない希少な物質だ。

 市場では高値で取引されており、一攫千金を夢見る冒険者たちをダンジョンへと駆り立てる要因にもなっている。


 数秒後、スケルトンセンチネルの亡骸が発光し、赫い光の粒子となってダンジョンに溶けるように霧散する。


 これが俗にいう【魔循環】。


 魔石を失った魔物はこのように跡形もなく消失して、文字通りダンジョンへと溶けていく。

 その後時間をかけて一定量の魔力が形を成して魔石となり、新たな魔物をダンジョンへと産み落とすというのが、世間一般で知られている通説だ。


 しかし「なぜダンジョンは魔力を吸収するのか?」「魔物とはいったい何者なのか?」など、まだまだ明らかになっていない事項も多く、人々はそれらを【迷宮の謎】と呼んで、二千年前にこの迷宮を一人で創造したと伝えられている賢者は、知的好奇心を刺激された学者や冒険者たちの挑戦を今も受け続けている。


「はぁ……地道な修行からやり直さないとだめね……今日は帰りましょうか」


 先ほどのスケルトンセンチネルから採取した魔石でノルマは達成したため、報酬の受け取りが可能になった。帰りの道中でも恐らく数回戦闘があるだろうが、特に問題はないだろう。

 帰ったらいつものようにアンの店に行き、いつもと変わらず他愛もない話をする穏やかなひと時を過ごすとしよう。


 考えをまとめ、マーナはくるりと回れ右をして、出口へ向けて歩を進めた。

 静寂の中に松明の炎が揺れる音が混じる静かな世界。

 そして変わり映えのしない殺風景な景色に飽き飽きし、マーナは大きなあくびをするため無意識に大きく口を開けた――その時だった。



「うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁッ!!」



 気合の入ったクソデカボイスが、洞窟内を反響してマーナの鼓膜を激しく震わせた。


「――ッ!? あ……顎ぉ……」


 が、魔狼族であるが故に良く聞こえすぎたらしく、体中の毛を逆立てて愕然として、あくびをする寸前だったこともあり顎が外れた。


「がっ……ぐっ! ふぅ……危なかったわ……ずいぶん粋の良い冒険者がいるのね……」


 前足で顎を戻し、若干困惑しつつも声の方角――すなわち出口の方向へを見据える。


「い、一応確認だけしに行きましょうか……帰り道だし……」


 魔狼族の脚で走りること約十秒のところで、件の現場に辿り着いた。

 そこでは青い長髪の旅人が単独で複数体のスケルトンセンチネルと交戦中であり、もう何体か討伐したのか足元にはいくつか骨が散らばっている。


「これは――っていうかあの子なにやってるのよ!」


 マーナの心配を他所に、旅人は真剣な面持ちで両手に握られた黄金に輝く“つるぎ”を真正面に構え、骸たちの攻撃を左右に軽くいなしながら攻撃のチャンスを窺っているようだ。

 その表情に思わず息を呑み、抜きかけた刀のつばを静かに鳴らした。


 そうこうしている内に、いつの間にか背後に回り込んだ骸の一体が、旅人目掛けて鈍重な一撃を振り下ろす。


「あっ、危な――」


 思わず叫ぶが、その声が出た頃には既に黄金の剣の刃は既に、背後のスケルトンセンチネルの胴を捉えていた。


「胴――ッ!!」


 骨を切ったとは思えない快音を響かせて一体を仕留め、剣を振った勢いをそのままに、慣れた身のこなしでくるりと回って、近くにいたもう一体に剣を突き出す。


「突き――ッ!!」


 風化しているとはいえ、しっかりスケルトンセンチネルの胸部を保護していたボディーアーマーの奥の魔石を切っ先は的確に貫き、パリンと音を立てて粉砕する。

 最後の一体がわずかに後ずさり、剣の間合いから無意識に外れる。


「へへー、近接だけじゃないんだな〜ユニ!」


『おうとも!』


 旅人が相棒の名を呼ぶと剣が黄金色に輝き、彼女の身長ほどある長さの黄金の“杖”へと変化した。


「よくわからないけどめっちゃ便利〜♪ それじゃあ行くよ! 青雷――ッ!!」



 バリバリバリィィッ、ドゴォォォォンッ!!



 刹那。杖の先に展開された魔法陣から青白い雷撃が解き放たれ、立ち尽くす骸を襲う。


「アガッ!? ガギゴガァ――カッ……」


 数秒後。雷撃が止むとその凄まじい威力に悶え苦しんだスケルトンセンチネルが、黒い煙を上げて沈んだ。


「ふぃ〜……なんとか勝てた〜」


 と、呑気そうに勝利宣言を掲げた旅人・青乃祭莉を見据え、マーナはその見事なまでの戦いぶりに、ただただ唖然としているのだった。


to be continued.

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